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第482話 16歳のイングリス・神竜捜索11

 二人が乗る機甲親鳥(フライギアポート)と、その後ろに付くように飛ぶ機竜の姿が見える。


「不死者だってマイスくん! イルミナスを壊したあれと一緒だよ!」

「! 一体誰が……!? 元々この状態だったのかな、それとも……!?」


 マイスが難しい顔をする。

 ラフィニアと同じようにマクウェルの仕業を疑っているのかも知れない。


「だけどこれじゃ、神竜の肉が採れないわね。どうするの!?」

「そうだね。次に打てる手は――ん……!?」


 そう口にしながら、イングリスは異変に気が付く。

 機甲親鳥(フライギアポート)の後ろに付く機竜だ。

 その体全体が先程のアウルグローラと同じ金色を帯びた輝きを発し始めたのである。


「機竜が光ってる!? マイスくん、これは?」

「わ、分からない! 僕は何も……!」


 オオオォォォォォンッ!


 機竜が身を捩るように唸り声を上げる。

 声を聴いたのは初めてかも知れない。


 そして唸り声を上げた機竜は輝きに包まれたまま、機甲親鳥(フライギアポート)を追い越してアウルグローラの竜骨の前に進み出ようとする。


「せ、制御が効かない……っ!」


 マイスが焦った様子で手で印を切るような仕草をしている。

 機竜はそのまま屍神竜の真上から折り重なるように組み付いて行く。


 体の大きさはアウルグローラの骨の方が倍近く大きい。

 子供が大人の背中に飛び込むような形だ。


「も、戻るんだ! イングリスさん達の邪魔に……!」


 マイスは忙しなく機竜への指示を続けているが、機竜にそれに従う様子は無い。

 むしろ何か言いたげに、イングリスのほうに視線を向けて来たような気がする。


「いや、マイス君そのままにさせてあげて!」


 イングリスはマイスを制止する。


「え? でも……!」

「多分、機竜はアウルグローラと一つになって身体を再生させてあげようとしてるんだと思う! きっとこの機竜自体が元々アウルグローラの眷属だったんだよ」


 機竜は機甲鳥(フライギア)機甲親鳥(フライギアポート)と同じく天上人(ハイランダー)の技術が組み込まれた兵器だが、その素体は生きていた竜だ。

 これはその生きた竜の部分の意思が強く現れた行動なのだろう。


 機竜が自らを生んだ主であるアウルグローラを救おうとしているのだ。

 アウルグローラに接近したことにより、生の竜の部分が強く刺激された結果でもあるだろう。


 今は機竜も強い竜理力(ドラゴン・ロア)を放っており、それがとてもアウルグローラの放つそれに似ていると感じられる。

 二体の竜理力(ドラゴン・ロア)が共鳴して混ざり合って行くように見える。


「機竜が神竜の体に……!?」

「うん。どうなるか分からないけどやらせてあげてくれる!? わたしも手助けするから」


 先程はイングリスの竜理力(ドラゴン・ロア)でアウルグローラの肉体の輪郭を象る事を出来たが、何もない所からでは実体としての具現化は出来なかった。


 しかし依り代となる実体があれば話は別だろう。

 同じ竜であればアウルグローラを受肉させるための素材として申し分ない。


「わ、分かったよ。任せるね、イングリスさん!」


 マイスが手を止め、魔術的な制御を手放した。

 イングリスはマイスと同じ機甲親鳥(フライギアポート)に立つレオーネに視線を向ける。


「レオーネ! レオーネも手伝ってくれる!?」

「ええ勿論! どうすればいい!?」

「うん。わたしとアウルグローラの骨と機竜と、全部に触るように剣を伸ばして! そこからでいいから!」

「分かったわ!」


 レオーネは頷き、地上でアウルグローラを抑え込んでいるイングリスに黒い大剣の切先を向ける。


「伸びてっ!」


 そのまま奇蹟(ギフト)の力で刃を伸長。

 マイスの機竜の腕部とアウルグローラの肋骨の部分を引っ掛け、イングリスの肩口の近くを通って地面に突き立った。

