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座学(後)〜レベルアップ〜

設定ばかり続いてすみません…

一応、この物語の肝となる部分なので分割してしっかり書き込みました。

あとがきに設定の纏めがあります。

「厳密に言えば、この世界にはレベルという概念はないのじゃがな」


 と、マーリンは前置きをした。


「え? 今、レベルアップって言ったばかりじゃん。意味わかんないんですけどー」


 女子生徒から抗議の声が上がる。


「まぁ、落ち着いて聞いてくれ。

 お主らに分かりやすく説明するためにレベルアップといったのじゃが、うむ。なんて伝えたらいいかのぅ。

 ステータス画面に[レベル]という項目は無いじゃろ?

 強いて言えば、レベルは隠しステータスみたいなものなのじゃ。

 この世界では、向こうの世界のゲームでよくある「レベル(いくつ)以上じゃ無いと入れないダンジョン」や「上限レベルがいくつ」みたいなレベルによる規制や制限は存在しない、ということじゃ」


 そんなマーリンの説明に、生徒たちは「ふぅーむ、なるほど」と唸った。


「では、改めてレベルアップについてじゃが、ある一定の[経験値]を取得すると特典を得ることが可能となるのじゃ」


 マーリンは仕切り直して説明を続ける。


「大瓦、[経験値]の数値が少ないと言うのとはその一定値を超えた可能性はあるな。

[経験値]の横に★がついていないか?」


「お、おぉ、ある。★が1つ付いてる」


 ステータス画面を確認して剛は嬉しそうに声をあげた。


「その★に触れるとレベルアップすることが可能じゃ」


「おお! なんか選択画面が開いたぞ」


 剛は早速その★に触れたのか、大声で目の前で起きたことを声に出して説明する。


 まぁ、その説明が無ければ他人から見たら空中でゆびを動かして遊んでる変人にしか見えないのだけど。


「おいおい、もうレベルアップさせようとしてるのか。説明を聞いてからでもいいじゃろ?

 選択画面以外のステータス画面に触れれば、キャンセル扱いになって選択画面が閉じるはずじゃ」


 マーリンの言葉に、剛は「お、おぅ」と言い、指を動かした。


「大瓦が言った通り、レベルアップには2種類の特典を選択することができるのじゃ。


 1つが「ステータス向上」じゃ。


 これは分かりやすく、1回のレベルアップで、5ポイントを好きなステータスに割り振ることが出来るのができるのじゃ。

 普通に身体を鍛えてもステータスを1上げるのには相当な鍛錬と努力が必要じゃからな。

 5ポイントは相当なアドバンテージになるじゃろう。


2つ目は「スキルの練度向上」じゃ。


 コモンスキルは★1つ、エキストラスキルなら★2つ、ユニークスキルなら★3つを消費して隠しステータスであるスキル熟練度が上げられるのだが、これは分かり難いかの……」


 そこまで話したところで、マーリンは生徒の顔色を伺い、理解できていないことを察すると、「ふむ」とあのヒゲを扱いて唸った。


「百聞は一見にしかず、じゃな。

 藤堂、ちょっと前に出てきて、この黒板を【空間収納】してみてくれ」

 マーリンは最前列に座る剣壱に指示する。


 剣壱は頷き、前に出ると、黒板に手をかざしスキル【空間収納】を発動させる、が、何も起きなかった。


「ダメだ。「質量オーバーのため、スキルが失敗しました」ってアナウンスが聞こえた」


 剣壱が今起きたことを皆に伝える。


「うむ。ありがとう。席に戻っていいぞ。

 さて、スキルの熟練度じゃが、皆はこちらの世界に来たばかりだから熟練度は最低値と思ってもらって構わない。

 今だと【空間収納】ならばフルプレートメイルぐらいまでの質量の物までしか収納できず、容量もフルプレートメイル3つ分ぐらいが限度となるはずじゃ。

 人一人が通れる扉の付いた、人三人分が入れる見えない倉庫を持っているというイメージじゃ。

 熟練度を上げれば格納できる質量も容量も大きくなるぞ」

 マーリンは手をかざし、剣壱が収納できなかった黒板を収納してみせる。


 おぉ、とどよめく生徒を横目に生徒の座っているテーブルの前に歩み出て、今度はホカホカの骨つき肉を出現させてみせた。


「さらに熟練度を上げれば、空間収納に保管機能もつくぞ」


 ニヤリと笑ってみせる。

 出現した骨つき肉は昼食に出た物であった。


「え、ていうことはまさか!」


 生徒の1人が目の前に一人前に取り分けられた骨つき肉を出現させる。


「マジかー! 俺の方は冷め切ってるよー。 ラノベ知識を活用して、もしもの時のために昼食を収納してたのにっ」


 ガックリと肩を落としていた。


「ははは。残念だったのう」


 それを見てマーリンが笑う。


「皆も熟練度を上げれば、これくらいのスキルは使えるようになるじゃて。

 おっと、もうひとつ伝えとかなきゃいけないな。

 スキルは条件が揃えば取得することが可能だが、熟練度についてはこのレベルアップでしか上げることができないからの。

 もしスキルの練度を上げたいなら、早く実戦に出れるようになって、[経験値]を稼げるようになるんじゃな」


 マーリンは、ホッホッホと笑う。


「先生! 早速、レベルアップしてもいいッスか?」


 独特の大きな声量で剛が訊く。


「ふむ。構わんが、レベルアップボーナスを何にするのか決めたのか?」


 マーリンは頷きつつ、剛に確認する。


「ああ! スキルとか難しいことは分かんねーんで、ステータスを上げようと思ってる!」


 豪快な笑みを浮かべて即答する。


「なら、よい。レベルアップしてみるといい。皆も見ておくといい」


 先生からの承諾を受け、剛は早速レベルアップを実行する。


「ステータス向上を選択して……

 ポイントは全部[筋力]へ……

 OKっと!」


 剛は声に出しながら操作を行う。


 すると、剛の周りを煙のような魔素が覆ったと思うと、その魔素は薄く輝く光となって身体に吸収された。


「おっ、おおっ!」


 剛は歓喜の声を上げる。

 心なしか革の鎧を押し上げる筋肉が盛り上がったかのように見える。


「す、すげぇ。

 ここまで筋力が上がるのか。

 これだけの筋肉がつくには毎日筋トレしても1ヶ月、いや下手すりゃ3ヶ月は掛るぞ。

 筋トレマニアの俺が言うんだから間違いねぇ。これはすげぇ……」


 語彙が足りないのか「すげぇ」しか言っていないけど、相当凄いのだろう。剛は色々なマッチョポーズを取り、筋肉の盛り上がり具合を確認していた。


「ほっほっほ。レベルアップが成功したようじゃのう。

 まさか、ステータスポイントを極振りするとはのう。じゃが、そのおかげでレベルアップの恩恵がわかりやすくて良かったがの」


 好々爺のような笑顔でマーリンはレベルアップした剛を眺めていた。


「ん、良い匂いがしてきたの。

 そろそろ夕飯の準備はできたようなので、今日の講義はここまでにするかのう」


 そう言って、マーリンは講義を終了させた。

・レベルアップでは以下の特典が選択できる。

  1.ステータスアップ(+5ポイント)

  2.スキルの熟練度アップ

・スキルはレベルアップでしか熟練度は上がらない。


春人が嫌悪感を持った点

・他種族であれ「人」殺しが是とされている世界であること

・努力の研鑽より、人殺しをした方が効率よく強くなれる世界であること

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