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自衛隊空母『あまぎ』戦記  作者: 高本五十六
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第二話 空母『あまぎ』

小笠原諸島近海で訓練中だった『あまぎ』護衛隊群は、魚釣島に向けて進行していた。

艦隊の中央には、旗艦である航空機搭載型護衛艦『あまぎ』。その『あまぎ』の四方を固めるのは、最新鋭のイージス護衛艦『いかり』と『あやなみ』と『あすか』、そして汎用護衛艦の『せとゆき』と『やまぎり』の5隻。

以上の6隻が『あまぎ』護衛隊群を構成している。


米軍のJSF(Joint Strike Fighter:統合打撃戦闘機)計画で誕生したF35シリーズの中で、海兵隊向けに開発されたSTOVL機(Short TakeOff/Vertical Landing:短距離離陸垂直着陸機)の『F35B』を導入し、それを15機搭載できるように設計・開発された『あまぎ』は、建造前から物議を醸していた。

国会で野党は「攻撃型の空母を保有するのは、専守防衛を逸脱した憲法違反だ」と政府を責め立て、国会前では『あまぎ』建造の中止を訴える反戦市民団体による反対デモが連日行われた。

しかし、佐藤は「『あまぎ』は米軍が持つ外征を目的とした空母ではなく、日本近海での行動を限定とした護衛艦で、6千8百もの島々を持つ日本にとって制空権を確保するためにも必要不可欠なもので、決して専守防衛を逸脱するものではありません」と、国会とメディアに対して答えてきた。

短距離限定のSTOVL機である『F35B』を採用したのもそれが理由であり、艦首にスキージャンプ台が設けられているのも『あまぎ』の特徴だ。

日本の周辺国で『あまぎ』に強く反応したのが東亜国であり、「日本は再び軍国主義と侵略戦争への道を選んだ」と激しく非難した。


「群司令。やはり、海上警備行動ですか」

「相手がまだどこか分からないからねえ。防衛出動はハードルが高いよ。佐々木君」

『あまぎ』のCIC(Combat Information Center:戦闘指揮所)で、『あまぎ』護衛隊群の司令官である梅津有作海将補と『あまぎ』の副長兼航海長の佐々木歳也二等海佐が、CICの中央にある海図台を見ながら話していた。海図台の周りには、梅津と佐々木の他には飛行群群司令の石丸一等空佐、砲雷長や船務長などの『あまぎ』の主要幹部がいた。

「島を占拠しているのが東亜国の特殊部隊だとしたら、状況はかなり厳しくなるぞ」

石丸の顔の表情が険しくなる。

「確かに、東亜国なら冷戦終結とソ連崩壊以来、大陸経由で流出した東側の旧共産圏の兵器を相当ため込んでいて、軍の近代化が進んでいます。しかも台湾やベトナムなどの隣国と領有権を巡って国境紛争をしてきているので、実戦経験も豊富。もし、この『あまぎ』が出てくることを読んでいるとすれば」

「間違いなく読んでいる」

佐々木の声を遮ったのは『あまぎ』艦長の西島竜太一等海佐だった。

「日本に切り込んでくるのなら、『あまぎ』の戦力データは喉から手が出るほど欲しいはず。必ず我々を叩きに来る」

相手の真の戦闘力と機動力を知るためには、軍事行動を起こすしかない。魚釣島を占拠しているのが東亜国軍だとしたら、敵は魚釣島を餌に待ち伏せていて、先制攻撃を仕掛けてくる可能性が高い。

「現場海域の航空優勢の確保が第一だ。群司令、到着までに飛行隊の離発着艦訓練を行うことを進言します」

「まあ、緊張もほどほどに、と言いたいところだが、よかろう」

「ありがとうございます。石丸一佐、飛行隊に準備を」

「分かりました。艦長」

西島が石丸と共にCICを出ていく。


「艦長、よろしいですか?」

艦橋で飛行隊の離発着艦訓練を視察していた西島に佐々木が声をかける。

「何だ?」

「魚釣島の占拠に東亜国が関わっていると、艦長はお考えか?」

「偶然にしてはタイミングが良すぎると思わないか?この『あまぎ』の訓練中に東亜国が領有権を主張していた島の一つが占拠され、そして今、この『あまぎ』が魚釣島へ向かっている」

「・・・では、相手の狙いは、はじめからこの『あまぎ』?!」

「前々から領有権を主張していた島と『あまぎ』の戦力データが手に入る。東亜国としては一石二鳥じゃないか?」

「しかし、いくら東亜国でも国際社会から非難されるリスクを負ってまで、軍事行動を起こすとはとても思えません」

「それだけ東亜国の国内情勢が追いつめらているのも事実だ」

内政の矛盾を外征へと振り向けることで国民の不満を解消する。よくある話だ。

「我が国の主権を侵そうとするものに対して、正面から逃げずに立ち向かい、国を守る意思と力を見せなければならない。この『あまぎ』がその意思と力だ」

「そうなれば、確実に戦死者が出ます」

「この国と国民を守って死ねるのなら、自衛官として本望だろう」

スキージャンプ台から勢いよく飛び出し、空へと上がっていく『F35BJ』を見ながら西島は言った。

『あまぎ』の名前は大日本帝国海軍(日本海軍)の航空母艦「天城」から付けました。


『いかり』『あやなみ』『あすか』はまや型護衛艦をモデルとした架空のイージス護衛艦です。

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