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自衛隊空母『あまぎ』戦記  作者: 高本五十六
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第十四話 防戦(撃沈)

「『せとゆき』艦長より・・・、『あまぎ』CIC」

敵のミサイルに被弾した『せとゆき』の高嶋から無線が入り、『あまぎ』CIC内がざわつく。

西島が応答した。

「『あまぎ』艦長より、高嶋艦長、無事か?」

「・・・自分は大丈夫だ。だが、艦橋ウィングにいた隊員が、・・・3人死んだ」

「!!」

『あまぎ』CICの隊員たちに衝撃が走った。そしてこの無線は艦橋にいる佐々木にも聞こえている。

「3人も・・・」

名前と顔は知らないが、同じ船乗りの仲間が死んでしまったのだ。『あまぎ』の隊員たちも胸を痛める。

「『エコー1』より『あまぎ』へ!敵潜水艦、魚雷発射管開口!また撃つ気です!!」

「まだ攻撃してくる気か!?」

とどめを刺すまでは攻撃をやめないだろう。高嶋から無線が入る。

「・・・西島艦長、本艦はアスロックのデータ入力を完了している。射撃に問題はない」

「では、撃てるのだな?」

「ああ、命令さえあればな」

「ならば、『あまぎ』より『せとゆき』に達する。アスロック発射、目標、敵潜水艦」

「!!」

CIC内に再び衝撃が走る。

「艦橋より艦長へ」

佐々木から無線が入る。

「撃沈してしまえば、敵の乗員は全員助からない可能性が高い」

「ここを逃せば、この『あまぎ』を含めた全ての艦がやられる」

「しかし」

「ここで撃たなければ、本艦の盾になった『やまぎり』の努力が無駄になる」

「・・・」

佐々木はこれ以上何も言わなかった。

「撃っていいのだな?」

高嶋から再び無線が入る。

「撃沈せよ」

「・・・了解。西島群司令代理」


『せとゆき』よりアスロックが放たれた。敵潜水艦のデータが入力されているため、目標上空に達したら、ロケットと魚雷が分離され、パラシュートが開かれて魚雷が海面に向かって落ちていく。そして着水してすぐに敵潜水艦へと向かっていった。


「まもなく、敵潜水艦に命中します!」

『あまぎ』CICでソナー員がモニターを睨みつけるように見ていた。

「・・・魚雷、命中!爆発、艦体破壊音、・・・艦内に浸水音、沈降していきます・・・!」


海面に激しい水柱が立つのが『あまぎ』艦橋からも見え、それが敵潜水艦を撃沈した瞬間だということが誰の目からも分かった。

「忘れるな。この実感は、忘れずに覚えておけ」

西島の言葉に誰も返さない。

戦後初めて、自衛隊が戦闘で敵の命を奪った。

この事実を、佐々木もまだ受け止めることができなかった。


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