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第360話 16歳のイングリス・お見合いの意味12

「ははは……で、出会って十秒くらいなのにもう戦ってる……」

「に、似た者同士というやつね……どこにでもいるものなのね――」


 まさかそれが最上級の天上人(ハイランダー)だとは思いもしないが。


「ま、まあでもユミルが侵略されるとかよりはいいですよね……?」

「そ、そうね……それにしても、虹の王(プリズマー)が倒された話を聞いて、あの子の事を調べさせていたのかしら……? それで今回の話を知ったと――」


 いくら王家からの通達と言っても、天上領(ハイランド)の三大公に届くはずは無いし、届いたところで意味は無い。立場は圧倒的に天上領(ハイランド)側の方が上だ。


「ほっほっほ。さよう、武公様は常に戦うに足る強者を求めていらっしゃいます。お一人で延々と修行を繰り返されなさるのも結構ですが、その成果を確かめ合う好敵手の存在は何より貴重。イングリス殿の噂を聞き、いても立ってもいられずすぐにこちらにお伺いした次第です。いやあ楽しそうで何より何より」

「「はははは……」」


 完全にどこかで聞いたような台詞である。

 ラフィニアもエリスも、呆れ気味に乾いた笑いを浮かべていた。


 そんなラフィニア達の目の前で、イングリスと武公ジルドグリーヴァは激しく拳を打ち合っていた。


 ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!


 轟音を立てて何度も繰り返しぶつかり合う幼い拳と武骨でがっしりした男の拳。

 見た目通りと言うか、少々押されているのはイングリスだった。


 段々と威力で押され始め、拳と拳の衝突点が目の前に近づいてくる。

 やがてあちらの拳に拳を合わせる事が間に合わず、腕を組んで防御するしかなくなる。


 小さな両腕の防御の上を武公ジルドグリーヴァの拳が叩き、イングリスの体は大きく後方に圧されて後ずさりする。


「さすが……! 重い拳ですね!」


 例え自分の体がきちんと今の、16歳のものだったとしても圧されていただろう。


「どうしたぁ!? 虹の王(プリズマー)を倒した奴がそんなもんなじゃねえよなぁ!?」


 言いながら、武公ジルドグリーヴァは追撃をかけてくる。


「さあ、どうでしょうか……!?」


 にやりと笑みを浮かべながら、超重力の魔術の負荷を解く。

 そして追撃の拳にこちらの拳を合わせる。


 ドゴオオオオオオォォォンッ!


 今度は若干、イングリスが押した。

 超重力を解いた結果だ。


「せっかくお越し頂いたのですから、ご満足頂けるおもてなしをご用意したいものですが……!」

「なるほど! いいねぇ!」


 二、三歩後ずさりをしながら、にやりと笑みを見せる。

 あちらも、こちらが虹の王(プリズマー)を倒したと知っての来訪だ。


 天上人(ハイランダー)のそれも最上級格の三大公の一員に、イングリスと政略結婚してどうとか、カーラリアでの影響力をとか、そんな小賢しい目的があるはずがない。

 完全にイングリスの力を見込んで、戦うために来てくれたのだ。


 ならば、虹の王(プリズマー)を倒した者と戦うに相応しい実力を武公ジルドグリーヴァは備えているはず。

 まだまだ、こんなものでは無いはずだ。

 イングリスがまだ完全な全力を出していないのと同じだ。


「さぁ次はそちらの……!」


 力を見せて頂きたい……!


「おうよ、見てなあぁぁぁッ!」


 話が早くて助かる。


 ボゴオォォォッ!


 武公ジルドグリーヴァの筋肉が異様に盛り上がり、発達して行く。

 腕も足も腰も胸板も、五割り増しくらいに膨れ上がったように見える。


「おお……! いいですね!」


 見るからに力が増したように見えるが、実際にその力は桁外れだった。


「そらああああぁぁぁっ!」


 ドゴオオオオオオォォォンッ!


 真っ向から打ち合うと、今度は全く押さえきれずに弾かれた。


「っ!?」


 イングリスの体は、物凄い勢いで吹き飛ぶ。

 あっという間に訓練場の壁に激突しかける。


 その寸前に――


「はああああぁぁぁっ!」


 霊素殻(エーテルシェル)

 直後、壁は爆発したように崩れ落ちる。

 が、それはイングリスが叩きつけられたのではない。


 イングリスがそれだけの威力で壁を蹴ったからだ。

 霊素(エーテル)の波動に身を包みつつ、体勢を立て直し反転したのだ。


「おおおおぉぉっ!?」


 吹き飛ぶ速度より早く目の前に戻ってきたイングリスに、武公ジルドグリーヴァは目を見開く。

 その瞬間イングリスは、既に蹴りを振りかぶっていた。

 あちらも即座に、腕を組んで防御姿勢を取る。


 反応が間に合ったのは流石だ。

 霊素殻(エーテルシェル)を発動したイングリスの動きは、天恵武姫(ハイラル・メナス)や同じ天上人(ハイランダー)の重鎮である大戦将(アークロード)のイーベルですら反応できない程なのに。


 ドゴオオオオオオォォォンッ!


 今度は物凄い勢いで吹き飛ぶのはあちらの番だ。


「ははははははははっ!」


 嬉しそうに笑いながら、物凄い勢いで吹き飛んで行くが――


 ボゴオォォォッ!


 吹き飛びながら更に筋肉が肥大化して、体が大きくなる。


「ふふふふ……っ!」


 イングリスも嬉しそうに笑みを漏らす。

 まだ上がある。楽しませてくれる!


 ドガアァァンッ!


 それは、武公ジルドグリーヴァが壁を蹴り壊す音だ。

 反転して突っ込んでくる速度は、先程のイングリスと同じく吹き飛ぶ速度より上だ。


「どぅりゃあああああぁぁぁぁっ!」

「はああああああああぁぁぁぁっ!」


 巨木のような武公ジルドグリーヴァの蹴りと、小枝のような幼児の姿のイングリスの蹴り。両者が交錯し、威力の余波が衝撃波として拡散する。


「ひゃんっ!?」


 それに打たれたラフィニアがこてんと転んでいた。

 訓練場の壁が軋み、植木の枝が揺られて折れた。


 更に体勢を立て直した両者の激しい打ち合いが、訓練場や城全体を揺るがし始める。


「……互角ね――!」


 ラフィニアを助け起こしつつ、衝撃に髪を揺らしながらエリスは言う。

ここまで読んで下さりありがとうございます!


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