第271話 15歳のイングリス・東部戦線2
「あったり前! せっかくイングリスちゃん達に助けて貰ったんだから、天恵武姫として前以上にバリバリ働かないとね!」
「ふふっ――じゃあ、私も見習おうかしら。さあラファエル、敵は散ったわ、接近して各個撃破しましょう」
戦況はエリスの言う通りだ。
遠距離からの一斉攻撃を浴びせられた魔石獣の一団はかなりの数を減じており、これは堪らないと散開して四方八方へと広がって行く。
「よし――各員、突撃! 散開した魔石獣を各個に撃破します! 被害を最小にするため、一体に対し必ず複数でかかるようにして下さい!」
「「「おおおおぉっ!」」」
雄叫びを上げる騎士達より一足早く、エリスの乗る機甲鳥が全速前進を始める。
「先に行くわよ!」
「お、エリス張り切ってるぅ!」
「あなたばかりにいい格好はさせられないから、ね――操縦はお願い」
エリスは同乗するリップルに舵を任せると、自分は船首の部分に乗り出して立つ。
高速飛行する機甲鳥の上で、空気抵抗など何も感じさせない綺麗な立ち姿は、それだけで常人の身体能力でない事が窺い知れる。
「よぉし――行くよ! 一番乗りっ!」
「ええ――!」
リップルの操縦で、機甲鳥は二体並んだ魔石獣の間に割り込むような軌道を描く。
「受けなさいっ!」
ズバアアアァァァッ!
通り抜けざまに、エリスの双剣が左右一体ずつの魔石獣を襲う。
凄まじい切れ味の剣は、あっさりと魔石獣を両断。
その体は眼下の岩山に墜落して行く。
「まだまだ行くよ!」
「ええ、いくらでも!」
リップルは機甲鳥を急旋回させ、散開している別の魔石獣を追跡する。
エリスは荒っぽい急速旋回にも微塵も姿勢を乱すことなく、近づく魔石獣をどんどん切り伏せて行く。
少し距離のある位置には、操縦桿から片手を離してリップル自身の銃撃が飛ぶ。
それもまた、どんどんと魔石獣を撃墜して行く。
もう二人だけで残りを全て狩りつくしてしまいそうな勢いだ。
「流石、お二人が揃えば物の数ではない――!」
「さあ、我々も続くぞ!」
「あの勢いでは、我等など必要ないかも知れんがな……!」
他の騎士達もそう言いながら、エリスとリップルの後に続く。
彼女達に頼りきりになるのは良くないが、その存在に勇気と士気を貰い、共に戦うのが聖騎士団の戦い方だ。
リップルが戻って来てくれて、エリスも騎士達も、本来の姿を取り戻したと言える。
皆それぞれに、頼もしい。
これもリップルを救ってくれたという、イングリスやラフィニア達騎士アカデミーの面々のおかげだ。
戦況を俯瞰するラファエルは心の中で、イングリス達に呼びかける。
(クリス、ラニ――みんなのおかげで、リップル様も無事戻って来て下さったよ。本当にありがとう……! ここからは僕達が、この国を守って見せる――! だから安心して、騎士アカデミーで訓練と勉強に励んでいてくれ――)
とはいえリップルの話では、騎士アカデミーの食堂は崩壊したそうだから、イングリスとラフィニアは食べるものには少々難儀しているかもしれない。
ひもじい思いをしていると可哀想なので、この任務を終えたら帰りにユミルに寄って、実家の侯爵家から何か保存の利く食べ物を運んであげるのがいいかも知れない。
そんな事を考える余裕がある程には戦局は安定し、こちらは大した被害も出さずに敵は見る見る数を減らしていく。
「ラファエル様! こちらに向かってきた魔石獣は全て撃退しました!」
それから程無く、副官の騎士がそう報告を上げる。
「皆さん、よくやって下さいました! 負傷者はすぐに手当てを! 哨戒の一隊のみを残して、母艦に帰還します!」
「「「ははっ!」」」
ラファエルの呼びかけに騎士達は頷き、聖騎士団は意気揚々とセオドア特使の専用船へと帰還を始める。
「ラファエル! ボクも少し残って、様子を見させて!」
そうリップルが申し出た。
「ええ分かりましたリップル様、くれぐれも無理はなさらないようにして下さい」
「うん、大丈夫だよ。見るだけだから」
「じゃあ私も付き合うわ。ラファエル達は先に戻っていて」
「はい、では本体は先に帰還します――!」
ラファエルは本隊を率いて帰還して行き、哨戒のための少人数と、リップルとエリスだけが残った。
「エリス様、リップル様! 我等は哨戒を続けます!」
「うん、ご苦労様~」
リップルは笑顔で愛想良く、散って行く騎士達に手を振って労う。
「で、どうするのリップル?」
「うん。ちょっと――もう少し氷漬けの虹の王に近づいてみたいなって。前にここに運んで来た時と、変わってそうだから」
「――そうなの? 私は前は別任務だったから……」
「前に運んだ時、途中で少しは魔石獣が生み出されてたけど、あんなに大量じゃなかったんだよ。だから――」
「力を増している――と言うの?」
「かも知れないよ。近くに寄ってみれば、もう少しはっきりわかると思うから――」
「分かったわ。行ってみましょう」
エリスとリップルは頷き合い、機甲鳥の進路を虹の王の本体に向ける。
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