第230話 15歳のイングリス・神竜と老王(元)3
そして――
「うん、いいわよ――! 可愛い可愛い、ぴったりだわ! ほんとクリスは何着せても似合うから、作り甲斐があるわよね~♪」
目の下にちょっと隈を作ったラフィニアが、手鏡でイングリスの姿を映してくれる。
その中に映るイングリス自身は、巫女衣装の凛とした厳かさを身に纏いながらも、胸元や肩口の少し多めに肌の見える部分からは、それと正反対の艶めかしさも醸し出している。一言でいうと、魅力的だ。
可能ならもっと大きな姿見で、一人でゆっくり自分の姿を堪能したいものだ。
「本当ですね――肌も凄く綺麗だし、胸も大きくて……憧れちゃいます。いいなぁ」
ラフィニアと同じように目の下に隈を作ったプラムも、目を輝かせていた。
「せっかくだから触り心地も確かめとけば? ぷにぷにして気持ちいいのよ、これが」
「こ、こら、ラニ……! 当たり前に人の胸を触らないで――!」
「いいじゃない、服作ってあげたんだから。そのお礼は体で払ってもらうわよ?」
「う……!?」
「ほらほら、プラム。遠慮せずに触っちゃって、いいからいいから」
「じゃ、じゃあせっかくだから……うわぁすごい、こんな感じなんだ――本当にぷにぷにですね……」
「うぅ……も、もういいでしょ? 恥ずかしいからこれで終わりに――」
「リーゼロッテもせっかくだからどう? 今なら触り放題よ」
ここは機甲親鳥の甲板上に張った野営用のテントの中だ。
イングリス、ラフィニア、プラムの三人だけではなく、レオーネとリーゼロッテも一緒に五人で使っていた。
ラティやルーイン、それに他のアルカードの騎士や、リックレアの生き残りの住民達も、それぞれにテントで休んでいた。
機甲親鳥の円形で広い船体と甲板は、こうして多人数が安全な空中で休む事が出来るように、という設計思想でそうなっている。
数十人規模までの部隊行動における、移動拠点の役割である。
それはそうと、ラフィニアに誘われたリーゼロッテはごほんと一つ咳払いをする。
「は、はしたないですわよ。感心できませんわ」
さすがリーゼロッテは生真面目で品行方正なお嬢様だ。
まあ、この場で一番はしたない人も、れっきとしたビルフォード侯爵家のお嬢様なのだが。
ともかく助かる。これで話の流れも変わるはず――
「ですがまあ、どうしてもというのであれば……自分にないものを知っておくのは勉強になりますわ」
「リーゼロッテまで……!」
ラフィニアとプラムは細身で、胸の方の発育はあまりよろしくはない。
が、リーゼロッテは無くはない、平均的だ。それでも実は興味はあったらしい。
「じゃあどうしてもどうしても♪ ほら来なさいよ、たぷんたぷんよ」
「うわぁ――これはかなり重いですわね。すごいですわ――」
こうなったらもう、頼れるのは一人しかいない。
「レオーネ、そろそろ助けて……!」
「あはは……が、頑張ってね――」
レオーネは自分に被害が及ばないように、テントの隅っこの方に避難して、自分の胸を腕で隠すように防御態勢を取っていた。
次に自分に矛先が向いてきそうな事を、いち早く察知しているのだ。
「レオーネ……! そんな薄情だよ――!」
「ほ、ほらリンちゃんはこっちで引き受けてるから……これで許して?」
確かにレオーネの胸元にはリンちゃんが陣取っているので、ある意味リンちゃんは引き受けてくれているとも取れる。
本来ならラフィニア達にリンちゃんまで加わってきても可笑しくはない。
「ほらほら、よそ見してると、もっと揉みまくっちゃうわよ~♪」
「ひゃあっ……!? そ、そんなヘンな触り方――! も、もういいでしょ……!? 早くあの竜の所のいかないと……!」
「んーまあそうね。そろそろいいかな? 十分クリスのもちもちを堪能したし……」
「はい。凄かったです、やっぱり羨ましいですね」
「いい勉強になりましたわ……」
ラフィニアがそう言ってくれたので、ようやくイングリスは三人からの攻撃から解放される。
「ふう――やっと終わった……じゃあ、お遊びはこれくらいにして、今からあの竜の所に行ってみるね? ラニとプラムは疲れただろうから、休んでてくれていいよ?」
「いやあたしも行くわよ。今から竜の美味しい肉を採って食べるんでしょ? 寝過ごして食べられないなんて嫌だし!」
「私も出来る事があればお手伝いしたいです――! お兄ちゃん達に食料を奪われて困っている人達を助けるために、少しでも何かしたいから……!」
「うん、じゃあ一緒に行こう! いいわよね、クリス!」
「そうだね。二人にお願いしてみたい事もあったし――」
「当然、私達も手伝うわよ」
「ですわね、皆で参りましょう」
イングリス達はテントを出て機甲鳥に分乗し、神竜の尾が突き出したリックレアの跡地へと降りる事にした。
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