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自衛隊空母『あまぎ』戦記  作者: 高本五十六
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第二十四話 海戦(後編)

「『ムスダン』の全目標に命中、無力化されました!」

「『あすか』に向かって、『シャンハイ』が接近してきます!」

「10時の方向。距離15マイル!」

『あまぎ』CICで、全隊員が戦闘を見守っていた。

「12マイルで必ず撃ってくる」

佐々木が呟いた。


「『シャンハイ』、接近してきます!針路変わらず!!」

「西川、次の目標は、接近中の『シャンハイ』の前甲板主砲や!」

「主砲、ですか?」

「そうや。こいつは射線確保の手間はない。やれ!!」

「はっ!目標『シャンハイ』主砲!!」

その時、突然警報音が『あすか』CIC内で鳴り響いた。

「『シャンハイ』からレーダー波!ロックオンされました!!」

「西川、構わずやってまえ!!」

「了!主砲、っ!!」

『あすか』の主砲が火を噴き、それと同時に『シャンハイ』の主砲も火を噴いた。

「敵艦、砲撃開始!!」

艦橋のウィングにいた隊員の吉田が叫ぶ。

「艦橋よりCICへ!砲撃、来ます!!」

艦橋からの報告にCICにいた辻本は「こらアカン!」と叫んでしまった。

「最大戦速、面舵回避や!急げ!!」

「最大戦速!面舵回避!!」

清水が辻本が言ったままの言葉を復唱する。

回避行動をとる『あすか』の横を『シャンハイ』が放った砲弾がかすめ海面に落ちる。爆発して巨大な水柱を上げ、『あすか』に水飛沫が降り注ぐ。

「かわした!」

「当たらんかった・・・」

自分達が助かったことにCIC内に歓喜が沸く。

「艦長、『シャンハイ』の主砲に命中してます!」

西川の報告を聞いて、辻本は自分たちの勝利を確信する。

「よっしゃ、このまま続けて『シャンハイ』を無力化するで!第二目標、第三目標、続けていてまえ!!」

「了解!!」


「敵艦、二艦ともに無力化されました。『あすか』は無傷です!」

『あまぎ』CICでも歓喜の声が沸く。

たった一艦で二艦を主砲のみで無力化するのはまさに「神業」であり、しかも自艦は無傷のまま。こんな芸当はそう簡単にできるものではない。

「さすが辻本さんだ」

佐々木も笑う。

西島は黙ったままだったが、口元はかすかに笑っていた。


外務省アジア大洋州局のオフィスへ戻った渥美を、彼の部下である杉本秀一が出迎えた。

「局長、お待ちしていました」

「安保理の方はどうなっている?」

安保理のことを聞かれて杉本は報告する。

「各国にはこれまでの経緯を可能な限り説明しています。しかし、各国それぞれの思惑もあって、結論が出るにはまだ時間が掛かると」

「できれば関わりたくない、ということだろう」

渥美がため息をつく。

「ええ。安保理の常任理事国であるアメリカとロシアは今も首脳会談中で、特にロシアは東亜国とは旧ソ連時代からの関係もあり、この問題はかなり難しくなりますね」

「アメリカも口では同盟国の日本を助けるとは言っているが、どこまでが本音か分からないものだ」

建前と本音が違うのが国家というものだ。

「電話会談の方は?」

「欧州局がイギリスのキャメロン外相とアポを取りました。1時間後に外務大臣と電話会談です」

「非常任理事国の各国、カナダ、オーストラリア、ベトナム、フランス、とにかく片っ端から電話会談のアポを取りつけよう。今の時代、国家間戦争はグローバル経済のリスクにしかならないというのは皆が承知しているから、そこをうまく焚きつければ国連の対応も変わってくるはずだ」

「分かりました。こういう状況の時こそ冷静に、ですね」

「そうだ。よろしく頼む」

現場の自衛官達は専守防衛の制約を受けながらも懸命に戦っている。ここが我々の戦いの場だ、と渥美は杉本と共に歩き出す。

「この戦いを何としても終わらさなければならない。絶対に」


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