紫微城
「ぐ、ぬっ、、、」
不意に、ヨルが、よろめいた。
右目を覆えば、
ボタッ…ボタタ…ッ…
顎先を伝って、赤黒きものが、滴り落ちた。
見上げた空に、赤い月は無かった。
― どうやら、【媒体】を砕かれたようだ、、、 ―
拭った指先が、血潮のそれよりも濃い色で、濡れていた。
「ふ、、、ならば、鬼は、鬼らしくしようか。ぬんッ‼」
短い気合いと共に、その右目の辺りから迫り出すものがあった。
角だ。
禍々しく捻じれた、黒き一角。
ヨルの半顔を覆い、頭上へと伸びる。
「ふぅ、、、」
華奢な肩を震わせ、指先を、薄い唇へ。
― 闇もまた、難儀なものよな、、、 ―
血濡れた、唇。
赤き髪を、背に払ったところで、
ドッ…ゴォオオン―――ッ……
「お?」
轟音に、振り向いた。
階下を眺めれば、
「お師さんッ‼」
幾度聞いても、耳に心地よい声の主。
「おう、小天狗。意外と大胆にきたなぁ。結構結構、ははははっ」
緩やかな螺旋の階段の下に、壁を突き破った壱岐媛が、勢い余ってめり込んで、その背から、蒼奘が、飛び降りるところであった。
「だが、残念。俺の術は、こんなことじゃ、びくともしねぇよ」
浄衣を翻し、空中に浮かぶ、赤き多面体の結晶へ。
「突風招来、風伯ッ‼」
冥衣の、両袖が振られた。
こまやかな白き紙ふぶきが舞上がると、大きな一羽の鷺となって ―――、
「風伯ねぇ、、、」
「‼?」
―――、髪一筋、揺らすことなく、霧散。
「どうにも俺には、風の加護があるらしい。悪いな」
薄く笑った時には、上座で旋風が巻いた。
そのまま、術者に吹きつける。
「うッ」
仮初めの肉体とはいえ、したたか衣は切れ、頬や首、腕には、血こそ出ないが、土色が見えていた。
その間に、ヨルの片手が、赤き多面体の一面に、触れていた。
ぐらりと、城が傾いた。
「はっ、、、ま、さかっ、、、」
嫌な予感に、蒼奘が顔を上げた。
「最初から、北辰を染める気で!?」
「おう、今ごろ気づいたか?そうだ。月は、どうしたって衆目が集まるからな。囮よ」
ヨルが触れた先から、多面体が変化していた。
質量が増し、収縮と膨張を繰り返す。
「【鞘無し】よ」
謳うように呼べば、多面体がヨルの手の中で、大太刀となった。
上下、それ自体が一本の刀身であり、触れているヨルの手もまた、血濡れていた。
「蒼奘。穿つのなら、どこまでも深く、抜けぬように貫くことだ、、、」
隻眼となった破眼が、見開かれる。
コォオオ…ォオオ……
【鞘無し】と呼ばれたその刃が、どす黒く変色。
蝕みの力を宿し、質量を増して、伸びた。
巨大な柱のように、城すら貫通し、地底の亀裂へ向かい、
グゴォオオオオ―――ッ…
ケェエエエ―――ンッ…
天地が、吠えた。
「【鞘】をも、喰らえ。蝕みの御剣」
地仙らの咆哮に、大気は凍てつき、地上は震えた。
同時に、
「‼」
ギシャシャ―――ッ…
飛び込んできた、もう一つの巨躯。
吹き込む風に乗って迫る、犬歯の羅列。
「そのまま封じろ、伯ッ」
呑み込まんとする伯の頭上で、燕倪が叫んだ。
カウ――…ウグルル…ッ
大きく開いた咢が ―――、ぶるぶると震え始めた。
「いけないッ‼」
蒼奘の叫びは、その不気味な【時】を肌で察したからだった。
立ち昇る陽炎に、紫電が混じった。
― 伯ッ‼ ―
青鈍が、一層強い光を宿す。
業丸が赤き光を撥ね退け、その身は陽炎の中へと飛び降り ―――、
ゴガ…ガガ…
―――、噴き出した赤き血潮が、同時。
口を開いたまま、巨躯が倒れる。
刹那、
「おおおおおおッ」
大上段に振りかぶったまま、陽炎から飛び出す。
― 馬鹿か。生身で、空間の【蝕み】を渡ると言うのか。届くはずなど、な、、、‼ ―
腕を組んだまま、目を眇めたのも束の間、その首は振られていた。
ガチ―――ッ
火花が、散った。
ヨルの一角に、業丸が刺さっていた。
カゥ…
小さな笑みが、聞こえた気がした。
赤き、伯の鮮血の甲冑を纏った燕倪が、青鈍の双眸でこちらをまっすぐに見据えたまま、太刀を振り切った。
「む、うっ、、、があッ」
