昼食、そして戦闘訓練
「おおー、かっけー。超強そう」
最初に試着室から帰ってきた生徒を見て、他の生徒が歓声をあげた。
最初に装備をつけて戻ってきたのは、戦士組の一番手でもあった藤堂 剣壱であった。
薄っすらと青みのかかった銀色のプレートメイルを身に纏い、腰には長剣を佩いていた。
剣を見せて、と言う周りの言葉に、剣壱は抜刀はさて見せる。
日本刀に似た反りのある片刃の刀身には、魔法文字が刻まれており、ほんのりと輝いていた。
もうそれだけで、厨二病心をくすぐりまくり、男性陣は我先にと自分の装備を決めていった。
女子の方も似た様な感じであった。
女子はどちらかというと武器よりも、装飾品の話題で盛り上がっていた。
アミュレットと呼ばれる特殊な付与効果がある宝石である。
女子は見た目よりも、性能重視の様で
「このアミュレット、全属性の耐性が20%上がるみたいよ」
「すごい。でも、こっちは火属性にだけだけど効果が70%よ」
などと、嬌声が上がっていた。
お昼には皆、思い思いの装備に身を固めていた。
「うむ。皆、良い装備を選んだ様じゃな」
昼時に戻ってきたのはマーリンは皆の装備を見て満足げに頷いた。
「さて、そろそろ昼食にするかの」
マーリンが合図をすると、広間に食事が次々と運ばれてきた。
「先生。俺、大太刀を主装備に選んだんだけど、飯の時にはコイツどうしたら」
漢はパワー、切れない敵でも叩き斬る、と巨大な太刀武器に選んだ生徒が質問する。
「うむ。それならばスキル【空間収納】を使うといい……うむ、スキルについては、午後に教えようと思っていたのだが、前倒しで一つ教えようかの」
そして、マーリンからスキルのレクチャーが始まった。
基本的にスキルや魔法は、想像力の具現化である。イメージさえしっかりしていれば、思うがままに使用が可能なのである。なので、マーリンはイメージの仕方についてを生徒に教えるのであった。
「おおっ! あのでっかい大太刀が、消えた!」
うまくスキルが発動した生徒が、驚きの声を上げた。他の生徒も、自分の武器やアクセサリーなどを、出し入れして喜んでいる。
「お前ら、あまり調子に乗ってスキルを使いすぎるなよ。
起動型のスキルは魔力を消費するし、低確率であるがスキルにも失敗があるから、注意するのだぞ」
覚えたてのスキルを連発する生徒に生徒が注意した。
そうこうしているうちに、テーブルの上には料理が出揃っていた。
料理は西洋風に近いもので、じっくり時間を掛けて火を通し手を加えた品が多かった。
その中でも生徒の目を奪ったのが、巨大な肉塊である。
なにの肉かはわからないが、巨大な骨つき肉が各テーブルにドンと一つずつ置かれていた。それを使用人が丁寧に切り分けててそれぞれの皿へと乗せていった。
「それでは、いただくとするかな」
「「「いただきます」」」
全員で唱和してその料理を頂いた。
独特の風味ではあったが、生徒たちは美味しく料理を頂いた。
そして、午後には実戦訓練となる。
マーリンに連れられて訓練部屋に移動する。
そこは最初に居た儀式のための部屋と似ていた。
だだっ広い空間に魔法陣と人型の案山子がいくつも並んでいた。
「これは、魔法にて整形された【デコイ】だ。いくら破壊しても魔法にて再生するので、スキルや魔法の練習にピッタリな人形じゃ。例えばーー[火炎球弾]」
マーリンが右手をかざすと、魔力が渦巻き炎の球となって放たれる。
ズドオオォォォォォォン!!!
遠くにあった一体の【デコイ】が爆発四散する。
「おおおっ!」
生徒が驚嘆の声を上げる。
「バラバラになったとしても、魔力を込めるとーー」
バラバラになった【デコイ】がまるで逆戻しの映像を見ているかのように再生・復元された。
その様子に、さらに生徒な驚きの声が重なった。
「儂の魔法でもこの部屋はビクともしないからな。皆は心置きなく魔法やスキルを使ってくれて構わぬよ。ホッホッホ」
マーリンは余裕の笑みを浮かべていたが、その笑みが引きつり笑顔に変わるまでにそれほど時間がかからなかった。
「世界の根源たる原子の力よ。その力を結集せし力にて我に仇なす敵を討て!
[原子融合超熱覇]!!」
厨二病全開な詠唱を恥ずかしがりもせずに唱えて海斗が放った魔法が、【デコイ】を蒸発させ、部屋を超高温の地獄へと変えた。
大魔導士マーリン、ニコラス大司教が慌てて全力の防御結界を張らなければこの場にいる者が危なかった。
こっ酷くマーリンに怒られた海斗の次に、スキルを発動させた剣壱の一撃にマーリンは又しても絶句する。
剣壱の使用したのは、ユニークスキル【絶対切断】は【デコイ】だけでなく、壁に施されていた【多重結界】と【絶対防御】の術式をも切り裂いて見せたのだ。
その時点で訓練は一旦中断となった。
最初に試し撃ちをした2人があまりにも規格外であった為、[称号]と[ユニークスキル]の両方が発現している7名を選抜し、その選抜メンバーについては別メニューを行うこととなった。
別メニューとは、訓練部屋ではなく本来なら明日以降に行く予定であった近隣の森へ赴き、実戦訓練を通しながら「力を制御する」訓練を行う事だ。
選抜メンバーが全力でスキルを使った場合、堅牢に作られ、幾重にも防御結界が張られていても危険が伴うと判断されたのだった。
マーリンは、残ったものの指導をニコラウス大司教に頼むと、選抜された7名を連れて、練習部屋を出て行って行った。
残ったニコラウス大司教は、元々生徒たちの教師であったマーリンと比べると心の距離はあるようだったが、キチンと指導に当たってくれた。
やはり、最初の二人が規格外過ぎたようで、他の生徒は失敗と試行を繰り返し、夕方には皆なんとかスキルと魔法が操れるようになっていた。
こうして、高校1年の2学期の初日は、まさかの異世界転移からの魔法訓練という、予想だにしていなかった形で暮れていくのであった。




