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第278話 15歳のイングリス・東部戦線9

「何が可笑しい――!?」

「相変わらず甘ちゃんだなァ、貴公は! 変わっていなくて安心したよ! ああ俺の目から見れば貴公らは真剣に魔石獣を止めるべく、奮戦していただろうさ……! わざわざ敵側に向かっているのにもかかわらず――なァ! 魔石獣の相手には全ての人間が手を取り合うべきという、その言葉を体現した振る舞いと言えるだろう……!」

「……それが分かっていて、何故――!?」

「だがなァ! 結局は貴公らは魔石獣を先兵に我が国を犯そうとした所を迎撃された侵略者となる……! 分かるか? 所詮このクソったれた世の中では、何を思っていたかなど関係ないのだよ――! 力を持ち、相手を捻じ伏せた者が全てを決めるゥ! 正義も真実も、全ては力が生み出す副産物なのだ――!」

「くっ……話し合う余地は――!?」

「無いなァ! 語るならば力で語ろうぞ、ラファエル・ビルフォード! 貴公の首なら、我が武勲に申し分ないなァ!」

「くっ――そちらがそう出るのならば……!」


 ここでロシュフォールを討ち取るしか無い――!

 大将を失えば、他の兵達は戦意を失い魔石獣の掃討に協力あるいは少なくとも、こちらへの攻撃は止められるはずだ。


 ロシュフォールは魔石獣よりこちらの攻撃を優先するつもりのようだが、他のヴェネフィクの将兵達も全て同じ考えとは限らない。

 中には、魔石獣を前にはカーラリアと争っている場合ではないと考えている者も少なくはないはず。


 ロシュフォールを排除し、その彼らの意識に期待をするしか――


「相手をしてくれるか――歓迎するぞ……! だがこちらも忙しくてなァ――! 勝負は一気につけさせて貰うぞ――!」

「舐めないで貰おう――多勢に無勢とはいえ、そう簡単に――!」

「ハハハハッ! そうではないなァ! 貴公の腕を認めればこそ――! それにその魔印武具(アーティファクト)は強烈だよ。流石大国カーラリアには、良い騎士と良い魔印武具(アーティファクト)が揃っている……!」

「……ならば、どうすると――?」

「こうだ――! 来い、アルル――っ!」

「はい――」


 ロシュフォールの声に応じて隣に進み出たのは、女性の騎士だった。

 だが恐らく、ただの女性騎士ではない。

 リップルと同じような、獣の耳と尻尾を持つ獣人種だった。


 見た目の年齢は十代後半のリップルと同じ程度か。

 元気で溌溂とした印象のリップルとは違い、落ち着きと淑やかさ、そして物憂げな儚さを漂わせる女性だ。

 同じ獣人種でも、全く印象は異なると言っていいだろう。


「……! 天恵武姫(ハイラル・メナス)――!?」


 リップル曰く、獣人種は既に滅んだ種族との事だ。

 地上の人間とは違い、獣人種には虹の雨(プリズムフロウ)が効く。

 だからその影響を受け、魔石獣化する事により種が滅びてしまったと――


 それが生き残っていることがあるとすれば、それはリップルと同じような、天恵武姫(ハイラル・メナス)としてだ。

 天恵武姫(ハイラル・メナス)となれば、虹の雨(プリズムフロウ)の影響も受けない。


「悠長に腕など競っている場合ではないのでなァ! 武器で圧倒させてもらおうか!」


 ロシュフォールはラファエルを見据えたまま、隣に並ぶアルルに手を差し伸べる。


「はい……あなたの、思うがままに――」


 アルルは大切そうにその手を両手で包み込み、自分の胸に抱くようにする。


 カッ――――――!


 アルルの身が眩く輝き始める。

 見る者を畏怖させるような、神々しい輝きだった。

 これは――見た事は無いが、話には聞いた事がある。


「ば、馬鹿な……!?」


 これは天恵武姫(ハイラル・メナス)が真の力を発揮する時の――

 だとすれば――!


「ハァーハッハハハハハッ! そうだいい子だ! この俺に力を与えろおぉぉぉぉっ!」

「まさか――! 人間同士の戦いに、武器化した天恵武姫(ハイラル・メナス)を使おうというのかッ!?」

「そのとおおぉぉぉぉりッ! さあさぁさアさァ! 討ち取ってやるぞ! 聖騎士ッ!」

「貴様あぁぁぁぁっ!」


 ラファエルの怒りは頂点に達する。

 あり得ない。

 全く馬鹿げた、あり得ない行動だ。

 武器化した天恵武姫(ハイラル・メナス)を手に取って戦えば、その強大過ぎる力の代償として、使い手たる聖騎士は力尽き、命を失う――


 これは聖騎士にとっては常識。

 聖騎士に任命される際、事前に何度も意思確認もされた事だ。

 聖騎士は、人知を超えた強大な災厄である虹の王(プリズマー)から、人々を守るためにある者――人々にとっての最後の希望、最後の砦なのだ。


 幼い頃、故郷ユミルの城が魔石獣に襲われた際――母イリーナはラファエルに、他の者を見捨ててでもラファエルは生き残らねばならないと言った。

 あの時はその言葉に反発をしたし、今でもあの場で家族を守ろうとしたことは間違っていないと思ってはいるが、母の言う事も理解できるようにはなった。


 それだけ、聖騎士に課された使命は重いという事だ。

 この地上に生きる人々にとって、無くてはならない希望なのだ。

 母イリーナは聖騎士と天恵武姫(ハイラル・メナス)の真実は知らないだろうが、このような事情があるならば、その使命は猶更重い。


 こんな戦いに天恵武姫(ハイラル・メナス)を使うなど言語道断。

 これで力尽きてしまえば、無論だが本来の務めを果たすことは出来ない。

 誰が虹の王(プリズマー)から人々を守る?


 これは、人々の希望を投げ捨て踏み躙るような暴挙だ。

 ヴェネフィクの国には聖騎士という称号や階級はないのかも知れないが、ロシュフォールが何も知らないはずはない。

 分かっていてこんな行動に出るなど――!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] これは普通に愚か過ぎるじゃない?天恵武姫の力を作ると貸すの奴等ですらほぼ私欲の塊なのに、力を借りる奴が正義であるべきというのは、誇り高き理想であっても、他人に要求するの押し付ける勝手し…
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