「ぐっ」
ヨルが、よろめいたと同時に、燕倪が吹き飛ばされていた。
斬り放たれた一角が、足元に無機質な音を立てて、転がった。
「雷光招来ッ」
階下にいた蒼奘の手から、霊符が放たれ、
「シンラ、ラトリ」
黒き獅子が、ヨルに向かって放たれた稲妻を、
グォオオッ…ァァ…
すんでのところで受け止め、倒れ伏した。
もう一頭は、まっすぐに蒼奘の元へ、猛進。
ゴァアアアアァッ…
「くっ、、、」
そのまま、再び階下に吹き飛ばされたところを、太く逞しい前肢でもって押さえつけられる。
グルルル…
生温かい獣の吐息が、顎先に掛かる。
傍らで、びくびくと蠕動する獅子を一瞥し、
「ラトリ、蒼奘は、そのまま押さえておけ」
振り向いた。
視線の先に ―――、燕倪。
― 以前は、気づかなかったが、、、こやつ、【蝕み】が効かぬらしい、、、 ―
端正な口元には、いつの間にか、酷薄な薄笑みが刷かれている…
「う、、、」
したたか、背中を打ったようだった。
腕が痺れているが、手の中に、脈打つ感触があった。
― 業丸、、、 ―
力を入れようとして、
「ごふっ、、、ごほっ、、、くふっ、、、」
吸い込んだのか、肺腑が、重い。
背中に、伯の弱々しい生動を感じた。
伏せられた菫色の双眸から、血涙が滴っていた。
不意に、衣擦れの音が、した。
はっとして、体を起こそうとして、
「ごふっ、、ごっ、、、はっ」
咳き込んだ。
業丸を引き寄せようとした、その腕を、
「おっと、動くな。備堂真次の秘蔵っ子」
踏みつけた、ヨル。
もう一方の腕で、跳ねのけるつもりが、
「動くなって、言ったはずだ」
「ぐぁッ」
「悪い子だね、燕倪、、、」
燕倪の叫びが、辺りに響いた。
今し方、斬り離したばかりの一角が、左手に深々と突き刺さっていた。
奥歯を噛みしめた精悍な顎先に、ヨルの手が触れた。
見上げれば、赤き望月を思わせる破眼、引き絞られていたはずの瞳孔を丸くして、こちらを見つめていた。
「せ、先代、、、」
にこりと笑って、しゃがみこむ。
「お前のその眸、、、凶色。昔、いくら俺が、気にすんなと言ったところで、お前自身、要らないと悩んでいたっけな?」
「、、、、、」
「真面目なお前の事だ。まだ、悩んでいるんだろう?」
「っ、、、」
それは、甘美な毒だった。
「無理も無い。誰が悪い訳でもないのだ。この世に生きる多くが、なんの根拠も無く、それを【禍をもたらす色】と呼んでいるだけだ。変わらず愛情深い、父母。彼らにその矛先を向けることも無く、自らに【宿命】として科したお前は、強い。ただそれが、やり場のない闇を、お前自身がその身に、巣食わせてしまったのだ」
すらりとして長い指先が、唇を辿れば、甘く、どこか懐かしい夏花の香りが鼻孔をくすぐった。
「俯くな。胸を張れ。誰しもが闇を負い、影を引く。たとえ、聖人君子だろうと、、、」
脳裏に、反芻される甘い言葉。
頬を包む、冷たい手に、温もりが生まれた。
「お前の苦悩、俺は分かるよ」
「、、、、、」
本能が齎す、痺れるような陶酔感と、理性。
息を詰めた燕倪の、青鈍の眸を射抜いたまま、
「お前が負った痛みも辛さ、やるせなさ。俺が半分、背負ってやる」
「あ、、、」
血が流れ出しているせいか、その狭間にある、【契約】に ―――、目が眩む。
「だから、俺にくれないか?」
茶目っ気たっぷりに、小首を傾げる。
「なぁに、ひとつだけだ、、、」
「、、、、、」
指先が、その右目にかかる。
鋭さを増した爪が、地肌に食い込む、感触。
「きれいな【いろ】だ。この世の果てにある、解脱の【いろ】」
青く、どこまでも澄み渡った、その眸。
影を落とし、暗く、陽炎を宿して、染まりゆく。
閉ざされる ―――、視界。
鎖される ―――、世界。
「くくく、、、」
短く、喉が、鳴った。
眉宇を顰めた、ヨルの腕の中で、
「この目が、きれいなもんですか、、、」
燕倪が、嗤っていた。
「これは、臆病者の証ですよ。誰のせいにもできず、さりとて、素直に受入れることもできない、弱い俺自身です。恨み事のはけ口すら見つけられず、克服すらできず、今までも、、、これからも、、、」
