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第369話 16歳のイングリス・お見合いの意味21

 標的を失った超巨大な刀身は豪快に地面を打ち、クレーターの底に更なる横穴を穿ち、威力を遥か先まで撒き散らす。


「はあああぁぁぁっ!」


 禁じ手に近い神業を使わされてしまったが、エリスの身を考えれば仕方がない。

 イングリスは即座に背後から武公ジルドグリーヴァに右の刃を繰り出す。


 首筋に寸止めして決着。そう考えていた。

 だが、武公ジルドグリーヴァの反応速度が予測以上だった。


「何いぃぃっ!?」


 驚愕しつつも翼が反応し、イングリスの刃を受けようと立ち塞がる。


「……! 速いッ……!?」


 首筋で止めようと思っていた刃の軌道は、その途中に差し込まれた翼をまともに斬り裂いてしまう。


 ザシュウゥッ!


 双剣により斬り裂かれて落ちる、武公ジルドグリーヴァの左の翼。

 斬撃は翼によって止まり、首筋まで届かなかった。


「うぐぅっ……ッ!?」

「あ……! す、済みませんジル様! 斬るつもりは無かったのですが……!」

「おぉ痛てて……! いや、気にすんな……! このくらいメシ食って寝りゃあ治る!」


 と、相変わらず豪快な事を言ってのける武公ジルドグリーヴァである。

 彼のこういう所は、なかなか面白いとイングリスは思う。


「ガチの手合わせなら、このくらいの事はあらぁな。むしろ完全に後ろ取られて、片方の翼だけで済んでよかったってもんだ。しかしこの俺の体を斬るとは、途轍もねえ斬れ味だぜ……! 流石は天恵武姫(ハイラル・メナス)ってとこか……!」

「ええ、ですが……」


 一合でエリスの双剣を破損させるあちらの武器もまた、恐るべきものだった。

 もしあのまま力比べを続けていたら、完全に破壊されていただろう。


「エリスさん、大丈夫ですか……!?」

『ご、ごめんなさい……! もう……!』


 頭の中にそう声が響き、エリスは双剣から元の人型に戻ってしまう。

 そして立っていられず、その場に崩れ落ちてしまった。


「エリスさん……!」

「う、うう……」


 腕や足や、あちこちが傷ついている。


「済みません、無理をさせてしまって……!」

「い、いいのよ。私も納得したことだし……つっ……!?」


 助けて抱き起そうとすると、エリスが顔を歪める。

 痛む所を触ってしまったらしい。

 右腕と、左足もだろうか。どうも骨に異常がありそうな様子に見える。


 天恵武姫(ハイラル・メナス)の武器状態の破損は、女性の姿の体にも影響するのだ。それが今分かった。分からされた。


「せっかく私を完全に使いこなしてくれる子が現れたと思ったら、まさかいきなり足を引っ張る結果になるなんて……情けないわね」

「そんな事はありません。今日は少々相手が悪かったのかと。それにわたしの戦い方も良くなかったです」


 つい真っ向からあの剛剣の威力を味わいたくて受けに行ってしまったが、本来双剣とはそういう用途の武器ではない。

 速さと手数で相手を制圧する武器だ。

 受けるならもっと大物の武器か、盾のような防具で行うべきだった。


「今日はこれまでにしとくかねえ? これ以上はお互いやべえからな」

「ええ、そうですね」


 イングリスも同意する。今日は痛み分けと言った所か。


「ほっほっほ。坊ちゃまもお怪我を治療致しませんとな」


 いつの間にか元に戻った老紳士カラルドが、好々爺の笑みを浮かべる。


「俺は大丈夫だぜ、じい。そんなヤワじゃねえよ」


 そう応じる武公ジルドグリーヴァの姿が、元の青年の姿に戻って行く。

 翼を斬り落としてしまった影響か、服の背中が破れて僅かな切り傷が刻まれていた。


「それよりそっちは大丈夫かよ? わりいぃな、つい熱くなっちまってな」


 武公ジルドグリーヴァはエリスを気遣うような素振りを見せる。


「え、ええ……私は大丈夫です」

「戻って休みましょう、エリスさん」


 イングリスはエリスをひょいと抱き上げる。


「なあじい、こいつぁ寝てりゃ治るモンなのか? 剣にヒビ入ってたみたいだが……?」

「ほっほほ。どうで御座いましょうなあ。ある程度は自然とお治りになるかとは思いますが、本格的に武器部分に修復が必要なのであれば、我がリュストゥングでは少々難しゅうございますな。やはり技公様の元へお送りせねばならぬでしょう。天恵武姫(ハイラル・メナス)は技公様の領分で御座いますれば」

「ふむ……おう、イングリス」

「はい、ジル様」

「技公の奴には話を通しとくから、もし異常があれば奴の所で見てもらえ。特使から連絡がつくようにしておいてやるからよ」

「ありがとうございます! ジル様……!」

「まあ俺のコネなんぞなくても、奴のコネなら十分かも知れんがな」

「と、言うと?」

「ん? 聞いてねえか? 今お前達の国……カーラリアだったか? ここにいる特使のセオドアは技公の息子だ。あれのコネなら、そのくらいのノシはつけられらぁな」

「ええっ……!? そうなのですか……?」

「わ、私も知らなかったわ……!」


 エリスも知らないという事は、ごく一部の人間しか知らない事なのだろうか。

 例えば個人的に親しいウェイン王子やミリエラ校長や、あるいはカーリアス国王が知っているのかいないのか。


 確かに、余りに高位の天上人(ハイランダー)であると知れれば何かと不都合もあるかもしれない。血鉄鎖旅団に取ってはいい的にもなる。

 だからそこは明らかにしないというのは頷ける話だ。

ここまで読んで下さりありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
[良い点] 武公本人が武器であるエリスさんより怪我し難いとは思わなかったですね。 エリスさんがガチのダメージのようです。
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