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第237話 15歳のイングリス・神竜と老王(元)10

「じゃ、次はわたしの番だね――行ってくるから……! レオーネ、わたしが合図したら次はよろしくね?」

「ええ。やってみるわ……! 任せておいて!」

「クリス、今! 行っていいわよ!」


 ラフィニアが光の矢の軌道を変えて、イングリスが飛び出す隙間を用意してくれる。


「分かった! ありがとう――!」


 イングリスは躊躇無く機甲鳥(フライギア)の船体を蹴って飛び出した。

 着地を待たず、空中で姿勢を制御しつつ、掌の先に霊素(エーテル)を収束させる。

 狙いは勿論――そそり立つ神竜フフェイルベインの尾だ。


「行けっ!」


 ズゴオオオオォォォォォッ!


 空中で放った霊素弾(エーテルストライク)は、轟音を上げながら巨木のような尾に突き進んで行く。


 軌道を目で追いながら、一拍置いて地面に着地。

 その時、イングリスが放った霊素弾(エーテルストライク)がフフェイルベインの尾に衝突していた。


 バヂイイィィィィィンッ!


 結果は――先程と同じだ。

 多少の傷跡を残すものの、霊素弾(エーテルストライク)は異様に強固な竜鱗に弾かれてしまう。


 ――もちろんそれは想定内だ!


 霊素弾(エーテルストライク)の発射から一拍の呼吸は開けている。

 次の霊素(エーテル)の戦技を繰り出すための間としては、十分だった。


 ――霊素殻(エーテルシェル)


 普段より少し色味の違う霊素(エーテル)の波動に包まれたイングリスが地を蹴ると、足元の土と雪が爆音を立てて舞い散った。

 次の瞬間、イングリスは弾かれた霊素弾(エーテルストライク)の軌道上――目と鼻の先に滑り込んでいた。

 既に腰を落として身を捻り、蹴りを振り抜く準備は万端だ。


「はああぁぁぁっ!」


 ドゴオォォォンッ!


 イングリスの蹴りが一閃すると、弾かれた霊素弾(エーテルストライク)の軌道が更に急反転し、再びフフェイルベインの尾に向けて飛んで行く。


 同波長の力を重ねて破壊力を爆発的に引き上げる霊素壊(エーテルブレイカー)ではなく、反発する波長をぶつける事により、霊素弾(エーテルストライク)を打ち返して軌道を制御する応用技だ。

 先日、プラムの兄ハリムの率いる敵部隊と交戦した時にも使ったが、イングリスとしては割と気に入っている。


 霊素弾(エーテルストライク)を殴りつけて無理やり軌道変更する力任せの極みのように見えて、反発する二種類の波長の霊素(エーテル)を操る事が出来なければ成り立たない、高度に技術的な戦技だからだ。自分の技術力向上の証である。

 霊素反(エーテルリフレクター)とでも言えばいいだろうか。


 今回もこれが使える――と判断したのだ。


 バヂイイィィィィィンッ!


 反転して竜鱗に激突した霊素弾(エーテルストライク)が、再び弾かれる。


「もう一度っ!」


 再度弾かれた軌道に先回りし、今度は真っ向正拳を繰り出す。


 ドゴオォッ! バヂイイィィッ!


 また弾かれて、掌打で叩き戻す。


 ドゴオォォンッ! バヂイイィィィッ!


「まだまだ行きますっ――!」


 今度は勢いよく突進しながら、肘打ち。


 ドゴオォォォンッ! バヂイイィィィィィンッ!


 更に、急角度で撃ち上がった光弾に、踵を叩き落とす。


「まだ足りませんね――!」


 霊素(エーテル)の光弾が、神竜の尾とイングリスとの間を、行ったり来たりを何度も繰り返す。


 機甲鳥(フライギア)に残ったラフィニア達からは、その動きは完全に目で追えない領域に達していた。

 大きな光と小さな光が、乱反射しながら巨大な神竜の尾の周りを暴れ回っていているようにしか見えない。響き渡る轟音が、まるで嵐のようだ。


「凄いですイングリスちゃん……! 全然目で追えません――! 何が何だか……!」

「クリスってば、前にも同じ技使ってたけど――今日は一段と切れが違うわね……!」

「前に同じ事してた時は、力を抑えてたのかしら」

「街中でしたし、恐らくそうですわね――」

「けど、クリスがそれだけ本気でやってるのに、あれしか傷がつかない竜の方も凄いわね……!」

「ええ。イングリスの言う通り、虹の王(プリズマー)にも匹敵するのかも――」

「ですが、確実に傷は広がっていますわ――!」

「レオーネ、操縦代わるわ! このままなら、そろそろ出番よ!」

「分かった! お願いね――!」


 レオーネは魔印武具(アーティファクト)黒い大剣の柄を強く握り、力を込める。


「さあ、そろそろですね――!」


 イングリスはそう呟く。

 衝突の度に、光弾は少しずつ力を失い、フフェイルベインの尾には傷が残る。

 驚異的な回復力を誇る神竜の肉体だが、霊素反(エーテルリフレクター)による損傷の速度が、それを上回っていた。


 少しずつ広がる損傷は、人の身長くらいの高さに集中。

 その部分の竜鱗が爆ぜ飛んで、中の肉が露出していく。

 イングリスが正確無比に、それを狙って撃ち返していたのだ。


 やがて最初に放った霊素(エーテル)の光弾が力を失って消滅すると――

 フフェイルベインの尾に刻まれた損傷も、ぐるりと水平に尾を一周する程に広がっていた。


「よし……!」


 狙い通りだ――後は幻影竜が集まって来て傷口を再生してしまう前に、時間との勝負!


「レオーネ! お願い!」


 イングリスは上空に待機している星のお姫様(スター・プリンセス)号を見上げて合図を送る。

 既にレオーネは黒い大剣の魔印武具(アーティファクト)を構え、プラムの竪琴の魔印武具(アーティファクト)の支援も万全の様子だ。


「ええ、分かったわイングリス!」

「行くわよ! 加速モード!」


 操縦桿を握ったラフィニアが、力強く宣言する。


 ヴィイイィィィィィィィンッ!


 星のお姫様(スター・プリンセス)号が普段より一段高い駆動音を上げる。


「全速力で突っ込むわ!」


 ラフィニアが力強く操縦桿を倒すと、それに応えた星のお姫様(スター・プリンセス)号はまるで一筋の流星のように、猛然とフフェイルベインの尾に向けて突っ込む。


 勿論その狙いは、イングリスが霊素反(エーテルリフレクター)で刻んだ傷跡だ。

 船上のレオーネは、渾身の力を込めて、黒い大剣の魔印武具(アーティファクト)を振りかぶる。

 同時に奇蹟(ギフト)の力で、黒い刃は太く長く、一瞬で巨大に変化する。

 その大きさは、神竜の尾の直径を超える程である。


「でえええええぇぇぇぇぇぇぇいっ!」


 加速モードの全速力を乗せた、レオーネの黒い刀身は露出したフフェイルベインの肉に食い込み――


 ズバアアアアアアァァァァァァッ!


 そのまま綺麗に、巨木のような尾を切断し切ってみせた。

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