プロローグ
2010年9月、尖閣諸島付近で起きた東亜国漁船による日本の海上保安庁巡視船への衝突事件を契機に日本と東亜国両国の関係は急速に悪化。東亜国内では過激な反日感情が燃え上がり、連日反日デモが行われた。日本においては「東亜国と冷静な話し合いを行うべき」と「反日感情を剥き出しにする東亜国に断固たる対応を」と、世論が二つに分かれていた。
一方の東亜国では、内政の悪化が激化の一途をたどっていた。
21世紀に入ってからアメリカを発端とした世界金融危機による世界的な不況の影響は、経済的にも大国である東亜国にも及び、国内のいたる所に大量の失業者が溢れていた。
加えてチベット自治区とウイグル自治区における分離独立を目的とした反東亜国テロが活発化し、東亜国は武装警察を投入して武力鎮圧を図ったが、事態は収束しなかった。
経済不況の悪化と果て無き民族独立問題。東亜国人民の不満は溜まる一方であり、尖閣諸島東亜国漁船衝突事件を機に「対日戦を仕掛けるべき」と主張する東亜国軍部強硬派に板挟みにされた東亜国政府は、両者の暴発を何とか抑えながら、この緊張状態を打開する機会を窺っていた。
そして年号が平成から令和へと変わってしばらく経った頃、東亜国はついに行動を起こすのであった。