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第293話 15歳のイングリス・従騎士と騎士団長3

「集合! 陛下をお守りする壁を作れッ! 奴を倒そうとする必要はないぞ……! とにかく時間を稼げばいい――!」


 時間を稼げば、天恵武姫(ハイラル・メナス)を使うロシュフォールの方が力尽きる事が期待できる。

 ロシュフォールは国境での聖騎士団との戦いでも、天恵武姫(ハイラル・メナス)を使っていたらしいという事は聞いている。

 更にここで力を使えば、きっと長くは持たないはずだ。


「レダス、そなたは……?」


 レダスが飛ばした指示の内容から、カーリアス国王は何かを察したようだ。


「申し訳ございませぬ、陛下――イングリス殿より話を伺いまして……」

「――そのような事まで見抜くのか、あの娘は……本当に底知れんな――! うむ、時間を稼げばイングリスも参ろう……! とにかく、時を待つのだ――!」

「「「ははっ!」」」


 カーリアス国王の命に、レダスや周囲の騎士達は強く頷く。

 防御を固めるべく、密集陣形を取った所――


「ハハハハハ! 無駄無駄無駄ああぁぁぁッ!」


 機甲鳥(フライギア)から飛び出したロシュフォールは、盾が発する光を後方に噴射させて空を飛び、そのまま立ち塞がる騎士達に突撃をする。


「「「ぐああああああぁぁぁぁぁっ!?」」」


 いくつもの悲鳴が上がり、破壊された機甲鳥(フライギア)の機体の残骸が降ってくる。


「ありがとうよ、皆で仲良く固まってくれてなぁぁぁっ! むしろ手間が省けるわっ!」

「くっ……! 散開だ……! 散開しつつ遠巻きにして注意を反らせ――!」

「それも無駄無駄無駄ああぁぁぁッ!」


 ロシュフォールの盾に散りばめられた宝玉から光が迸り、周囲を取り囲む兵を薙ぎ払った。


「「「うおおおぉぉぉぉぉぉっ!?」」」


 再び上がる、いつくつもの悲鳴。

 カーリアス国王を守る騎士の数は、あっという間に半減以下になってしまっていた。


「はっはははははは! 馬鹿どもがあぁーーーーーーっ! そんな事をしても無駄死になんだよ! そもそも貴様ら雑兵が、この真の姿となった天恵武姫(ハイラル・メナス)を止めようなどという発想自体が無謀! 暴挙! 不遜の極みいぃぃぃっ!」

「くっ……! 図に乗って――!」

「だが、この力は圧倒的だ……!」

「本来は虹の王(プリズマー)に向けられるべき力……! さすがは……!」


 表情に危機感を露にする騎士達に、ロシュフォールはふと声色を変えて呼びかける。


「――なぁオイ? 無駄死には止めておかないか? 武器を捨て、下がって大人しく見ているがいい。カーラリアは滅びるが、諸君らはヴェネフィクの騎士として今の立場をそのまま保障しようではないか。新たな領土を得たとて、それを治めるには人が必要だからなァ。なぁに諸君からしてみれば、頭がすげ代わるだけ。それほど変わらんよ? どうだ、ん? 心あるものは武器を捨て、下がっているがいい。ホレ、誰も咎めんよ? 下がれ下がれ――」


 ロシュフォールは手を振って、騎士達に下がるように呼び掛ける。

 そして暫く、彼等に考える時間を与える構えだ。


「ば、馬鹿な事を――!」

「ふざけるな……!」

「我々を愚弄するのか……っ!?」

「愚弄などしておらんよ。むしろ諸君の力を必要としているから、無駄死にはせぬようにと言っている。あっらたに我がヴェネフィクの領土となるこの地には、この地に慣れた諸君らが必要なのだ」

「耳を貸すな! 虹の王(プリズマー)が甦ったこの非常時に、民を守らず我らが王宮を強襲するような輩だぞ――! それが民の上に立った所で……!」


 そう大声を上げるレダスを、カーリアス国王が制する。


「よい、レダス……! 下がっておれ。皆の者も同じだ、下がって見ていよ」

「陛下……!? 何と言われます……!?」

「いいから言う通りにせよ――!」

「「「……っ!?」」」


 その迫力に圧され、騎士達は、二歩、三歩と後ずさりをする。


「あの者の申す通り、このままでは無駄死によ――流石は究極の魔印武具(アーティファクト)の威力と言えよう」


 カーリアス国王は反対に、一歩二歩とロシュフォールに向かって歩を進める。

 その手は腰の佩剣に伸びている。


「それに――奴の言う事に従う者が出れば、たとえその後を無事に乗り切ったとしても、その者を罰せぬわけにはいかぬ――他の者に示しがつかぬ。だが我は、そのような事はしとうない――故に、そなたらは下がっておれ」


 全員下がってしまえば、誰がロシュフォールの言葉に従おうとしていたかは分からない。今のこの場は、それいい――


「へ、陛下……!」

「少しの間であれば――我が自ら稼いで見せようぞ……!」


 武器形態化した天恵武姫(ハイラル・メナス)を振るい続けていれば、使い手は長くは持たない。

 そしてイングリスも、こちらに向かっている。

 二重の意味で、時間を稼ぎさえすればいいのだ。


 カーリアス国王は佩剣を抜刀する。

 蒼い宝石のような半透明の刃は淡く発光し、柄の部分には伝説の生き物と言われる竜の意匠――

 聖騎士ラファエルに与えられた神竜の牙(ドラゴン・ファング)と双璧を為す魔印武具(アーティファクト)神竜の爪(ドラゴン・クロウ)だ。


「それは聖騎士ラファエル殿の持つ魔印武具(アーティファクト)に似た……その右手に頂く特級印は飾りではないという事ですかな?」

「――このカーリアス、天に歯向かう刃は持っておらぬが、自らを護る爪は持ち合わせておる……! この大将首は、そう易々とくれてやるわけには行かぬ……!」

「ほぉう――? 気迫だけは大したもの……ではそのお力を拝見させて頂こうッ!」


 ロシュフォールは盾を前面に構え、真っすぐにカーリアス国王目掛けて突撃する。

 単純で直線的な攻撃だが、その速度は目に留まらぬほど早い――!


「かあああぁぁぁぁぁぁっ!」


 カーリアス国王が気迫を発し、その身が輝きに包まれる。

 直後、ロシュフォールの突撃がカーリアス国王の立っていた地面を撃つ。


 ドゴオオオオオォォォォンッ!


 周囲の地面が吹き飛び、盛大な土埃が周囲の者たちの視界を奪う。

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