カタカタカタ…
業丸が、ひとりでに震えている。
「それが、、、」
足で押さえつけたはずの、燕倪の右腕。
「一生分賭けて乗り越えなくちゃならない、俺自身なんでッ‼」
「むっ」
青みを帯びた白銀の閃光が、放たれた。
眩さに、一瞬、目を覆った、ヨル。
足の力が弛んだところを、
「御免ッ」
燕倪の一刀が、横薙ぎに ―――、
― えっ⁈ ―
赤い髪が揺れ、突如、白い旋風が、巻いた。
キィン…ッ……
火花は、確かに、鋼のものであった。
間合いに入った途端に、弾かれる ―――、腕にずしりと来る、重い太刀筋。
燕倪は ―――、かつてこの太刀を、どこかで受けた事があるような憶えがした。
「ぐうッ」
しかし今は、その記憶すら振り切るように、手に刺さっていた角を引き抜いた。
したたか、赤い血潮が床を染めたが、まったく動かないわけではなかった。
――― 、熱い。
灼熱して、滾って、今にも吹き出しそうな熱量が、左手から業丸を経て、全身に駆け巡っていくようだった。
「、、、、、」
姿こそ無いが、白い旋風は、今だ、そこにいた。
ヨルを守るため、ただ、静かに、その傍らに傅いているようだった。
キキキュ…
すく背後で、燕倪を案じる小さな声がした。
― これじゃお互い、退けないよなッ ―
武人として、燕倪は最上の好敵手を見つけた歓びに、厚めの唇に笑みを浮かべた。
………
姿なき白き気配に、しかし、確かな存在感を感じながら、気配を辿れば、相手も笑ったようだった。
中段に構え、細く息を吐く。
斬り結ぶ事は、おそらく無いだろう。
お互い、一刀で決まる。
力量は、ほぼ ―――、互角。
「、、、、、」
………
対峙したまま、彫像のように動かぬ燕倪と、姿なき風伯。
遡ること、赤き望月が中天に昇りきる、すこし前。
「壱岐媛ッ」
一角屍魚の壱岐媛、それを駆る蒼奘。
指を指した、その先に向かって、巨大な口を開くと、
ゴワォアア…ッ‼
大量の白き砂が、吐き出された。
噴き出したそれは渦となり、細やかな粒子は、吹きつけたものを削らにはいられない。
強大な要塞然とした、城。
不意に、頭上が、翳った。
見あげた、夜空。
赤き月が、忽然と姿を消していた。
僅かだが、巨城の纏う陽炎が薄らぎ、
メキッ…ミシミシ…ッ…
何かが裂ける音が、聞こえた。
「今だ」
その峻険な絶壁を思わせる壁に現れた、亀裂。
「そのまま突っ込むんだっ」
グォオオオ…ン…ッ
壱岐媛が、鰭を大きく広げ、尾鰭は力強く、大気を捉え、掻く ―――、飛び込む。
ドゴオォオオッ………ッ
轟く、爆音。
砕け散った城壁が、石礫となって降り注ぐ中、
「無茶しやがって、あいつ‼続くぞ、伯ッ」
キュィ…
ぐるりと辺りを旋回した後、その入り口に続いた燕倪と伯。
彼らを見送って、奏伯は一人、頭上を見上げていた。
「八火よ」
燃え上がる、焔の柱。
さらに駆け昇る、鋼雨。
闇に沈んだ、帝都。
帝都ごと、大陸を東西に割ったかのような大地の亀裂を、遥か彼方に、
ブルル…ルルウ…
鋼雨が落ち着きなく前脚を掻き、首を振る。
かつての主の匂いが、そうさせるのかもしれない。
視線の先に、天を掴み、帝都を負っていた紅龍 ―――、檎葉。
ぐったりとした様子で、磔にされたかのように、動かない。
― 異端の都守。そう簡単に鬼道は解かせぬ、か。さて、、、 ―
今だ、術中なのだろう。
鋼雨の首筋を撫でやりながら、奏伯は、金色の双眸を、真東から真西へ。
星が、幾つも流れていた。
― 星神らも、目覚めたか。特に、ラフーとケートゥに添って、騒がしい。だが、狙いは、、、 ―
奏伯が、馬首を廻らせた。
弩鸞山脈上方、真北を見つめ、眸を眇める。
「太白を艮に押しやり、太一を染めるつもりか、、、」
その眸に映るは、北極星。
司るは、紫微宮に住まう天帝の星。
それは、帝都の【亡影】である【計都】を、現世に固定させ、盤石なものとする、一手。
折しも、闇の居城が、目の前で、いびつに傾きはじめた。
為す術は、ないのか?
