表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
408/493

第408話 16歳のイングリス・絶海の|天上領《ハイランド》17

「やった大漁……! 完璧じゃない、レオーネ!」

「お見事ですわよ!」

「ありがとう、特級印って本当に魔印武具(アーティファクト)が全部使えるのね。すごいわ……! おっと、早く魚を引き上げないと……!」


 レオーネは水面ギリギリまで降りて行き、黒い大剣の刀身をかなり幅広く、長く伸ばす。そしてその幅広の刀身で、水に浮かんだ魚を掬い上げ、確保して行く。

 戻って来るとのその数は、二十近くになっていた。


「わぁ! 美味しそう! 獲れたての海の真ん中のお魚っ♪」


 ラフィニアがわくわくと瞳を輝かせている。


「海の魚ってあんまり食べないから、楽しみだね?」

「うんうん。ユミルは内陸だし、王都も湖と川で海には遠いから。海のお魚ってやっぱりしょっぱいのかな? 塩の水の中にいるんだしね?」

「いや、そこまで変わらないとは思いますが……」


 と、リーゼロッテが言う。


「ああ、リーゼロッテのシアロトは西海岸沿いだったね?」


 イングリスの言葉にリーゼロッテは頷く。


「ええ。このお魚も、シアロトではよく水揚げされているものですのよ。ただ、こんな海の真ん中だからでしょうか、かなり活きもいいし大きいですわね。美味しそうですわ」

「とにかく、ラニ。火を起こして焼こう?」

「おー! 焼くわよ! あ、レオーネはもっと獲って来てね? これだけじゃ足りないから!」

「あ、これでも足りないのね……あははは……」

「ここらのお魚が全滅しないか、心配ですわねぇ……」

「大丈夫よ、海はこんなに広くて大きいんだから、あたし達を優しく包み込んでくれるのよ……!」

「そうだね……王都のボルト湖だと、お魚を捕り過ぎると漁師さんから苦情が来たし……ここなら獲り放題だよ!」

「うーん、シアロトで獲る分が、無くならなければいいですけれど……」


 ここは位置的に言うと、カーラリアの西海岸から外洋に進んだ、大海原の真ん中だ。

 移動の途中では、リーゼロッテの出身のアールシア公爵領や、シアロトの街の上空を通過して来た。


「ほら、ラニ。火を起こしたよ?」

「よーし串刺し串刺し~♪」


 イングリスとラフィニアとリーゼロッテが魚を焼き、レオーネが追加の魚を獲って。

 暫くすると、海岸には魚の焼ける美味しそうな匂いが充満していた。


 身体も冷えるし、火の粉が飛んで火傷をしても困るので、水着の上から服を着ている。

 少々凝った儀式衣のような、白い服だ。

 胸元に大きく聖痕のような模様が描かれている。


 全員同じものをヴィルマから支給されたのだが、これはこのイルミナスに外部の人間が滞在する時のためのものらしい。

 これを着ていると天上人(ハイランダー)の聖痕が無くとも、このイルミナスの機甲鳥(フライギア)の自動飛行や自動手配、ある程度の範囲の通行許可等が得られるらしい。食料類や物品の支給も受けられるそうだ。


 今は都市機能の中枢が沈黙するという緊急事態で、それらの設備も一部しか動いていないらしいが。

 最初にヴィルマがイングリス達をヴィルキン第一博士の下に連れて行ってくれたのは、運良く残っていた一部だったらしい。

 現にこの海岸までの移動も自動操縦ではできず、星のお姫様(スター・プリンセス)号を取り出してここまで足を延ばしていた。


 住民の天上人(ハイランダー)達も、地上の街の部分には出て来ず、殆どが地下部分の避難施設にいるらしい。

 急な虹の雨(プリズムフロウ)や魔石獣の襲来に備えるためだ。

 もし天上人(ハイランダー)虹の雨(プリズムフロウ)を浴びてしまったら、ただでは済まないのである。


 だから、澄み切った青い空の元、これも澄み切った青い海に囲まれた白亜の大都市という最高に開放的な光景にも、街中は静まり返っているのだった。

 こちらとしてはそれはそれで、この広大な場所を貸し切りにしているような特別感があるが。


「よーし、頂きま~す!」

「ラニ。そんなにいっぱい串を持ったら逆に食べ辛いよ?」

「だって逃げちゃわないか心配だし!」


 ばくっ! ばくっ! ばくっ! ばくばくばくっ!


 そんなイングリスのお小言はどこ吹く風。

 ラフィニアが両手の指に三本ずつ持った串に刺さる魚が、あっという間に身を失って頭と骨だけになって行く。


「にゃいにゃい、しゅーしゅっれあららにょしゅーしゅををおりょしょうっれにょひゃわりゃっれるんりゃらら……!(大体、そう言ってあたしのペースを落とそうってのは分かってるんだから……!)」

「いにゃ、しょんなにょろしにゃいひょ……!(いや、そんな事しないよ……!)」


 イングリスも負けじと、両手に二本ずつ魚の串を持っていた。

 やはり体の小ささから、いつもは互角の食べる速度が、ラフィニアに比べて見劣りしてしまうが。


 それでもあっという間に、小山のような魚の骨の山が出来て行った。


「「レオーネ! おかわり!」」


 にっこり笑顔で、そう要求する。


「はいはい。分かったわ、また獲って来るわね……」


 レオーネが上に羽織っていた白い儀式衣を脱ぎ、水着姿になる。

 その胸元にリンちゃんが――いなかった。

ここまで読んで下さりありがとうございます!


『面白かったor面白そう』

『応援してやろう』

『イングリスちゃん!』


などと思われた方は、ぜひ積極的にブックマークや下の評価欄(☆が並んでいる所)からの評価をお願い致します。


皆さんに少しずつ取って頂いた手間が、作者にとって、とても大きな励みになります!


ぜひよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