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第364話 16歳のイングリス・お見合いの意味16

 イングリスの拳の動き、すなわち魔術を発動させる際の魔素(マナ)の流れに竜理力(ドラゴン・ロア)を重ねる事により、両者が混ざりあい変異を起こす。


 単なる魔術ではなく、竜理力(ドラゴン・ロア)の混ざった竜魔術とでも名付けられるような技術である。

 この一月あまりの、イングリス自身の修練の成果だ。

 魔印武具(アーティファクト)の技術の学習もしているが、当然自分自身の戦闘力の向上も怠っていない。


 竜理力(ドラゴン・ロア)の制御が向上し、動きに完全に重ねられるようになったため、これが可能となった。地味だが大きい一歩である。

 竜理力(ドラゴン・ロア)というのは、意外と霊素(エーテル)に比べれば制御がし易く、変化も起こりやすい柔軟な性質を持っている。


 元々は異世界の生物であるとされる竜の力である。

 この世界に竜理力(ドラゴン・ロア)ある場合は不安定で、逆にそれが柔軟さに繋がっているのだろうか。


「修練の成果……! 実戦で試させて頂きます!」

「ああいくらでも試しな! お互い様ってやつだ……!」


 元々の着想は、ラファエルやカーリアス国王が持つ神竜の牙(ドラゴン・ファング)神竜の爪(ドラゴン・クロウ)といった、竜の素材を使ったと思われる魔印武具(アーティファクト)だ。

 あれは明らかに、魔術と竜理力(ドラゴン・ロア)が混在するような魔印武具(アーティファクト)である。


 そしてその力は他の上級魔印武具(アーティファクト)に比べて明らかに一線を隔しており、天恵武姫(ハイラル・メナス)には及ばないが超上級と言ってもいいような性能のものである。


 その存在を見ていたので、魔素(マナ)竜理力(ドラゴン・ロア)はかけ合わせられるのではないかと思ったのだ。


 レオーネやリーゼロッテの魔印武具(アーティファクト)竜理力(ドラゴン・ロア)が浸透して変異した実例もある。

 氷の剣の魔術と竜理力(ドラゴン・ロア)で、意図的にそれを起こそうとしたのが、この竜魔術――竜氷剣と言った所だろうか。


 これまでのイングリスの戦い方としては、一に霊素(エーテル)の戦技。

 二に霊素穿(エーテルピアス)のような霊素(エーテル)の小技、もしくは霊素(エーテル)自体を魔素(マナ)に落として扱う魔術。

 三に神竜フフェイルベインから授かった竜理力(ドラゴン・ロア)


 となり、これらは同時に発動できる。

 これを総動員した結果が、戦力の最大値になるわけだ。

 が、本当に強敵と相対する場合には、二の霊素(エーテル)の小技もしくは魔術はあまり有効に機能せず、一と三の併用でこれまで戦ってきた。


 竜魔術はいわば二と三の融合であり、あまり有効活用出来ていなかったものを引き上げる事に繋がってくれるはず。

 小さい事かもしれないが、日々進歩。一歩一歩だ。


「行くぜええぇぇっ! そらああぁぁぁぁぁっ!」


 先手はジルドグリーヴァだ。

 腰を落として踏ん張りながら、イングリスに向けて掌打を繰り出す。

 こちらとの距離は離れているのに――だ。


 だが、その意図はすぐに判明する。


 ドゴオオオォォウゥッ!


 あまりの高速で繰り出された掌打は空気を押し出し、その形に沿って極圧縮された衝撃の塊を産む。

 しかもそれが周囲の空気を押し退ける際に摩擦を生み、赤い炎に包まれながら進んで来る。超高速で飛来する、掌打の形をした紅い衝撃波だ。


「素晴らしい――!」


 掌打を振り抜くだけでこんな現象を起こすとは!

 これは受けてみないわけには行くまい。


 イングリスは右手の竜氷剣を紅い衝撃波に叩きつける。


「っ!?」


 重い――!


 あっという間に腕が弾かれそうになる。

 即座に左手を添え、両手に持ち替えて受ける。


 ザザザザザザザザザザザザザッ!


 が、その場で踏ん張り切る事は出来ずに体は後方に大きく押される。

 草原の草を揺らす音。足元に大きく轍が残る。


「ここまで押されますか……!」


 だがいい所もある。

 今の紅い衝撃波を何とか受け切っても、竜氷剣自体は無事なのだ。


 通常の氷の剣ならば、霊素殻(エーテルシェル)を発動した状態で一太刀すれば粉々になるのは、黒仮面との戦いで証明済みだ。


 それが、特に刃こぼれもひび割れも無く耐えている。

 強度が通常の氷の剣とは大違いだ。


「おら続けていくぜぇぇぇぇ! 深紅掌(クリムゾン・パーム)ッ!」

「はい! お願いしますっ!」


 ゴオオォウッ! ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!


 連続してイングリスに向けて飛来する紅い衝撃波。


「はああああああぁぁぁぁっ!」


 腰を推しを落として強く足を踏ん張って。全力で振らねば剣が圧力に負ける。

 だが負けなければ、霊素殻(エーテルシェル)が浸透した竜氷剣はどこまで耐えるのか。これは高度に実戦的な負荷実験である。


 ガガガガガガガガガガガガガガッ!


 イングリスは押されながらも繰り出される深紅掌(クリムゾン・パーム)を氷の剣で斬り捨てて行く。


「一つ、二つ、三つ――十、二十……!」


 まだ竜氷剣は耐えている。

 少々細かいヒビが生じているだろうか? だがまだ、まだ大丈夫だ。


「スピードアーップ! 数えてる余裕あるかあああぁぁぁぁっ!?」


 紅い弾幕の密度が一気に増す!

 流石に数えていられない……!


「ありませんね……! さすがです!」


 竜氷剣自体の細かいヒビもどんどん増えて行く。


 バリイイイイィィィンッ!


 百か二百か、いやもっと受けた所で、とうとう耐えきれずに竜氷剣が砕けた。

 だがこれ程の攻撃を受けて、よく持った方だろう。


 神竜フフェイルベインの竜鱗の剣には及ばないが、確実に以前より強度と使い勝手が向上したと言える。

 竜魔術の初実戦は上々だ。


 これに今研究中の魔印武具(アーティファクト)の独自改造を組み合わせて、竜鱗の剣に匹敵する武器を生み出したい所だ。


 だがその前に何よりも、目の前に迫る無数の深紅掌(クリムゾン・パーム)である。

ここまで読んで下さりありがとうございます!


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