第1話 魔法誕生秘話
転生~最強の冒険者の外伝的な作品です。
セペリウス歴5324年、この時代の文明は高度に発展し、いうなれば現代地球より100年か200年進んだ世界。世界人口は約90億人、国数も297か国とかなりの数だった。
高度な文明ではあるが、移動手段は未来図のようにさすがに空を飛ぶ自動車というものはなく、現代地球と同じく地上を走る自動車だが、それは完全に管制制御され交通事故という言葉は存在しない。
燃料として以前は地球と同じようにガソリンを使用していたが、今ではすべての自動車が電気で稼働している。そして、その電機はというと、発電所というものもすべて廃止され、それぞれの家庭や自動車自体が必要な分だけ発電するという仕組みを採用されている。
そのほかの移動手段として、当然飛行機や列車というのもあるがそれも同じく管制制御されて事故が起きようもない。
とはいえ、国の数が多いだけあって戦争はあちこちで発生し多くの人々が苦しめられている。
また、宗教に関しては一貫しておりすべての人間がセペリウスを信仰していた。その理由としては時折セペリウスが地上に降臨しており、その姿を目撃されているからだった。
そう、かつてのこの世界は地球と同じく魔法はなく科学によって発展した世界だった。
しかし、そんな科学技術開発も謎のほとんども解明されており、終盤に差し掛かろうとしていた。
そこで、科学者たちが研究材料として見つけたのがこれまでの研究はされていたがいまだ解明されていない超能力と呼ばれる力だった。
研究する人数が増えたといっても解明速度が上がるわけではなく、やはり謎のままだった。
そんな中、フィリップ・スタイラーという31歳の科学者が、自宅に研究室を設置し妻のソフィーナとともに超能力研究に明け暮れていた。
彼が科学者になった理由は幼いころから超能力に興味を持っており解明したいと考えていたからだった。
「あなた、そろそろ晩御飯にしましょうか」
いい時間となったためにソフィーナが研究の手を止めて夫のフィリップにそう告げた。
「ああ、待ってくれ、あともう少しで……」
フィリップはそう言いつつ集中した。
そして、次の瞬間フィリップの手からほんの一瞬で小さなものだったが火が出たのだ。
「!! や、やった、やったぞ」
「!!! あなた、今、火が……」
フィリップとソフィーナは信じられないものを見たような表情で驚愕した。
それもそのはず、今フィリップがやったことは、超能力を行使する際に使う力を火に変換させるもので、フィリップたちが生涯をかけて研究しようとしていたものだったからだ。
「……できた。できたぞソフィーナ」
「あなた。おめでとう」
2人で熱い抱擁を交わすのだった。
フィリップはこの現象を古来より物語で語られている魔法と呼び、それに使う力を魔力と定めた。
この出来事こそこの世界に魔法が産声を上げた瞬間であった。
その後もフィリップは研究を重ねて火だけではなく風、水、土と4属性の魔法を編み出し、これを体系化したのだった。
といってもこれらは誰でも使える、というわけではなかった。なぜなら誰でも魔力は持っていたが、それを行使するには力が足りないという人がほとんどだった。つまり、フィリップが体系化した魔法技術はこれまで超能力者だけが使える技術だったのだ。
さて、ここで分かったことがある。それは、フィリップ自身が超能力者だったということだろう。実はこれが、フィリップが魔法を編み出せた理由の1つだったりする。
ほかの科学者たちは自身が超能力を使えない、そのためどうしても被検体として他人に頼らざる負えない。また、使えないが故に彼らはその存在を信じ切れずにいる、それが原因で研究が進まなかったのだった。
とにもかくにもこれで、この世界に魔法技術が生まれ、その後多くの科学者や魔法使いたちが研究を重ねることになる。