魔王vs勇者
なろうに慣れるための練習作品です。
執筆の実力をつけるために、色々試そうと思ってます。
「我は闇を統べる者。
その力の全てを持って、我らが仇なす敵を討ち滅ぼさん!
漆黒龍咆哮!!」
辺りの闇が意思を持ったように蠢き、漆黒の炎となって相手に襲いかかる。
「この世界を救うため、四精霊から託された力をここで開放する。
聖神共鳴斬!!」
相対する勇者は地水火風の四属性の光を纏わせた剣を振り下ろすと眩いばかりの光の衝撃波が漆黒の炎を切り裂いて行く。
勇者の剣が中程で止まり力が均衡する。
「ぬおおおおおおおぉぉぉぉっ!」
「うおおおおおおおぉぉぉぉっ!」
魔王と勇者の咆哮が木霊する。
力は互角。
超絶な力のぶつかり合い。均衡が崩れれば勝負は一瞬。そう判断した両者はこの一撃に全ての魔力を注ぎ込む。
光と闇のぶつかり合いがどれだけ続いたかなど、全力を込めている二人は意識する事は出来なかった。
光と闇の波動が消滅する。
それは奇しくも同時。
魔力切れのタイミングもほぼ同時であった。
肩で息をしつつ、睨み合う二人。
魔力は枯渇し攻撃も防御も出来ない状態でも、双方とも退くことは出来なかった。
勇者は、世界のため
魔王は、一族のため
敗けることは許されない。
双方とも、同時に動く。
奥の手。最後の切り札を同時に切る。
そしてその切り札もまた同じであった。
二人は鏡写しのように、魔力で作られた亜空間から道具を取り出した。
魔王は漆黒に染まる宝玉を
勇者は古びた巻物を
道具を利用した追加攻撃。
同時に魔道具を起動させる。
先に効果が発動したのは勇者の道具であった。
「が、はっ……」
魔王の胸に巨大な剣が突き刺さっていた。
勇者の使用したのは、封じた魔法を発動させる巻物。
封じられていたのは『光創生魔法・断罪の光剣』
勇者しか使用ができない、光属性の究極魔法だ。
封じられていた魔力で具現化された光の剣が、光速で対象を貫く魔法であった。
光速で撃ち出されるその攻撃はほぼ回避不能。といっても無敵というわけではない。光の属性のため質量は0に等しく非常に脆弱なため、発動タイミングさえ解れば魔力での相殺や防御は可能なのであるのだが、魔力が尽きた今の魔王には防ぐ手段が無かった。
パキン、と音を鳴らして光の剣が砕け散る。
それと同時に紫色の魔王の血が傷口から吹き出す。
致命傷!
魔王はゆっくりと崩れ落ちる。
その手から透明な宝玉がこぼれ落ちた。
「くっ、憎き人間に味方する者よ。我はいつか復活し、次こそは貴様ら人間を、この世界を滅ぼす……」
指先から身を灰と化し、消滅していく魔王が勇者に視線を向け最期の言葉を紡ぐ。
「くっ、これは呪い。
う、うぁぁぁっ」
勝利したはずの勇者の表情が強張る。
魔王が解き放った宝玉に込められていた『呪い』が勇者の身体を蝕んでいく。
「我が復活するその時まで、永遠に苦しみ続けるがいい、勇者アーバインよ……」
「くそっ、魔王ヴァルドグランドぉぉぉぉっ!!」
勇者の声を聞きながら、魔王は遂に灰と化し消滅した。