表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
476/493

第474話 16歳のイングリス・神竜捜索3

 神行法(ディバインフィート)でアルカードを後にしたイングリス達は、今度はカーラリアへと再び戻った。

 向かったのはボルト湖の中央の中州である。


 元はイルミナスであった天上領(ハイランド)の残骸。

 半壊した中央研究所を修復しつつ、マイス達イルミナスの天上人(ハイランダー)はそこで暮らしていた。


 既に騎士アカデミーの演習会の後片付けも終えて皆寝静まっていたが、イングリス達が尋ねるとマイス達は快く応対してくれた。

 通された部屋は以前見たヴィルキン博士の研究室と同じような場所だった。

 マイスが少し眠そうにだが、イングリス達の話を聞いてくれた。


「竜の、それも最強種の神竜の居場所についてだね?」

「うん……分かる? マイスくん!?」

「少し待ってね……ええと出るかな。イルミナスのデータも殆どが破損して、閲覧不可になってしまったものも多いから――ええと、古い地図かも知れないけど……」


 マイスがそう言うと、目の前にある大きな机の上に地形を模したような立体的な地図が映し出される。


「ええと。ここが神竜フフェイルベインの封印地……」


 とマイスが指を指したのは赤い溶岩をたたえた火山のような場所である。


「!」


 そう。イングリス王が神竜フフェイルベインを封じたのはクラヴォイド火山の地中深く。

 あの強力な氷の力を大自然の力によって相殺し、封印を強固なものにしようとしたのだ。

 これがイングリス王の知るかつての世界の姿だ。


「えぇ? でも竜さんがいたのはアルカードだよ? こんな火山みたいな場所じゃないわよね?」


 ラフィニアは首を捻っている。


「凄く古い時代の地図なんじゃないかな?」

「そうかも知れない。ごめんね、検索しても出てくるのはこれしか無くて。イルミナスが完全だったら最新の情報に出来たのかも知れないけど」

「ううん十分だよ。でも今と地形が違うって事は、何があったのかな?」


 とイングリスはマイスに尋ねてみる。


「クラヴォイド火山……か。これは確か天上領(ハイランド)になったと思う。教主連の方に同じ名前の天上領(ハイランド)があったはずだから」

「ああ成程。元々あった火山を天上領(ハイランド)にして、そこに街が出来てリックレアの街になって、更にそこも天上領(ハイランド)になってフフェイルベインが出てきたんだね」

「今まで何度も天上人(ハイランダー)が地上の土地を切り取って行ってるって事なのね……」

「ここだけではなく、きっとこんな所は沢山あるのでしょうね」


 レオーネもリーゼロッテも、何とも言えない表情をしている。

 ともあれそういう事であるのならば、イングリスとしてはとても気になる事がある。


 シルヴェール王国の王都シルヴェリアだ。

 イングリス王が造り、そしてその生涯を終えた地だ。

 この地図にシルヴェリアは存在するのだろうか?


 とは言え今それを聞くのは皆に疑問を持たせてしまうし、優先するべきは他の神竜の居場所だ。

 シルヴェリアについてはまた今度一人で訪ねて見せて貰おう。


「それでマイス君、他の神竜っているのかな?」


 イングリスが問いかけると、ラフィニアや他の皆もやや緊張してマイスの返答を待つ。


「ええと……あ、うん。一件だけだけどデータがあるよ!」

「おぉ……!」


 神竜と戦えるのならば、別に相手が必ずしもフフェイルベインでなくとも構わない。

 ロシュフォールも助かるし戦う相手も増えるし、再び美味しい肉も食べられる。いい事づくめである。


「そ、それで神竜はどこにいるのでしょう!? どこに行けばロスを助けてあげる事が……!」


 アルルが重ねてマイスに尋ねる。


「場所は……フフェイルベインの封印地から南東方面。ここだね」


 と、映し出される地図が滑って別の地形を映し出す。


「ここは……?」

「ええと、今で言うカーラリアとヴェネフィクの国境付近じゃないかな? ここが神竜アウルグローラの封印地だってデータになってるよ」

「ヴェネフィク国境って事は、氷漬けの虹の王(プリズマー)を運び込んだ辺りだね」

「って事は、カーラリアの中ね! だったら話が早いわ!」


 ラフィニアがぱっと顔を輝かせる。


「だけどラフィニアさん。これは古いデータだと思うから、今でもそうとは限らないのだけは覚えておいてね」

「それでも手がかりはこれだけだし、行って調べてみる価値はあるわ。封魔騎士団の飛空戦艦もあるし、それを使わせて貰えば……!」


 そうレオーネが言う。


「問題はこの辺りの地域はリグリフ宰相のご領地だということですわね。わたくし達のシアロトやラフィニアさん達のユミルであれば話は簡単ですが……神竜を起こすなどという大事は、ちゃんとお話を通して許可を頂かねばなりません」

「そうだね。今眠っているなら起こさずにそのまま眠らせておいた方がいいって言われるかも知れないし……東部は今忙しいだろうから」


 先日のヴェネフィク軍からのカーラリアへの攻撃。

 それと同時に起こった氷漬けの虹の王(プリズマー)の侵攻。

 これらで多大な被害を被ったカーラリア東部の諸侯は対ヴェネフィクの強硬派であり、ヴェネフィクに対する報復攻撃を主張している。


 実際に侵攻軍の編成中であり、その準備が整うまでにヴェネフィクとの外交調停が不調に終わった場合は本当に攻め入る予定なのである。

 その動きの中心人物がリグリフ宰相だ。


 そこに領土の地下に神竜が埋まっていて、それを堀り起こすなどという話しを持って行っても、今は余計な事をするなと言われてしまう可能性は高そうである。


「そんな……では神竜の調査は許されないのですか? アルル先生はこんなにもロシュフォール先生を心配しているのに」


 メルティナが顔を曇らせる。


「ううん、そんな事無いよ? 話の持って行き方次第では、ね?」


 イングリスはメルティナの肩をぽんと叩いた。

ここまで読んで下さりありがとうございます!


『面白かったor面白そう』

『応援してやろう』

『イングリスちゃん!』


などと思われた方は、ぜひ積極的にブックマークや下の評価欄(☆が並んでいる所)からの評価をお願い致します。


皆さんに少しずつ取って頂いた手間が、作者にとって、とても大きな励みになります!


ぜひよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