その様を、無言で見つめ、
「、、、、、」
短いため息が、青い唇をついた。
雲間から差し込む、金色の輝きにも似た双眸が、ゆっくりと伏せられた。
黒き雷光にも似た何かが、天地を貫いた。
グゴォオオオオ―――ッ…
ケェエエエ―――ンッ…
同時に大気を震わせた ―――、苦鳴。
「、、、、、」
頭上を見上げるでもなく、亀裂の底を、見つめるでもなく。
闇夜に霞む、白い虚像。
鞍上で、冥府の業火に抱かれながら、ただ、吹き荒れんとする絶望の序奏に、聞き入っているようでもあった。
赤き月光が照らす薄暗がりの中、数頭の馬が、街道を南へと疾駆している。
先頭を行くのが、青母衣を靡かせた琲瑠が手綱をとる、連銭葦毛【千草】。
そのすぐ後ろを、大の大人を二人乗せた青鹿毛、清親の愛馬【於碕】が、続く。
他に、数頭の近衛が付き従っているが、追いついてくるのに、やっとの感だ。
「清親」
それまで殊勝に、じっとしていたが、ついに、背中から声を掛けられた。
山から吹き下りる夜気が冷たく頬を切るが、腰に回った腕は、あたたかかった。
先を行く、千草を追いながら、
「慣れない鞍上だ。舌を噛むぞ、鳳祥院」
そう窘めると、しがみつく腕の力が、強くなった。
清親の華奢な背名に、頬を寄せたまま、
「赤い月が、消えてしまったよ」
「何⁈」
鞍上で振り向いた、清親。
中天を覆わんとした、その月が、確かに掻き消えていた。
異変に気付いた、後続の近衛ら。
― 助かった、のか、、、? ―
闇夜に、帝都の高い塀が見える。
しかし、不吉な赤き月が無くなったと言うのに、
「禍々しさが、増したようだ。皆は、無事であろうか、、、」
「嗚呼、、、本当に、これが現実だとは、、、」
帝都上空を覆う、もうひとつの都が、深い影を落としていた。
自然、速度が落ちて、
「右中将ッ」
先を行く琲瑠に、咎められた。
頷いて、前を見た。
仲間や家族の顔が脳裏を過ったが、今の清親の目的は、ひとつだった ―――、帝を守る。
それが、清親の責務であり、揺るぎない武士としての指針であった。
「口を閉じろ、鳳祥院。私に、しっかりつかまっていろ」
「うん」
全幅の信頼を置く、その素直な言葉に、折れそうだった心が奮い立つ。
一度、肺腑に深く息を吸い込んだ。
噎せ返るような、甘い香りではなく、土と緑の香りがする、いつもの夜気が、体の隅々まで行き渡るようだった。
血気を漲らせたところで、
「気を抜くなッ‼駆け抜けるぞっ」
於碕の腹に、踵をくれる。
力強い、その声に、呑まれてしまいそうだった面々が、
「おおッ」
「はッ」
手綱を握る手に、力を込めた。
馬群の速度が上がる中、一行を牽引する琲瑠もまた、
― 我が君、、、 ―
身を切るような想いを、噛みしめていたのかもしれない。
チキ…チキキ……
それは、小さな音であった。
伯が、歯を噛みしめていると音と分かった者はいない。
表皮をしたたか蝕まれ、染み出した血潮が、じっとりと染みを広げてゆく。
階下へと滴りしながら ―――、その命を削りながら。
薄らと開いた眸は、燕倪の背を映し、
チキキ゚…ギギギ…
噛みしめる牙が擦れて、口腔に滲む血は、とめどなく溢れてゆく。
それでいい、と、伯だけは思っていた。
この異形ばかりの城にあって、随分と頼りない【人】の背に守られながら、今、この瞬間、伯の心は清々しかった。
…………
おそらく、燕倪も同じだったろう。
心までも蝕む、【腐蝕の香り】の中で、正気を保っていることこそが希望であり、その寄る辺に、二人とも賭けているのだから…
黒き刃に貫かれた、遙絃。
その意識は、茫洋と、赤き光の中を漂っていた。
― 寒いな、、、 ―
何故、ここにいるのか?
何が、起きたのか?
己が、何ものなのか?
