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第3話 薄人誕生秘話

 セペリウス歴6165年この時代になると、世界は大きく変わっている。まず、人口はおよそ、約9千万人とすでに億を切っていた。それでも、各地で戦争は絶えず、むしろ激化していった。

 魔法使いも増え、今ではすべての人が初級魔法なら扱えるた。そのため、魔法使いの定義も変わり、現代とお味く中級以上の魔法が使えるものを魔法使いと呼ばれるようになった。

 そして、約100年前から、魔法使いと武術は切り離され、それぞれが修練に励み始めていた。

 そんな中、小さな島国がある決断をした。

 その決断とは、人工でより強力な魔法使い、武術家を作成しその者たちに戦争をさせる。いわゆる代理戦争を考えた。

 普通に考えれば、おかしなことだろう、何せ彼らが作ろうとしているのは人間であり命あるものたちだ。それを作り自分たちの代わりに命を懸けて戦わせようと考えたのだから。しかし、彼らも必死で追い詰められていた。

「くそ、また失敗だ。なぜいくらやってもうまくいかない」

 国からの要請を受けダルメシア博士は独り言ちていた。

 ダルメシア博士が受けた要請は先述の通り自分たちの代わりに戦争をさせる人種の作成。彼にこの要請が入ったのは、ひとえに彼自身がこの技術の権威だった。

 ダルメシア博士は今まで数多くの絶滅した動物などを中心として、人工授精と培養液でもって復活させてきた実績があった。

 しかし、今度の研究は人を作るというものだった。しかも、今までと違い、戦争の道具として、兵器としての流用だった。ダルメシア博士はもちろんこれを拒否したかったのはやまやまだった。でも、これは国からの要請であり、断れば国を追われることになる。小さな島国そんなことになれば行き場を失い、すぐにつかまり反逆罪で処刑される。それはいくら何でも勘弁してほしかった。

 だから、いやいや研究をしていた。

 とはいえ、彼もまた研究者、一度始まればそれに集中する。

 だからこその独り言ちだった。

「……はぁ、休憩だ」

 ダルメシア博士は1人休憩に入って今まさに失敗した対象を見た。

「しかし、こいつら、どうしようか」

 ダルメシア博士の目の前には培養液が入った容器がたくさんあり、そこには複数の男女が裸で浸かっている。彼らは誰もかれも、真っ白な肌と金色の髪の毛、目を開ければ青い瞳と、今では絶滅した人種白人にそっくりだった。

 ダルメシア博士にとって、この見た目は特に失敗ではない、博士の見解では、博士が使用した精子か卵子に白人の遺伝情報が残っており、いろいろ遺伝子をいじった際に先祖返りしただけだろうということだ。

 では、何が失敗かというと、ダルメシア博士は現行の人類より強力な魔力や力を持った人種を作ろうとした。しかし、彼らはなぜかその水準を大きく下回る数値しか出さないのだ。それでも、もしかしたら成長によって、上がるかもと期待を持ちそのまま成長させている。

「こいつら、ほんとに魔力上がるか?」

 ダルメシア博士も一向に上がらない、いや、生まれたときよりは多少は上がっているが、それでも水準に達しない者たちをだんだんと見限り始めていた。

 かといって、一度生まれた命をすぐに処分する気にもなれないし、そんなこと女神セペリウス様がお許しになるわけがないという思いから、結局何もできずにそのまま放置の状態だった。


 そして、その数が100を越えようとした時だった。

「博士、研究は中止となった」

「はぁ、中止、なぜだ」

 突然上司から中止の命令が入った。

 ダルメシア博士は当然憤慨した。

「ニュースソースは……見ているわけないか、実はな……」

 ダルメシア博士の上司は最近のニュースを語って聞かせた。その内容は、ダルメシア博士には衝撃的だった。

 それは、この小さな島国の外、ほかの国々では戦争による人口激減を重く見るようになり、このまま戦争をすればいずれ人類がいなくなるという結論に至った。

 手遅れのような気がするが……

 それでも、彼らは決断した。戦争をしないと、ようやくの決断であった。

 そして、その方法として、この世界で1晩大きな大陸、ゴブノアーク大陸で離れて古代のように集落を転々と作り生活をしようというものだった。

 これに、ダルメシア博士がいる島国も賛同、ということで中止と名たのだった。

「まじかよ。それで、こいつら、どうしようっていうんだよ」

 もちろん戦争がないということ、ダルメシア博士が作った人種をそれに使わなくてもいいは心から嬉しいことでもあった。

「このまま放置だ」

「放置って、それは、ひどすぎだろ」

「仕方ない、彼らの食料も土地もないんだからな。俺たちでは面倒見切れない」

 確かに、それはそうだった。そこで、ダルメシア博士が考えたのは、ただ放置ではなく、彼らを解き放つことにした。

「お前たちは自由だ、好きに生きてくれ」

 こうして、ダルメシア博士は研究所を後にしたのだった。


 ダルメシア博士が研究所を去ってすぐ、培養液が満たされていたケースから複数の男女が出てきた。

 当然彼らは困惑していた。

 その中で、1人の男が彼らを先導した。

 その男は自らを、マーラムと名乗った。

 そして、このマーラムは彼らの神としてあがめられることになる。

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