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第380話 16歳のイングリス・新学期と新生活2

「あ、リーゼロッテ。久しぶりだね」

「はい、お久しぶりですわ! レオーネも言っていましたが、本当にすごくすごくすっごーーーーく可愛いですわねっ!」

「ふふふ、ありがとう」


 それを皮切りに、他の生徒も次々詰めかけて来た。


「つ、つぎ私もいい!? イングリスちゃん!」

「わ、わたしも!」

「俺も俺も! お、男でもいいんだよな……!?」


 あっという間に出来る人だかり。


「はいはーい。クリスを抱っこしたい生徒の皆さーん、一列に並んでくださーい」


 早速、行列の整理に取り掛かるラフィニア。

 止めるつもりは全くないようだ。


 まあイングリスが逆の立場だったとしても、小さくなったラフィニアを皆が可愛い可愛いと抱っこしたがるのは嬉しいだろう。

 そこはお互い様なので、文句は特にない。


「あのう……ラフィニアさん、先生の場合はどうすれば? 一緒に並んでいいですか?」


 おずおずとした調子で、ラフィニアの前に進み出る人物がいた。

 猫のような耳と尾をした、髪の長い獣人種の少女である。

 清楚で淑やかそうな印象で、騎士アカデミーの教官用の服装に身を包んでいる。


「アルル先生……! はい、一緒にどうぞ!」


 ラフィニアがにっこり笑ってアルルに頷く。

 アルルは元々隣国ヴェネフィクに所属していた天恵武姫(ハイラル・メナス)だ。

 恋人であり、特級印を持つヴェネフィクの将軍ロシュフォールと共に王都カイラルにまで奇襲攻撃を仕掛けてきたが、イングリスがそれを撃退し、アルルもロシュフォールも捕虜になった。


 ロシュフォールは死病に冒されており、命の残り火を燃やしているような状態だった。

 が、イングリスが万病を治す霊薬となり得る神竜フフェイルベインの肉を与えた事により、体は見る見る快方に向かったようだ。


 そして騎士アカデミーが休暇入りする少し前、アルルとロシュフォールは揃ってアカデミーの教官に就任する事になり、イングリス達も既に何度か訓練を共にしていた。


 この人事は当然カーリアス国王の許可を得たものであるが、単に国王が寛大であり人材を有効活用したいという考えだけではない。


 ロシュフォール達とまた戦いたいという、イングリスの希望に沿ったものだろう。

 教官として送り込んでやるから、好きなだけ戦っていいという事である。

 ただし問題を起こさないように責任は持て、との意図も感じる。

 さすが、カーリアス国王は人の心が分かる王である。


 そして、噂に聞く新騎士団設立の絡みを考えると、更にそれだけではない別の狙いも見え隠れして来る。中々に色々な意図を詰め込んだ人事であろうと思われる。


 イングリスとしてはアルルとロシュフォールが訓練に付き合ってくれて満足である。


「ありがとうございます! ロス、一緒に並びましょう! とっても可愛いですよ!」

「やれやれ……私はお腹が空いたのだがなァ」


 手招きするアルルに応じるのは、赤い髪の青年、ロシュフォールだ。

 こちらも当然騎士アカデミーの教官の制服である。


 ロス・ロシュフォールがロシュフォールのフルネームだ。

 イングリス達はロシュフォール先生だが、アルルだけは名前の方を呼ぶ。


「ご飯なんていつでも食べられます! あんなに可愛いイングリスさんを抱っこできるの今しかありませんよ!?」

「そうかねェ? どうせ放課後実戦訓練とやらに延々付き合わされる羽目になるわけだが、その時でいいと思うんだがなァ?」

「よくありませんっ! さあさあ、行きましょうっ!」


 控え目で大人しいアルルにしては、珍しく押しが強い。


「やれやれ……ま、お付き合いさせて頂こうか」


 仕方ないと肩を竦めるロシュフォールだが、どこか嬉しそうでもある。

 アルルが自ら積極的に、しかも嬉しそうに行動しているからかも知れない。


 何だかんだと言っても、ロシュフォールはアルルに甘い。

 いや、アルルだけでなくイングリス達にも甘いし訓練にも良く付き合ってくれる。

 実は結構、教官には向いているのかも知れない。


「じゃあロシュフォール先生もですね! クリス! もう一人お客さん追加よ♪」

「お店じゃないけどね……」


 そうして希望者全員に抱っこされてから、イングリスとラフィニアはお待ちかねの朝食に入った。


 ばくっ! ばくばくっ! ばくばくばくばくっ!


「ん~! 美味しいぃぃぃ~~! 食堂の味は、第二の故郷の味って感じね!」

「そうだね、そんなに長い間じゃないけど、懐かしい感じがするね」


 ラフィニアとその膝に座ったイングリスが猛然と、テーブルの上に並べられた料理を平らげて行く。


「ち、小さくなってもまるで変りませんのね、イングリスさんは……」

「そ、そうよね……どうなってるのかしら……」


 レオーネもリーゼロッテも、イングリスの食べっぷりに驚いていた。


「いや、全然違うよ……!」


 と、イングリスは表情を鋭くする。

 そして、握ったフォークを目の前のお皿の唐揚げに伸ばそうとする。

 が、少し届かなくて、うーんと背伸びをしていると――


 ひょい。


 先にラフィニアの手が伸びて、唐揚げを取ってしまう。


「あー! ラニ、それはわたしの……!」

「こひゃんふぁたりゃきゃいひょ! はりゃいひょのりゃら!(ご飯は戦いよ! 早い者勝ち!)」

「ううう……! ラニのいじわる……!」


 手が短いのでラフィニアの膝の上に座っていると、どうしても取り負けるのだ。

ここまで読んで下さりありがとうございます!


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また、別サイトですがノベルピア様にて新作「異世界鉄姫団」を連載しています。

よろしければそちらを見に行って頂けると嬉しいです!

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