それらが、霊紫の断片となってばらばらに分解され、吸い上げられているようだった。
辺りを漂いながら、吸い上げられてゆくその霊紫に触れれば、
― あ、、、 ―
顔の無い少年と、氷湖に立っている様子が視えた。
― この子ども、、、は、、、 ―
ふわりと、九尾の辺りを、何かが掠めいった。
青き、その霊紫のゆらぎに指を伸ばす。
― 、、、ああ ―
雪解けを迎えると、少女はその日最初に摘んだ花で腕輪を編み、少年は冠を編んだ。
共に、産声を上げ、
― 奪った記憶だ、、、 ―
次の瞬間、その手は少年の首を、絞めていた。
蠱惑的な唇に、自嘲気味な笑みが浮かび、
「くくく、、、あはははっ」
遙絃は、からからと大声で笑い始めた。
辺りを憚ることもなく、ひとしきり笑った後、
「今の私には効かぬよ、古き悪友よ。この記憶、罪は、魂に刻んでしまったでなぁ」
豊かな髪を、背に払ったのだった。
蜂蜜色の体毛を、闇に染めた九尾の巨狐。
見開かれ、虚空を宿した、双眸。
「、、、、、」
焦点定まらぬその眸に、紺碧の光が差し込んだ時、月の光を失った深淵で、
「やれやれ、、、」
遙絃は、己が身を貫いている巨大な刃に、暢気に肩を竦めてみせた。
傷口は、それなりに痛みはあるが、霊紫に分解されるというのは、原初へと遡るだけあって、幸い、耐えられないものではなかった。
― しかし、これはこれで、時間の問題だな、、、 ―
九尾を、忙しなく振りながら、
― 空狐光体となって、この柱を砕けば、物質化した浮城が帝都に落下するだろう。まあ、地仙としては失格だが、、、 ―
ぎちぎちと、牙が鳴った。
青き狐火が幾つも放たれ、天地も分からないほど濃厚な闇をさらに深く、照らし出した。
狐火の揺らめきの中、腹腔から湧き上がる怒りに、遙絃の紺碧の瞳孔が、糸の如く引き絞られる。
獰猛な獣神の性が、
― 人の都が血に染まろうが、この際、どうでもいいぇ、、、 ―
剥き出しになる。
ケケ…餉餉…餉餉餉餉餉餉………
奇怪な唸りを上げれば、眦が裂けた。
しなやかだった体躯が、俄かに膨れ上がる。
一目でそれと分かる、筋肉の隆起。
フシュルシュルシュル………
黒き鉤爪ぎらつく手を広げ、真っ赤な口を開くと、己が身を貫く忌々しい黒き刃へ。
いざ、齧りつかん ―――、
≪ 闇の底で、殊勝にも、すすり泣いておるかと思ったが、、、 ≫
―――、それは、すぐ鼻先で、ぼろぼろの翅を休めていた。
触覚も失った、哀れな蝶 ―――、カラスアゲハ。
「、、、、、」
遙絃の眸に、紺碧が宿る。
弱々しくも健気に翅を震わせれば、可憐な姿とは裏腹に、耳障りな声を伝えてきた。
≪ 聞こえているか、老狐 ≫
「私より年季のいった貴殿に、年寄呼ばわりされたくはないぇ ―――、勝間の」
遙絃は、露骨に嫌な顔をした。
声は、勝間の地仙である、緋龍檎葉のものであった。
≪ 相変わらずの減らず口じゃ、、、 ≫
「で、御老体。このままではお互い、霊紫に分解されての共倒れだ。【綻び】は、見つかったかぇ?」
さも、煩わしいと言わんばかりに、あくびを噛み殺す。
因縁浅からぬ仲のようで、どこか余所余所しい、二柱。
「きやつは、我ら地仙を封じ固めて、やがてはその身を架した龍脈をも、意のままに操るつもりか、、、」
≪ ゆくゆくはそうなろう。汝には見えまいが、北辰を貫きて、金神七殺の楔を穿った、、、 ≫
「もはや、星神の並びまでも、意のままか。やはり生前、天津神共に、掛け合っておくんだった」
≪ まったくだ、、、 ≫
「で、、、」
低く、遙絃の喉が鳴った。
鋭く眇めた眼差しで、鼻先の可憐な蝶を睨むと、
「本題だ。策を弄すために、ここまで来たのだろう?」
≪ ああ ≫
檎葉の眷族である蝶は、ひらひらと辺りを舞う。
青き鱗粉が舞えば、遙絃の鼻先に、夜空を描く。
点と点、星と星を繋げば、無数の星座が現れた。
鷲に白鳥、鴉を猟犬が追い、琴の音色の中を天秤が傾き、獅子と小獅子は狼を伴いじゃれる様を、龍が睥睨している。
小狐狙い、矢をつがえた射手の背後には、蠍が潜み、それを蛇が眺め、大熊と小熊がその先を睦まじく駆けてゆく。
その一つが、輝いた。
真北に輝く、北斗七星。
北辰、太一、ポラリスなど、様々な名で呼ばれる ―――、北極星。
≪ この世の【外殻外】の理を引き入れて、紫微城と称すのなら、、、 ≫
「むっ、、、」
その言葉に、遙絃の背筋が伸びた。
天津国よりも、さらに高次元の神々。
