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第281話 15歳のイングリス・東部戦線12

「いけない――! あれは西側に行こうとしている……!」


 西側つまりカーラリア領内の方向だ。


「くっ、こんな時に……! 地上の人間同士が争っている場合じゃないのに――!」

「エリス様――! こうなったらあの男にも協力をさせましょう――!」

「どうやって――!? あの男に説得なんて通用しそうにないわよ……!?」

「こうです――!」


 ラファエルは機甲鳥(フライギア)の船首を上に向け、機体は遮蔽物の岩山の陰を飛び出して上空に出る。


「……っ! 見つかるわよ――!?」


 エリスの言葉が終るか終わらないかのうちに――


「そこかあぁぁぁァァ! ダメじゃないか、騎士が敵に背中を向けては――ッ!」


 早速ロシュフォールは機甲鳥(フライギア)を補足し、迫って来る。


「ええ、それでいいんですよ……! 奴にも手伝わせるためには――! このまま魔石獣の群れに突っ込みます!」


 魔石獣のど真ん中に逃げ込むことで、姿を隠しながらあの盾の威力の余波を撒き散らせて貰う。

 それによって、魔石獣の群れを駆逐するのだ。


「なるほど……! 危険な賭けだけど――!」

「どちらも対処するには、これしかありません――!」

「ええ――そうね!」


 ギイィィンッ!


 エリスは再び、双剣による目くらましを試みる。


「そんな小手先の小技! 二度も通じるものかッ!」

「追いつかれる――!?」

「エリス様! 舵を! 替わって下さい!」


 ラファエルは操舵をエリスに任せて船外に飛び出す。

 機甲鳥(フライギア)の機体の背後に回り――


「うおおおおおぉぉぉっ!」


 機体を手で直接押し込む。

 機甲鳥(フライギア)の推力に、神竜の牙(ドラゴン・ファング)の翼の全速力を加えるのだ。


 グッと加速した機甲鳥(フライギア)は、それでもロシュフォールを引き離すには至らない。

 だが差の詰まる勢いは確実に落ちた。

 氷漬けの虹の王(プリズマー)や、魔石獣の群れにグングンと近づいていくが――


「くっ……!? 届かないか――!?」

「あと一歩よ、何とか……!」


 それでも――あと一歩、手前でロシュフォールに追いつかれる。


「ハハハハッ! 鬼ごっこもこれで終わりにさせてもら――――」


 その時、黒い光の弾がラファエル達の脇を通り過ぎて行くのが視界に入った。

 それは、ロシュフォールの足に着弾し――


「おぉぉうッ――――!?」


 ガクンッ! とロシュフォールの姿勢が一瞬傾ぐ。

 それにより速度が落ち、再び少しの距離が開く。


「エリス! ラファエル! 助けに来たよ!」

「リップル!」

「リップル様!」


 あの光弾は、駆け付けたリップルの銃撃だった。

 ロシュフォールに直接打撃を与えるには至らなかったが、強力な重力の『目』がその姿勢を崩し、速度を落とす効果は発揮したのだ。

 さらに――


「ゴメンね――! 力を貸してね――っ!」


 それは、乗って来た機甲鳥(フライギア)に対する言葉だった。

 船首を迫り来るロシュフォールに向けて全速突撃させたまま、自分は足元を蹴って機体を放棄したのだ。

 機甲鳥(フライギア)による自爆特攻である。


 ドゴオオオオオォォォォンッ!