 そして刀身の腹の部分が、イングリスの肩にトンと乗って来る。


「これでいい!?」

「うん! このまま少し待って、わたしが合図したら幻影竜をアウルグローラに撃って!」

「ええ、分かったわ!」


 イングリスはアウルグローラを押さえ込むのは続けつつ、一旦目を閉じる。

 注意深く竜理力(ドラゴン・ロア)の流れを探るのだ。


 イングリスと神竜アウルグローラと機竜とレオーネの魔印武具(アーティファクト)と、それぞれの持つ竜理力(ドラゴン・ロア)が黒い大剣の刀身を通して繋がっている。


 竜理力(ドラゴン・ロア)は柔軟で変化に富んだ力だ、それぞれが混ざり合う事によって、一つの融合した大きな流れになって行く。


「……今! レオーネ!」

「ええ! 行けええぇぇぇっ!」

「こちらも! 竜理力(ドラゴン・ロア)っ!」


 金色の輝きが再び神竜アウルグローラの本来の姿を象り、その中にレオーネが放った幻影竜も組み付いている機竜も、全てが飲み込まれて行く。


 特に機竜の姿は原形を留めず、金色に輝きながら変化していく。

 それがアウルグローラの剥き出しの骨を覆い隠すように、実体を持って広がっていき――


「っ……! 眩しいっ!」


 レオーネがそう言うのが耳に入る。

 確かに目を開けていられない程の激しい輝きだ。

 イングリスの視界も一瞬アウルグローラの姿を見失ってしまう。


 グオオオオオオオオオオオオォォォォォォォンッ!


 雄々しい竜の唸り声が響き渡る。

 ドンと地面を踏み締める音と振動が、耳と足元から伝わってくる。


 先程の骨だけの体には出せない重量感だ。

 ということは――


「成功した……!?」


 目を開いたイングリスの前に、巨大な竜の姿が現れていた。

 先程までの骨だけの姿では無く、黄金の鱗を持った巨竜の姿だ。


「これが神竜アウルグローラ……!?」

「イングリス、成功したの!?」

「うん。多分……でもちょっと思ってたのと違うね!」


 イングリスの目は輝き、口元は嬉しそうに綻んでいた。

 そう、違う。


 単純な黄金の巨竜ではなく所々が硬質な機械で、翼も生身ではなく鋼の翼だ。

 肩口や腕部や腰元には巨大な砲門がいくつも現れている。


「単純な神竜じゃない……! フフェイルベインと同じ機神竜かも!」


 機神竜は教主連の大戦将(アークロード)イーベルが、神竜フフェイルベインの意識を乗っ取って作り出していた存在だ。

 その力は神竜を上回る、現状イングリスが知る中で最強の竜のはずだ。


 フフェイルベインは神竜の上に神竜王なる存在がいると言っていたが、それはこの目で見た事がない。

 機神竜も手合わせする前に立ち去ってしまったので、これは絶好の機会かも知れない。


「では機竜が神竜のために身を捧げたと言うよりも、神竜を吸収して力を増したという事なのでしょうか……!?」


 状況としてはアルルの言う通りかも知れない。


「でも、やっぱり僕の制御は受け付けてくれないみたいだ!」


 マイスが機神竜に指示を出そうと手で印を切っているが、効果はないようだ。

 とはいえ先程のように話も通じない程怒り狂っていると言う様子でもない。


「う、動かないわね?」

「そうね、どうしちゃったのかな……故障?」


 レオーネとラフィニアも首を捻った瞬間――


 キシャアアァァッ!


 機神竜が咆哮しつつ、目の前のイングリスへと巨大な腕部を振り上げる。


「お……!? ふふっ……」


 イングリスは微笑みながら身構える。

 動かない相手をこちらから攻撃する事は出来ないが、仕掛けてくれるなら話は別だ。

 当然避けずに真っ向から受け止める――


 機神竜の純粋な力は如何程のものか、是非体感してみたい。

 しかし、機神竜の腕がイングリスの身を捉える事は無かった。

 腕を振り上げた姿勢でぴたりと動きが止まってしまったのだ。

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