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自衛隊空母『あまぎ』戦記  作者: 高本五十六
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第四話 防衛出動命令

『あまぎ』のCICでも魚釣島上空で起きたことは那覇基地、松島と小松との交信で聞いていた。

「ミサイルだ!『ヴァイパー2』、ブレイクライト!!」

「間に合わない!!」

小松が叫んだ途端に爆発音が響いて、それきり小松の声は聞こえてこなかった。

「小松ーーー!!!」

「どうした、『ヴァイパー1』、何が起きた?!」

「那覇基地、『ヴァイパー2』が撃墜された!これより交戦する!!」

「撃墜!?待て、『ヴァイパー1』、交戦は認められない!全力で回避し、速やかに帰投しろ!!」

「何が全力で回避しろだ、ふざけるな!!」

そしてまた爆発音が響いた。

「『ヴァイパー1』、応答せよ!こちら那覇基地、『ヴァイパー1』、応答せよ!!」

那覇基地からの呼びかけに松島は答えなかった。

「撃墜された・・・?!」

佐々木を含めた『あまぎ』乗員達は言葉を失ってしまった。

自衛隊機が東亜国の戦闘機に撃墜された・・・

この状況が理解できずにいたが、その中でただ一人、西島は黙りつつも拳を握り締めていた。


「『ヴァイパー1』、応答せよ!こちら那覇基地、『ヴァイパー1』、応答せよ!!」

那覇基地からの必死に呼びかけを、『あまぎ』艦内のブリーフィングルームに集まっていた航空隊のパイロットたちも聞いていた。

「ふざけんなっ!!!」

万丈衛二三等空尉は怒りに叫び、ブリーフィングルームの壁を拳で強く叩く。万丈だけでなく、彼の同僚である桐生を含めたパイロット達の怒りが部屋中を充満していた。同じ仲間である戦闘機パイロットが殺されてしまったのだから当然のことだろう。航空隊の中で唯一の女性パイロットである坂ノ上明日奈三等空尉も同じだった。

(仇は必ず取ってやる・・・!)


「『ホーク・アイ』のレーダーが先島諸島海域に接近する艦隊を捉えました!」

先島諸島の上空を飛ぶ早期警戒機『E767』とデータがリンクしている『あまぎ』CICのディスプレイにも、『ホーク・アイ』が捉えた艦隊のマーカーが示されていた。

「艦隊だって?!」

「空母『ガウルン』を主力とする東亜国海軍北方艦隊の機動部隊で間違いありません!」

CIC内がざわつく。

「やはり相手は東亜国だったか。しかも空母まで出てくるとはな」

呟くように梅津は漏らした。

「見た目は旧共産圏のスクラップですが、中身は最新のものにアップデートされています」

佐々木が付け加える。東亜国海軍の空母『ガウルン』は、元々は旧ソ連海軍が冷戦中に建造していたものだが、財政難を理由に建造が中止され、ソ連崩壊後はウクライナでスクラップ同然で放置されていたが、それを東亜国が買い取って改修し、自国の海軍の空母として就役させた。

「何機載っている?」

「『Su30』が60機ほどです。魚釣島で『F15J』を撃墜したのもこの艦載機でしょう」

西島が答えた。

「やっかいだな」

梅津はため息をついた。これで防衛出動は避けられない状況となったのだ。

(これから向かう先は、戦場となる)

佐々木の胸の中に、冷たい風が一瞬吹いた。


危機管理センターでも自衛隊機撃墜、東亜国海軍機動部隊の接近の報は届いていた。佐藤を含め、全員の顔が驚愕に歪んでいた。

篠塚が強い口調で声を上げた。

「これで状況はハッキリとした。他国の軍隊が我が国の領土である島を不法に占領し、一方的な武力攻撃で自衛隊機を撃墜した。これはもう我が国に対する軍事侵攻だ!」

宇佐美が重い口をあけた。

「魚釣島に上陸予定だった警察・海保の特殊部隊は作戦を中止し、巡視船を宮古島まで退避させましたが、残念ながらこれ以上は警察力では対処できないものと判断し、直ちに自衛隊へ防衛出動を発令することを進言いたします」

他の閣僚たちも佐藤を見ている。皆が防衛出動やむなしと考えていた。

「緊急事態です!」

渡辺が声を上げた。

「今度は何があった!?」

「与那国島と宮古島の自衛隊レーダーサイトが破壊され、与那国島と石垣島が占領されたとのことです!!」

「何だって?!東亜国にか?」

「そう報告が来ています」

「総理、防衛出動命令を!!」

佐藤はため息をついた。出来れば防衛出動だけは避けたかったが、自衛隊員に戦死者が出てしまった以上、これ以上の犠牲は防がないといけない。

「日本の領土が侵略され、日本国民である自衛隊員の命が奪われてしまいました。これを我が国に対する武力攻撃事態と認定し、ここにいる全閣僚の同意を得、全自衛隊に防衛出動を命じます」

佐藤は石田に目を向けた。

「外務大臣、国連に我が国が自衛権を発動する旨を伝えること、それからアメリカへのホットラインの準備を願います」

「分りました。早急に掛かります」

「井之上防衛大臣」

「はっ」

「全隊員に伝えてください。我々は日本国民の生命と財産、そして領土を全力で守る。いかなる状況においても私佐藤久正は、自衛隊の最高指揮官として、陸海空自衛隊員と共にある。と」

「分りました!」

そこまで言うと佐藤は椅子に深く背もたれしてため息をついた。

東亜国海軍の空母「ガウルン」のモデルは中国海軍の空母「遼寧」です。

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