表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
280/493

第280話 15歳のイングリス・東部戦線11

「ハハハハハハッ! こいつはいい、こいつはいいぞ――アルルッ! カーラリア最強の騎士がまるで赤子のようだ――! あぁ見える、見えるぞ! 輝かしい未来がッ!」

「お前に未来など無い――ッ! こんな事をしておいて、ただで済むと思うな……っ!」

「さぁねェ! どの道貴公には結末は見られんよ、これで砕け散るのだからなァ!」


 バヂバヂバヂバヂバヂ――――ッ!


 円盾の表面に光が凝縮して眩く輝き、激しく唸るような音を発する。

 その収束した光の余波だけで、周囲の高い岩山の一部が弾け飛び始める。

 恐ろしく強大な威力がそこにあるのは、一目瞭然だ。


「お別れだァァァァァァッ!」


 唸りを上げて輝く盾が、上空からラファエルに突進して来る。


「く――――ッ!」


 まだ先程の衝突の衝撃で体が思うように動かないが、立たねば――!

 これをまともに受けては、やられる――!


「ラファエル――ッ!」


 名を呼ぶ声が聞こえ、そして――


 ドグウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!


 耳に痛いほどの轟音。

 ロシュフォールの一撃が炸裂すると、そこから巨大な光の柱が立ち上り、周辺の地面を吹き飛ばして大地に大穴を穿った。


「――凄まじい威力だ……! これが、虹の王(プリズマー)と戦うべき力――」


 ラファエルは後方を振り返りながら、そう唸る。

 その破壊の規模の大きさには、驚嘆せざるを得ない。


「ええ……! でも決して、目には目をなんて考えてはダメよ――!」


 そう応じるのは、エリスだった。

 ロシュフォールの一撃が炸裂する寸前、機甲鳥(フライギア)の全速力で滑り込み、ラファエルの身を掬い上げたのである。


「はい、エリス様……! 僕達の使命は、虹の王(プリズマー)から人々を守る事ですから――!」

「分かってくれているならいいわ、このまま距離を取るわよ!」

「ええ――! 助けていただいてありがとうございます、リップル様は……!?」


 ラファエルを助け出してくれたのはエリスのみで、リップルの姿はなかった。


「本隊を撤退させに行ったわ! あんな無茶な相手では分が悪いわ……!」

「そうですね、それがいい――! こちらは奴が本隊に向かわないよう、距離を取りながら引きつけましょう……!」

「ええ、そうね――!」


 その二人の会話に、割り込む声が響く。


「そうはいかんなァァ――! どちらも潰させて貰うぞ……ッ!」


 ロシュフォールの姿が、あっという間に機甲鳥(フライギア)に迫りつつあった。

 盾を身の前面に掲げた姿勢で、盾の縁部分から後方に光を噴出し、それが膨大な推進力となって飛行を可能とするようだった。


「――!? 早い……!」

「もう追いつかれたの――!?」

「ハハハハハッ! 強い――! 早い……! 凄いッ! 最高じゃないかあァァァッ!」


 哄笑を上げるロシュフォールの姿がどんどん迫る。


「何を嬉しそうに――ッ!?」

「遊びじゃないのよ……! どうしてあんな男に、向こうの天恵武姫(ハイラル・メナス)は――!」


 使い手と天恵武姫(ハイラル・メナス)の心が一つになって、初めて武器化は完成するもの。

 今のあの様相は、単なる見境の無い凶戦士だ。それに力を貸すなど――!


「うおぉぉらああああアァァァァァァッ!」


 極光を帯びた盾の一撃が、再び間近に迫る。


「ラファエル! 舵を! はあぁぁっ!」


 エリスは舵をラファエルに預けて後方を振り返る。

 振り抜いた双剣の斬撃は空間を越えて――

 盾を持つロスフォールの腕を、十字に挟み込むように閃く。

 が――ロシュフォールの身を覆う輝きに阻まれ、刃が弾かれてしまった。


「効かない――!?」

「美女に折檻されるのは嫌いではないが――そんな豆鉄砲ではなあぁァァッ!」

「なら、これでっ――!」


 ギイィィンッ!


 エリスは双剣を強く擦り合わせる。

 同時に、空間を飛び越えて斬撃を送る力を発動させ――

 結果、ロシュフォールのすぐ眼前で、一瞬大きく花火が散る。


「……っ!? 目くらましか――!? 天恵武姫(ハイラル・メナス)ともあろう者が、がせこい真似を――!」

「その特級印の使い方を間違っているあなたに、言われたくはないわね――!」


 エリスがロシュフォールに言い返している間に、ラファエルは機甲鳥(フライギア)の操舵を行い急速停止をかける。

 一瞬目がくらんだロシュフォールは機甲鳥(フライギア)を追い越して行き――


「よし……!」


 その隙にラファエルは方向転換をしつつ地上近くに高度を下げる。

 岩山の陰に滑り込んで、ロシュフォールの視界を切った。


「いいわよ――! このまま、岩山を陰にして引き離しましょう!」

「ええ、エリス様……! もう少し身を隠す障害物があればいいんですが――!」


 森や林でもあればその中に紛れてしまえるのだが、生憎この辺りにそういったものは無い。

 いくつかの岩山はあるが、地表自体は障害物は無く、視界は開けている。


「仕方がないわ……! とにかく、時間を――!」

「はい……!」


 ロシュフォールから身を隠しつつ、機甲鳥(フライギア)は岩山の低空を西へと飛んで行く。

 遠目に氷漬けの虹の王(プリズマー)が鎮座する地点が目に入って来た。


「……! あれは――!?」

「また、あんなに大量に――!」


 虹の王(プリズマー)の周辺に、再び飛鳥型の魔石獣が大量に生み出されようとしていた。

 その巨大な群れの数は、虹の王(プリズマー)周辺の空間を黒く埋め尽くしてしまいそうな程だ。

 先程ラファエル達が相手をした集団を上回る数なのは間違いない。

 それらが一斉に移動を始めようとしていた。

ここまで読んで下さりありがとうございます!


『面白かったor面白そう』

『応援してやろう』

『イングリスちゃん!』


などと思われた方は、ぜひ積極的にブックマークや下の評価欄(☆が並んでいる所)からの評価をお願い致します。


皆さんに少しずつ取って頂いた手間が、作者にとって、とても大きな励みになります!


ぜひよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