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第240話 15歳のイングリス・神竜と老王(元)13

「あ、こらラニ……! ずるいよつまみ食いなんて――!」

「いいじゃない、我慢できなかったんだもん! それに切った所はちゃんと焼けてたし――それにしてもホントに美味しいわよこれ……! クリスの言った通りね! こんなの初めて食べるわ……!」

「そんなに美味しいの?」

「それは、興味を引かれますわね――」

「ホントよ! すっごい美味しいのよ――! ただ焼いただけなのにすっごい柔らかいし、お塩振っただけなのに味が深いって言うか……! ほらほら食べてみて――!」


 ラフィニアが嬉しそうに、竜の肉をレオーネとリーゼロッテに配る。

 二人はそれを口に運んで――


「「……!?」」


 吃驚したように目を見開く。


「ほ、本当ね……! こんなの食べたことないわ――!」

「普段わたくし達が食べるお肉とは別物ですわ……!」

「でしょでしょ!? こんな美味しいお肉、いくらでも食べられるわ! よしもっと切っていっぱい食べ……!」


 と、ラフィニアはイングリスが焙っている巨大肉に手を伸ばそうとするが――


「ダメ!」


 イングリスが手元を動かして、肉の塊はラフィニアの手から逃げる。


「あっ……お肉が逃げた――!」

「ずるいよ、ラニ……! わたしは手が塞がってたのに、一人だけ先につまみ食いして――わたしだって食べたいのを我慢してたんだよ……!」


 珍しくイングリスは、ラフィニアに対して不満そうに唇を尖らせ、不貞腐れていた。


「あはは。ごめんごめん、そんなに拗ねなくてもいいじゃない。でも拗ねてるクリスもちょっと可愛いわね~」

「もう、真剣に言ってるのに……こうなったらわたしだって我慢しないから!」


 イングリスは手元を動かして、巨大肉に直接かぶりついた。


「んんんん……っ!? うわ、本当に美味しい……!?」


 存在感のある食感。なのに柔らかく味わい深く――肉特有のしつこさも全く無い。

 正直言って、話に聞いて想像していたものを上回っている。


 これは素晴らしい。まさに至高。極上の肉だ。

 一口しただけで、思わず頬が緩んで笑顔になってしまう程に美味しかった。


「ふふふっ。すごいこれ……! 怖いくらい美味しいね――」


 ばくっ! ばくっ! ばくばくっ!


 端から虫食いのように欠けて行く巨大肉。

 竜の肉は、話に聞いていた以上に美味し過ぎる――!

 これはもう、止まらない、止まれない。

 完全にイングリスの食欲に火がついてしまった


「あたしももっと食べたい! あたしにも頂戴!」


 ラフィニアが、逆方向から肉の塊の端にかぶり付き始める。

 あっという間に、広がって行く虫食いが二か所になる。


「あひゃ、りゃに。ちょりょせりゅおにゅきゅおてれれっひゃりゃめりゃよ。びゅりょびゅりょににゃるひょ?(あっ、ラニ。直接お肉を手で触ったらダメだよ。びしょびしょになるよ?)」

「ひょーりゃにゃいれひょ。こっちゃああもひゅりょりょにゃーんにゃもろ!(しょうがないでしょ。こっちも必死なんだもん!)」


 それを見たレオーネが、ふうとため息をつく。


「また始まったわね――」

「相変わらず何を言っているか分かりませんが、二人の会話は通じていますのよね」


 リーゼロッテも似たような様子だ。


「ひょうりゃにゃいにゃ。ほりゅ、こっちゃりゃみょっちゃ(しょうがないなあ。ほら、こっちからどうぞ)」

「ありゃりゃとっ♪ うみゃ……っ!?(ありがとっ♪ うぅ……っ!?)」

「りょうしりゃろ?(どうしたの?)」

「にゅにゅ……こひょちょっろまりゃひゅりゃほほっりゃにゃらっちゃほも(うん……ここちょっとまだ火が通ってないかも)」

「ちょりょまっりゃね――(ちょっと待ってね――)」


 ゴウゥッ!


 イングリスは指先から魔術の炎を起こして、ラフィニアが食べていた部分を集中して焙ってあげた。どうやら、少し生焼けの部分が残っている所に当たって、それが気になったようなのだ。


「ん……これでいいかな?」

「ありがと、クリス! よーし、今日はとことん食べるわよ! で、明日からはいっぱい肉を切って、食糧不足の街に届けてあげないとね!」

「そうだね。竜の尻尾がまた生えたら切らないといけないし――いりょりゃしゅくにゃるひょ?(忙しくなるよ?)」

「ぢゅんりょほうひょ! よりゅはりゃりゃいれ、よりゅたりゅりゅにょほ!(望む所よ! よく働いて、よく食べるのよ!)」

「しょうりゃね、りゃに(そうだね、ラニ)」


 ばくばくばくばくばくっ!


 再び猛然と欠けて行く巨大肉。


「これは――二人で全部食べちゃいそうね……恐ろしい量だけど」

「ま、まあでも問題はありませんわ。あれでもごく一部ですもの。もう少し追加で切り出して、別で焼くことにしましょう? 他の皆様にも食べて頂きませんと」

「そうね。そうしましょう」


 その後――レオーネとリーゼロッテが切り出して皆に振舞った神竜の肉は、やはり素晴らしく美味しいと大好評だった。

 極上の料理は、単にお腹を満たすだけでない。

 食べた者の気分を明るくし、明日を生きる活力となる。

 神竜の肉を堪能した面々は、明日からの活動に士気高く取り組めそうである。

ここまで読んで下さりありがとうございます!


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『イングリスちゃん!』


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