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自衛隊空母『あまぎ』戦記  作者: 高本五十六
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第十八話 空戦(出撃)

令和2年、新年明けましておめでとうございます。

8月2日 16時30分


「『ホーク・アイ』からの情報!東亜国海軍空母『ガウルン』から発艦した戦闘機10機、高度1万、マッハ1.5を保ちながら向ってきます!!」

『あまぎ』CICのレーダーディスプレイには、早期警戒機『ホーク・アイ』から送られてきた東亜国軍戦闘機のデータが映し出されていた。

「艦長、これは・・・」

「ああ、波状攻撃だ」

西島は眉をひそめた。艦隊防空システムだけでは防ぎきれないと判断し、ヘッドセットをつける。

「『あまぎ』飛行群、出撃準備!」


スピーカーから響く西島の声に、ブリーフィングルームにいた飛行隊のパイロット達は一斉に立ち上がり、『F35BJ』がある格納庫へと向かった。


ガルーダ隊のパイロットである高本は、自身の乗る愛機がある格納庫へ向かう途中で、詩織がいるのを見つけ足を止めた。

「詩織・・・」

「行くのですね」

「ああ。行ってくるよ」

「・・・ご無事で」

高本は頷いて再び格納庫へと向かおうとする。が、後ろから袖をギュッと引っ張られる。

「・・・」

詩織は黙ったままで、顔を伏せている。高本は振り返ると詩織を包み込むように優しく抱きよせる。

「詩織、そのままでいいから聞いてほしい」

黙ったままで頷く詩織。

「俺は『あまぎ』を、詩織がいるこの『あまぎ』を守りたい。その為にも行かないといけない。分かってくれるね?」

「・・・はい」

「戦いが終わったら、必ず帰ってくる」

「約束ですよ。絶対に帰ってきてください」

「分かった」

詩織の頭を優しく撫でる。


格納庫では飛行群に所属する整備員達が『F35BJ』にミサイル、弾薬、燃料を積み込む作業を行い、パイロットも自分の乗る機体の点検をしていた。

「いいか、敵の攻撃はさらに激しさを増すだろう」

ガルーダ隊を指揮する隊長の西村一彦三等空佐は、高本を含めたガルーダ隊のパイロット達に訓示をしている。ガルーダ隊が先陣で出撃することが飛行群群司令の石丸から言い渡されたところだった。

「今さら言う必要はないだろうが、戦いに必要なのは技能だけでなくチームワークだ。僚機、クルー、整備員を信頼し、信頼されろ。その支えがあった上で、航空自衛隊パイロットの中で、『あまぎ』飛行群所属に選ばれたことに誇りを持て。そして、いかなる状況でも冷静に対応しろ。これまでの訓練の成果を、東亜国軍のパイロット達に見せてやれ。ここにいる全員が一機も失わず、この『あまぎ』に帰ってくるぞ。いいな!」

「了解!!」

訓示が終わり、それぞれの機体に向かう。

「旭」

ファルコン隊に所属する明日奈が声を掛けてきた。高本と明日奈は互いに防大での同期であり、卒業後はそれぞれ別の基地に配属されたが、『あまぎ』飛行群への転属で再会した。

「何だ?明日奈」

「あんた、撃ち落とされるんじゃないわよ」

「誰がそんなヘマするかよ」

「絶対に帰ってきなさいよ。もし帰らなかったら許さないからね」

「大丈夫だ。そっちも『あまぎ』を頼むぞ」

「ええ、任せて」

拳を合わせる二人。互いに信頼している証しだ。

高本は整備員と一緒に機体の点検をして、コクピットへ乗り込む。


「石丸群司令、これは訓練ではなく、実戦だ。敵機を捕捉したら撃墜を許可する」

「はっ!」

CICにいる西島が、飛行甲板を一望できる飛行管制所にいる石丸にヘッドセットを通して話す。

「私がパイロット達に言ったことは覚えているな?」

「はっ、『一機も失うな。迷ったら撃て』と」

「そうだ。いいな、一機も失ってはならないぞ!」

「了解!!」


飛行甲板ではガルーダ隊の一番機『ガルーダ1』がスタンバイしていた。乗っているのは隊長の西村だ。

「西村三佐、命令は覚えているな?」

ヘルメットの中で石丸の声が響く。

「はっ、『まず警告。相手が撃つまでは撃つな』、それから艦長からは『一機も失うな。迷ったら撃て』と」

「そうだ」

「迷ったら、・・・撃ちます」

「必ず帰って来い」

「了解。『ガルーダ1』、出撃する!!」

エンジン音を響かせて、スキージャンプ台型の滑走路を飛び出す。そして後続機を待つために、『あまぎ』上空で旋回する。


『ガルーダ3』の高本はコクピットで出撃までの間、詩織から手渡された熊のぬいぐるみを見ていた。それは震災で亡くなった詩織の祖母が、孫へのプレゼントとして作ったもので、詩織にとっては祖母の形見でもある大切なものだった。高本も詩織からその話は聞いていたが、一緒に行けない自分の代わりとして、そして高本が無事に帰ってこられるためのお守りとして渡したのだった。

「これが俺にとっての、迷わぬためのお守りだ」

ぬいぐるみをフライトスーツのポケットにしまう。

「『ガルーダ3』、準備が出来たら発艦せよ」

「了解」

外に目を向けると、自分よりも若干若い海自隊員が敬礼しているのを見つけ、親指を立てて敬礼した。父親と一緒によく見た戦闘機映画で見たものの真似だった。

「『ガルーダ3』、出撃!!」

前方に顔を向け、エンジンの出力を上げ、『あまぎ』より飛び出す。


「ガルーダ隊、西村隊長機以下5機、発艦!!」

艦橋からもガルーダ隊の出撃を佐々木は見ていた。

「副長、いよいよ『F35BJ』の初陣ですね」

「ああ」

「ガルーダ隊が5機に対して、相手は10機。勝てるでしょうか?」

「パイロット達の技量を信じる。ただそれだけだ」

海自側の人間である佐々木には、元空自エースパイロットの西島よりも空戦の知識はないが、ガルーダ隊に一人の戦死者がでないことを祈った。

「絶対に帰って来いよ」


トップガンの続編が楽しみですね。

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