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第456話 16歳のイングリス・絶海の|天上領《ハイランド》67

「おおぉぉぉ~~~~~い! イングリスちゃ~~ん! みんな~~!」


 遠くから声が聞こえてくる。

 見ると、王城の方向から機甲鳥(フライギア)が何機かこちらへ向かってきていた。

 その先頭にリップルがいて、こちらに声をかけて来たのだ。


「リップルさん! やった!」


 先ほど考えていたように、リップルがいてくれれば神行法(ディバインフィート)でシャケル外海に戻ることが出来る。

 あの歯ごたえのありそうな敵達と、まだ戦う事が出来る。


「リップルさ~~ん! こっちです!」


 イングリスは満面の笑みでぶんぶんと手を振る。


「こ、これ、どうしたの!? イングリスちゃんがやったの? それにその笑顔は何かなぁ? なんか怪しいんだけど」


 イングリスは近くに降りてきたリップルの腕を、ぎゅっと掴む。


「それより、早く行きましょう!」

「行くって、どこに?」

「勿論手合わせに! 特級印のヴェネフィクの将軍が魔印武具(アーティファクト)で生み出した不死者の巨人と合体して、更に敵の天恵武姫(ハイラル・メナス)のティファニエさんを武器化して、更に更に鮫の形の虹の王(プリズマー)に乗っているんです!」

「な、何なのそのワケの分かんない状況は?」

「ね、凄いでしょう!? 今すぐ引き返せばまだ手合わせできます! だからさあ行きましょう! さあさあさあさあ……っ!」

「こらーーーーーーっ!」


 ぎゅうううっ!


 ラフィニアに強く耳を引っ張られる。


「い、痛い痛いよ、ラニ……!」

「そんな事してる場合じゃ無いでしょ!? 今は我慢しなさいっ! マイスくん達もいきなり連れてこられて大変なんだから!」


 と、ラフィニアはイルミナスと一緒に転移してきたマイスや天上人(ハイランダー)達に視線を向ける。


「こ、これが地上の国の街――すごいや、何だか綺麗だ!」

「お、俺達助かったんだな!」

「一時はどうなる事かと思ったよ!」

「良かったわ、本当に……」


 マイスはボルト湖から見渡す王都の夜景に目を輝かせ、他の天上人(ハイランダー)達は一様に胸をなで下ろしている。

 幸い虹の雨(プリズムフロウ)によって魔石獣化する者も出ていないようだ。


「それに……」


 と、ラフィニアはにっこりとイングリスに笑みを向ける。


「お腹空かない?」

「……空いたね、すっごく」


 ぐうぅぅぅぅぅぅ~~


 イングリスとラフィニアのお腹の音が同時に鳴った。


「私も久しぶりに魚以外の物が食べたいかも」

「そうですわね、さすがにちょっと飽きてしまいましたもの」


 と、レオーネとリーゼロッテの言葉にラフィニアはうんうんと頷いて、それから宣言をする。


「よぉぉぉしっ! マイスくん、天上人(ハイランダー)の皆さん! 無事で良かったお祝いに、地上のごはんを食べに行きましょ~! あたし達が奢るからっ!」

「わぁ! ありがとう、ラフィニアさん!」

「おぉ……助かるよ!」

「正直疲れたからなぁ、ちょっと休みたいよ」


 天上人(ハイランダー)達から喜びの声が上がる。


「これだけの人数を奢るお金なんて……」

「さ、騎士アカデミーの食堂に行くわよ!」

「ああ、校長先生には事後承諾で全員に食べさせて貰うんだね」


 まあ、マイス達を飢えさせるわけにも行かないし、そうせざるを得ない。


「じゃあボクも行くから、そこで詳しい話を聞かせてね~」

「「はい、リップルさん!」」


 とは言うものの、リップル達の機甲鳥(フライギア)でも、天上人(ハイランダー)達を一気に運ぶ事は難しい。


「全員で行くには……これかな?」


 と、イングリスは近くに佇んでいる機竜に目をつける。


「では皆さん、あの機竜に掴まって頂けますか? あれで皆で移動しましょう」

「イングリスちゃん。いや、イングリスさん、でも機竜はまだ動かせないんだ、だから乗っても――」

「大丈夫だよ、マイス君。動くから安心して乗って?」

「う、うん? わ、分かった」


 イングリスがたおやかな微笑みを向けると、マイスは少々照れながら頷く。

 マイスは子供の姿のイングリスしか見た事が無かったから、今の姿を見て驚いているのだ。


「ラニ達も、みんな乗ってね」


 そうして、百人近い天上人(ハイランダー)達と、ラフィニア達が機竜に掴まる。


「乗ったわよー! クリス!」

「うん、分かった。では!」


 イングリスは自分の体を指でなぞり、魔素(マナ)竜理力(ドラゴン・ロア)を混ぜ合わせて行く。


 グオオオォォォ……ッ!


 咆哮とともに、竜の意匠の蒼い装甲が具現化する。

 竜魔術、竜氷の鎧だ。

 子供の服を元に、胸と腰に布を巻いただけの姿より、しっかりした鎧が身を包んでくれるので安心感があるかも知れない。


 竜氷の鎧を身に纏ったイングリスは、機竜の体をひょいと持ち上げる。

 そして持ち上げたまま、ボルト湖の水面に足を踏み出した。

 機竜の重みでさすがに沈むかと思いきや、竜氷の鎧の力でイングリスの足下の水は一瞬で凍り付き、足場を形成してくれる。


 それでもとても機竜の重みを支えきれるほどでは無いが、一瞬支えてくれれば十分。

 足が沈む前に次を動かし続け、機竜を持ち上げたイングリスはボルト湖の水面を騎士アカデミーに向けて疾走していく。


「「「おおおおおおぉぉぉっ!?」」」

「「「す、すごい!?」」」

「「「な、何だこれはっ!?」」」


 機竜に掴まった天上人(ハイランダー)達が驚いて叫び声を上げている。


「す、すごいなぁ、イングリスさんは……!」

「ま、まあクリスだから、このくらいはね!」


 驚くマイスに、ラフィニアがそう告げる。


「ははははは……どこ行って何しててもイングリスちゃんはイングリスちゃんだなぁ」


 機甲鳥(フライギア)で併走するリップルが、苦笑混じりにそう言っていた。

 その夜は助かった安堵感と地上の物珍しさもあり、天上人(ハイランダー)達との食事会は大変盛り上がった。


 イングリスもラフィニアも、久しぶりの騎士アカデミーの食堂の味に、懐かしくて嬉しくて食べ過ぎてしまったかも知れない。

 後に事後報告を受けたミリエラ校長は、口ではよくやったと言いつつも涙目になっており、なんとも複雑そうだったが。

ここまで読んで下さりありがとうございます!


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『イングリスちゃん!』


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