彼らを束ねる者こそ、紫微宮に住まう【天帝】。
大胆不敵にも、その加護を逆手に取ったヨルの奇策 ―――、否、鬼策。
陰気に傾き、染まらんとしている、龍脈。
翻弄される姿表しているのか、星の海を舞う蝶が、ひらひらと北斗七星の辺りへ。
一度、陰気に傾いた龍脈の均衡を戻すには、策を破るしか無く、
「我らも、外殻外の加護を賜ればいい、か。これは、盲点。さすがは、最古参の地仙、、、」
にやりとした。
遙絃の眸は、意味深に舞い寄る蝶の穴の開いた翅を潜った【ある一つの星】を、見つめていた。
≪ 天津国の連中は、後々、煩かろうなぁ、、、 ≫
「ああ、それならば、私に任せて欲しい。これでも、いくらかの神々には、貸しがある、、、」
≪ 女狐め、、、 ≫
「今日日となっては、褒め言葉だぇ、勝間の。それよりも、ここは地の底、常世の淵だ。そちらは、確実に、捉えているのだろうな?」
≪ ああ。雲を晴らさせたのか、裏目に出たな。すべての星神は、我らの太祖にも等しい。天は儂が統べる。地を掴め、老狐、、、 ≫
「承知。後は、軸の調律、、、」
≪ 適役が、【ひとり】いるだろう? ≫
何かを思い出したように、深く頷きながら、
「天仙、地仙、冥仙。三界が揃えば、森羅万象すらも覆る【権限】が与えられる、だったな、、、」
≪ うむ。あやつ、端からそのつもりで、静観しておる。仲間を信じ、我らを信じてな。焦らしては、さすがに後が恐ろしいわ、、、 ≫
「ああ ―――、そのようだッ」
遙絃の口が、一息に、哀れな蝶を喰らう。
金色の光を纏えば、九尾が四尾に変化。
そのまま、しっかと刃を咥えると、手足の爪を食い込ませた。
クケケケ―――ェエエエンッ‼‼‼
黒き刃に巻きついた、光と化したその身が、螺旋を描き、伸びる。
闇の奥へ。
その最奥へ。
光 ―――、奔る。
コ…コォォオオオ―――………
細く、息を吐き出す。
手足に、中空に磔にされた状態で、それぞれ黒き刃が刺さっている。
その胴を、眼下から伸びた【鞘無し】が貫いている。
緋色の眼光が、北極星を一瞥。
背を抜け、真っ直ぐに伸びる、黒き刃。
ジジ…ジジジジジ…
委縮していた、竜鱗。
― しかし、難儀なことになったものじゃ。儂だけなれば、どうとでもなるが、、、蒼奘を失えば、箏葉が泣くでなぁ、、、 ―
血が通うように光沢を放つと、薄らと火焔を纏った。
今となっては存外、穏やかな心持とは裏腹に、金色の鬣は逆立ち、長い髭が揺らめけば、吻に皺が寄り、牙を剥く。
ゴㇽ…ガガガ………ッ
吐き出されたのは、火球 ―――、ではなかった。
渦巻く、雲だ。
みるみる内に天上を覆いつくさんと広がった、その厚き雲。
赤、黄、紫、白、黒。
雷放つ、鳴神を呼ぶ。
― さて、参ろうか、、、 ―
その身が、灼熱した。
赤き月よりも朱く、熱く、激しく、燃え上がる。
焔龍、そのものと化した、檎葉。
雲を伝い、大地を照らし、天を焦がしながら、今 ―――、龍脈を太古の炎で染めゆく。
「鋼雨」
鞍上から舞い降りて、奏伯は、乳青色の鬣、漆黒の巨躯、大きな真紅の眸を見つめた。
鼻筋を撫でてやりながら、
「今まで、よく仕えてくれた、、、」
そう労った。
ブルル…ルル…
鼻面を、奏伯の手に押し付けながら、鋼雨は、しきりと首を振って見せた。
穏やかな笑みを、この時ばかりは青い口元に刷くと、
「これを、蒼奘に、、、」
懐から、何かを取り出すと、咥えさせた。
何の変哲もない、枝のようなものであった。
心得て、城へと向かって駆け出す様を見送ると、奏伯は、宙へと身を投じた。
白銀の髪が巻き上がる中、胸の前で人差し指を合わせて手を組み、印を結べば、
「我が荒御魂よ、、、」
冥府の業火が八色に別れ、一つ一つ、その身に吸い込まれてゆく。
世界が、紅蓮の焔に包まれた時、眼下の黒き刃から、やや離れたところに静止。
まばゆくも、どこかおだやかな光が、人の形をしていた。
金色の双眸だけが炯々と、彼方の北斗七星 ―――、その隠された一つを見据えていた。
「言巻くも畏き八乙女の御前に、畏み畏み白さく、天土幽冥の氏子が、この処を千代の住処と護り定めて……」
朗々と神呪を唱えながら、両の手が、それぞれ天地へと伸ばされる。
頭上に迫る、紅蓮の焔。
亀裂の底で、何かが光った。
黒き刃を縫うようにして、せりあがるのは、金色の光の帯であった。
紫微城にぶつかる ―――、寸前、
