表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
401/493

第401話 16歳のイングリス・絶海の|天上領《ハイランド》10

 魔印(ルーン)は最初の洗礼で刻まれたものが絶対ではなく、後天的により強力なものに進化する事もある。

 ラティの兄であるアルカードのウィンゼル王子がそうだと聞いた。

 だからあり得ない話ではないが、こうして目の当たりにするのははじめてだ。


「し、信じられない……私が特級印だなんて……」


 レオーネは呆気に取られて、自分の右手の甲の特級印を見つめている。


「おめでとう、レオーネ。よかったね?」


 ラフィニア、レオーネ、リーゼロッテの中で一番訓練に精力的なのはレオーネなので、そうなるのも自然なのかも知れない。

 普段からよく訓練し、騎士アカデミーに入学して以来様々な戦いも潜り抜けている。

 それらの経験が、レオーネの力を着実に伸ばしてくれたのだ。


「イングリス……え、ええ……! ありがとう!」

「今度、魔印武具(アーティファクト)を山盛りいっぱい使って模擬戦しようね? いい訓練になりそうだなあ……」


 イングリスはわくわくとした笑顔を浮かべる。

 普段からよく一緒に訓練しているレオーネが特級印を身に着けてくれたことは、実に喜ばしい。

 レオーネと共にする訓練の強度や質もより高まるというものだ。


「お、お手柔らかにね……? 特級印になったからって、急に強くなったような感じはしないし……」

「そりゃあ、そうだろうね~? 別に力が強くなるように改造したわけじゃあないし~? あくまで魔印(ルーン)との齟齬を検出して、適正なものを刻み直しただけだからね~?」

「あ、ありがとうございます……! ヴィルキン博士……!」


 レオーネは深々とヴィルキン第一博士に頭を下げる。


「いやいや~せっかく来たお客さんにサービスだよ~」

「あたしからもお礼を言います! その顔にいい思い出がないから疑ってたけど、実はいい人なんですねっ!?」

「ははは、同じ上級魔導体(ハイマナコート)を使ってても、重要なのは人格であり魂さ~。まあ、地上のお客さんに嫌われずに済んだのはよかったかな~? 風評被害だからね~」


 ヴィルキン第一博士はにこにことしている。


「よかったわね、レオーネ! おめでとう!」

「わたくし達の同学年には特級印の持ち主はおりませんでしたし、皆の代表ですわ!」

「で、でも実力的にはイングリスのほうが……」

「わたしは従騎士科だし、そういうのはレオーネのほうが相応しいと思うよ?」


 特級印を持つ聖騎士、というほうが、分かりやすいのは確かである。

 イングリスを外から称すると、無印者だが強い、分からないが強い、になってしまう。


 甦った氷漬けの虹の王(プリズマー)との戦いでは、諸事情から表に出て名を売る事になってしまったが、これからは別の虹の王(プリズマー)が現れたとしても、レオーネが倒した事にしてもらうという技も使えるだろう。


 下手に分かりやすく手柄を挙げると、お見合いが殺到したりして大変である。

 今回は王家からの通達で無かった事にしてもらったが、状況が落ち着けば同じ事が繰り返されるかもしれない。


 これを無くすためには、新しい大事件を新しい手柄で上書きしておきたい所だ。

 そうすれば前に起きた事は過去のものとなり、注目はそちらに向かう。


 例えば別の虹の王(プリズマー)が現れて国が大混乱に陥り、それを倒したのがイングリスやラフィニアでなければ、それでいいだろう。


「……まあまあ、あたしは純粋にレオーネが凄くなるの、嬉しいわよ? 無茶はしないで欲しいけど!」

「そういう事ですわ。わたくしも追いつけるように頑張りたいと、励みになりますもの」

「……ありがとう、みんな……! 恥ずかしくないように、これからも頑張るわ」


 レオーネは生真面目に表情を引き締めて頷く。


「ねえねえ、リーゼロッテもひょっとして特級印になれちゃったりするんじゃない!?」

「自信はありませんが、調べては頂きたいですわ……!」


 リーゼロッテも目を輝かせる。


「もちろんさ~。じゃあ次は君ね~」

「はい……!」


 リーゼロッテが近くにやってきた球体に手を触れる。


 ピロンピロンピロンピロン!


 今度は警報とは響きの違う別の音がした。


「……!? な、何ですの……?」

「また故障ぅ?」

『重要情報! 重要情報! 適性レベルSSの被検体を発見! 直ちに捕獲、天恵武姫(ハイラル・メナス)化処置の開始を推奨! 自動捕獲まで10、9、8、7……』


 球体が激しく明滅し、リーゼロッテの近くを回り始める。


「えっ……え……!? ど、どういう事ですの……!? 直ちに天恵武姫(ハイラル・メナス)化って……!?」

「おおおぉぉ~すごいねえ~。適性レベルSSって、僕見た事ないな~♪」


 ヴィルキン第一博士が嬉しそうに声を上げる。


「じ、自動捕獲がどうとかって言ってますけど……!?」


 ラフィニアの言う通り、このままではリーゼロッテが強制的に捕獲されてしまうという事だろうか。


「止めて下さい……! さもないと……!」


 エリスが鋭く警告する。


「うんわかってるよ~。強制捕獲も自動実行もなしなし~! 相手はお客さんなんだからね~」


 そうヴィルキン第一博士が指示すると、球体は点滅を止めて静かになった。


 相手がお客さんだとヴィルキン第一博士は言うが、そうでない者ならば強制的に捕獲されて天恵武姫(ハイラル・メナス)化されてしまうのだろうか?


 客人以外となると、人狩りされて来た者や、あるいは食物などの物品の代わりに献上された人間達か――それを多数集めて一斉に適性を検査、という事は普通に行われているのかも知れない。


 確かにセオドア特使は地上に対して友好的だが、国の全てに目が届くわけでもない。

 また、このイルミナスと関わりがあるのが、カーラリアだけとも限らない。


 そういう事は当たり前の事として行われているのだ、という事をヴィルキン第一博士の言葉は示唆しているだろう。


「ああ、びっくりしましたわ……」


 リーゼロッテがふうと大きく息を吐く。


「で、どうするどうする? 聞いた通り君、すっっっっっごい才能あるよ~? 適性レベルSSだから~、処置なんて下手すれば半日……いや一瞬で終わるし、成功確率も間違いなく120%~! 絶対成功は保証するからなってみな~い? 天恵武姫(ハイラル・メナス)!」


 ヴィルキン第一博士は目をキラキラさせながら、リーゼロッテに詰め寄る。

ここまで読んで下さりありがとうございます!


『面白かったor面白そう』

『応援してやろう』

『イングリスちゃん!』


などと思われた方は、ぜひ積極的にブックマークや下の評価欄(☆が並んでいる所)からの評価をお願い致します。


皆さんに少しずつ取って頂いた手間が、作者にとって、とても大きな励みになります!


ぜひよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 作者さん、更新はありがとうございます〜 レオーネさんが特級に成れて良かったですね!クリスさん以外に始めまともな戦力に成りそうですね、お兄様を除いて。 リーゼロッテさんが天恵武姫に?メリット…
[一言] 突然、更新されてて驚きました! 新巻の情報が出てたので、そろそろかなとは思ってましたが。 イングリスはどこにいても変わりませんね。ハイランドでは、どんなバトルが待ってるんでしょうか。楽しみで…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