 ロシュフォールの黄金の盾に激突し、機甲鳥(フライギア)の機体は轟音を上げて砕け散る。


「ぬうぅぅぅぅっ!?」


 更に足が止まるロシュフォール。

 一方機体を放棄したリップルは、動物のように俊敏な身のこなしで、ラファエルとエリスの乗る機体の方に飛び移る事に成功していた。


「助かったわ! いいタイミングね――!」

「状況は見てて分かったよ! とんでもなくヤバい状況だね――!」

「ええ、ですがリップル様のおかげで、これなら――」


 ラファエルがそう言う間に、機甲鳥(フライギア)は魔石獣の群れに突入する。


「逃がさん――! 逃がさんぞオオォォォォォォッ!」


 こちらを追って魔石獣の群れに飛び込むロシュフォール。

 その盾の発する光の余波が、周囲の魔石獣を次々に巻き込み、消滅させて行く。

 先程の戦いでラファエルが魔石獣の群れに対して行った突撃よりも、遥かに大規模かつ強烈な破壊力だ。


「狙い通りですね――! しかし、凄まじい……!」

「だけど、あんなのいつまでも続かないよ――!」

「ええ、あなたの判断は正しいわ、ラファエル――! このままあの力と魔石獣を相殺させていれば……!」


 この多数の魔石獣の群れの中ならば、身を隠して逃げ続ける事は先程よりも容易。

 いずれロシュフォールは力尽き、その時は魔石獣の群れも壊滅しているだろう。


「木を隠すなら森と言うわけだろうがなあぁぁァァッ!」


 ロシュフォールは言いながら急停止し、黄金の盾を天に掲げる。


「足を止めた……!?」

「あれは――っ!?」

「何のつもり……!?」


 盾が一層激しく輝き、輝きがロシュフォールの回りを球体状に覆っていく。


「ならば森ごと吹き飛ばすまでだよなああぁぁぁァッ!?」


 ヒイイイイイイィィィィィィンッ!


 甲高く共鳴するような音と共に、爆発的に光が広がる。

 それに触れた魔石獣は体がぼろぼろと崩壊し、消滅して行った。


「……まだあんな力を――っ!?」

「早い……ッ!?」

「ダメ、逃げ切れないよ――!」


 高速で広がる光は、ラファエル達の目の前にも迫り――


「「「うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」」


 巻き込まれた三人は、凄まじい衝撃を受けて弾き飛ばされる。

 ラファエルの目の前は一瞬真っ暗になり――次に背を激しく何かにぶつけた。


 ガシャアアアァァァァァァァァンッ!


 同時に聞こえる何かが砕ける音。

 キラキラとした小さな何かが視界に入り、ひんやりとしたものが体に触れている。


「これは――虹の王(プリズマー)の氷……!?」


 ラファエルの体は、氷漬けの虹の王(プリズマー)を覆う氷に埋まり、受け止められるような形になっていたのだ。


「う、うう……!」

「あいたたたぁぁ……!」


 エリスもリップルも、ラファエルと同じように虹の王(プリズマー)の氷に埋もれるようになっていた。

 この氷が激突の衝撃を和らげてくれたと言っていい。

 皮肉にも聖騎士と天恵武姫(ハイラル・メナス)にとって最大最強の敵である虹の王(プリズマー)に救われたような形だ。


「まさか、こんな事に――僕達の敵は、お前のはずなのに……!」


 ラファエルは未だ氷の中の虹の王(プリズマー)に視線を向ける。

 ぶつかったのは丁度頭部の近くで、その巨大な虹色の瞳は――

 キラリと輝いて、ラファエルの方を見た。


「――!?」


 間違いない。

 今、目が合った――!


「エリス様、リップル様――! 見ましたか? 今、虹の王(プリズマー)がこちらを……!」

「え、ええ――! 見えたわ……! もう完全に目覚めて……!」

「ま、まずいよ、起きてきちゃう……!」


 しかしロシュフォールは止まらない。


「さあ、止めを刺させてもらおうかぁぁァァァァッ!」

「止せ――! これ以上虹の王(プリズマー)を刺激するな! 奴はもう目覚めている! 攻撃を加えたと見做されれば、反撃に動き出して来るぞ――!」

「諸共叩き潰してやれば、全て解決ううぅぅぅぅッ!」


 ロシュフォールが止めの一撃を繰り出そうとした時――


 バリイイイイイイイィィィィィィィンッ!


 巨大な音を響かせて、虹の王(プリズマー)を覆う氷が粉々に砕け散った。

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