「八十か日あれど、今日を生く足る日の禍事を、大神の御氏子の斎神魂取り持ちて、星切り倒して星切り平均して……」
焔は反れ、光は撓った。
その先に ―――、奏伯の姿。
紅蓮の炎と、金色の光の帯が混じり合う、その中で、ゆっくりと両の手が合さると、
「八乙女の高き尊き御恩頼を以て、あわれみ給ひ、慈しみ給ひ、日に異に勤しみ励む生業を、いやすすめにすすめ給ひて、過ち犯す罪咎め、祓い給へ、清め給へ、護りめぐみ幸え給へと、恐み恐み白す……」
柏手が、打たれた。
ズ…ズンンン…
大気が大きく揺れて、大地に立っていたあらゆる場所の人々は夜空や、あるいは太陽が、ぶれたように感じ、戦慄しただろう。
実際、月の影響で、干いていたはずの大海原の水は、一瞬で干潟を満たし、夕暮れを目前としていた地域では、瞬く間も無く、夜を迎えることとなった。
いつも早起きの鶏達は、突然昇った太陽に、朝寝坊を許したことだろう。
星が振れた時、世界は新しく、産声を上げたのかもしれない。
― まったく、、、これでは鬼にも、なりきれんぞ、、、 ―
失った、一角。
右目の辺りを押さえたまま、ヨルは、【鞘無し】に背を凭れた。
天地を穿ち、理をも歪めえる ―――、冷たき刃。
早贄を獲て、歓喜に脈打つのか、陽炎にくゆっていた【計都】が、鈍い光沢を放ちはじめた。
楔によって満ちゆき、霊紫によって再構成される、【闇の出城】。
歓喜に沸く、魑魅魍魎らの気配が、大気に満ちてゆくようだった。
計都から、紫微城へ。
羽化を前に、人知れず、ため息が、唇を震わせた。
― 、、、世は、乱れよう。だが、その後に待つ【新世界】には、【古き掌】から決別した、等しき命が謳歌する ―
ヨルは、天蓋を眺めた。
彼方に伸びた、その刃。
囚われた緋龍の向こうで、北極星が、光輝いていた。
【鞘無し】が、緋龍檎葉、天狐遙絃の霊紫を吸いつくすまで、そう時間はかかるまい。
世界は、変わろうとしている ―――、ヨルの一手によって。
その耳に、近づいてくる馬蹄の音を、聞くまでは。
空の玉座を背に、ゆらりとヨルが佇んだ。
階下に現れたのは、
「鋼雨か、、、」
まぎれもない、かつての愛馬であった。
ブルル…
魔をも祓う、銀の蹄鉄で床を掻くと、主であったヨルを一瞥。
ブルルル…ル…ヒヒィイイ―――ンンッ‼
前脚立ちになって、咆哮。
ギシャ…
伯が、笑った。
と、同時に、
ガッ…ガ――ァァアアッ‼
ギャンッ…
蒼奘を押さえていた黒き獅子を呑み込む、巨大な血の色をした、【咢】。
それは伯の、階下へと滴り落ちた自らの血潮を媒体にしたものであった。
「うっ、、、ん?!」
したたか、床に押さえつけられた、蒼奘。
体を起こした時に、
ブルッ…ググルル…ッ
大きく首を振った鋼雨の、力強く階段を駆け上がる蹄の音と同時に、胸に、【何か】が当たった、感触があった。
膝の前に落ちた【それ】を、手に取って、
「これ、は、、、」
蝕まれたままの眸で、頭上を仰ぎ視た。
依然として、姿は見えないが、
「、、、、、」
夏花の香りが、漂っている、、、
姿は無き、白き風の気配と対峙していた、燕倪。
……………
「、、、、、」
中段から八双に構えざま、一刀を放たんとした、その瞬間、
……………
「‼?」
気配が、後方に退いたのを感じていた。
「待てッ、、、うっ」
その背を追わんとした矢先、漆黒の風が、行く手を遮った。
鋼雨だ。
ヨルが纏う、鬼気と香りに過剰反応してか、珍しく感情的になっている様子であった。
グルルッ…ィイイッ…
闇に堕ちた、かつての主を、責めようとしているのかもしれない。
血走った眸には、憤怒とも悲愴ともつかない感情が、入り混じっていた。
「、、、、、」
穏やかですらある微笑みで佇む、ヨル。
血泡を吹き、歯をむき出し、鬣を乱した鋼雨。
ヒヒィイイ―――ンッ
その蹄を打ち下ろす ―――、寸前、
ヒュ…ン…
白い風が、巻いた。
銀の蹄鉄を弾く、金属音。
巨体がよろめき、前脚を階段につける、刹那、
ルルルッ…
鋼雨の胴が、しなやかにうねって見えた。
体勢を立て直し、跳ね上げられた、後脚の一蹴。
顔色一つ変えず、佇んだままのヨルの鼻先で、
キィインッ…
火花が散った。
そのまま、旋風が巻いて、
「鋼雨っ」
脚をとられた鋼雨が、階下へと滑り落ちてゆく。
「おいっ、か、、、っ‼」
『風ッ‼』と呼ぼうとして、燕倪は、次の光景に、言葉を失ったのだった。
鋼雨が、玉座へと至る階段を駆け上がってきた時、ヨルは、天地の異常を感じていた。
「、、、、、」
【鞘無し】の悲鳴にも似た、震動。
同時に、檎葉と遙絃の神気に呼応する、強大な霊力の存在。
そして、それに応える星神の聲。
さらには、
「お師さん」
背後に立った ―――、愛弟子の気配を。
「、、、、、」
ヨルは、己が背から胸を貫いた、一本の枝を見つめた。
何の変哲もない、檀の枝。
それなのに、
― 檀の、枝、、、神代より鬼を祓う、神聖な樹木。なるほど、この世に倣って【鬼】を名乗った俺は、理によって、縛られていたと言うわけだ、、、 ―
ヨルの口元から、赤いものが、伝っていった。
浄衣を染める、赤。
長く癖のない朱金の髪が、尾を引くように、崩れゆくその身に続く。
階下へと、そのまま倒れ込む ―――、寸前、
「、、、、、」
蒼奘が、抱きかかえた。
その拍子、
カラ…ン…カララ…ン……
胸元から、金色の光が、毀れて落ちた。
「あ、、、」
指先が、その輝きを追わんとする。
しかし、蒼奘は、その身を腕に抱いたまま、離さなかった。
転がり落ちる、小さな金色の輝き。
転がり、転がって、
「、、、、、」
その小さき匣は、涼やかな衣擦れの音をさせて現れた、男の手の中へ。
白銀の髪を靡かせ、玉座へと続く階段をのぼりながら、
「魂魄というものは、それぞれが、大なり小なりの【業】を負うために、生まれ出でる。それは、言い換えれば、神霊らの【神意】と同じようなもの、、、」
白い吐息を、吐き出した。
それは、白き焔にも似ていた。
蒼奘と同じ姿をしているのに、今となっては、まるで違う ―――、人外の神氣を、纏っていた。
「ごく稀に、喰われるものもあるが、新たな時代の礎となるため、【大いなる流れ】に還流されるべきものであることは、知っていよう。特に、帝となる人の魂魄は、一際、その役割の意味合いが、濃い、、、」
「お師さんの中で見た輝きは、先帝の魂魄だったのですね」
「、、、、、」
蒼奘の腕の中で、ヨルが薄く笑ったようだった。
黒き刃を、一瞥。
細やかな亀裂が、奔っていた。
隻眼を細め、見上げた夜空には【北極星】 ―――、ではなく、【ある星】が、瞬いていた。
「北斗七星、第六星の輔星【金輪星】。天女の加護を得たのか。今、天の磐座におわすは、八乙女が末姫の豊宇賀というわけだな。くくく、、、さすがに、力の及ぶ範囲が違うわ、、、ご、ふっ、、、」
「お師さんっ」
咄嗟に、蒼奘が、枝を抜こうとする。
その手に、口元を汚した血を、手の甲で拭ったヨルの手が、重なった。
「抜けぬよ、、、俺は、自らを鬼と属性づけた、、、檀は、破眼ともども、この身をこの世に縫いつけ、根づいていた。分からぬお前では、あるまいよ、、、」
「し、しかしっ、、、」
「あー、狼狽えるな、、、お前が、踏み出したもんは、そんなやわなもんじゃねぇだろう?」
「うっ、、、」
かつての愛弟子の温もりを感じながら、ヨルは、傍らに立った奏伯を見上げた。
「、、、内裏に現れ、俺が伴をしていた御方は、【想念】だ。魂魄は、最初から、その金の匣の中」
金色の眼差しで、掌に載った金の匣を見つめると、
「夢魔になる前に、夢路より救い上げたことに免じ、この魂魄は、私が預かろう、、、」
「、、、輪廻の輪に、戻れると?」
「その両方を叶えるために、亡影の力を、焚きつけたのだろう、、、?」
「、、、、、」
無言で、薄笑みを湛えた唇を、見つめた。
ヨルの手が、蒼奘の手を、軽く叩く ―――、まるで、赤子を宥めるように。
心得て、腕を緩めると、さらりと頬に、赤い髪が揺れた。
夏の野に咲く、あまい花の香り。
「蒼奘」
額が触れあって、眼差しを感じた時、
ピシャ…ッ…
「未だに小天狗だと思っていたが、立派になったな、、、」
「あ、、、」
あたたかいものを、頬の辺りに感じた。
同時に開けた ―――、視界。
蒼奘が見たのは、
「お師さんっ」
ヨルの残った左目から、血濡れた指が、引き抜かれるところであった。
負の念の集合体である【亡影】が、物質化すると【計都】。さらに、天帝の加護を得て、存在意義が生まれると【紫微城】に進化?変化?するものとして、書いています。
金輪星については、仕入れたばかりの薀蓄をひけらかそうと、店長に話した際、
「ああ、それ知ってる。北斗○拳の死兆星だ。見えると死ぬってやつ」
ちょっwwwそんな扱いなんすかっ。。。
と、狼狽えましたが、今更なので、決行することに。。。