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第208話 15歳のイングリス・悪の天恵武姫13

「はぁ……お肉が食べたい……」

「そういう事口に出さないでよ、クリス。余計辛いから――」

「うん……そうだね」

「それにしても、出て来て欲しい時に出てこないと言えば血鉄鎖旅団もそうよね。天上人(ハイランダー)がこんなに無茶苦茶やってるんだから、ここに駆け付けて来てみんなやっつけちゃえばいいのに……! セイリーン様を襲ったり、カイラルの城を襲ってる場合じゃないわよね――!」


 言いながら、むしゃむしゃと雪を口に運んでいる。


「……そりゃあ、活動範囲がカーラリアの国内だけなのかもしれないけど、あんな大きな飛空戦艦だって持ってたし、ここまで来れないわけが無いと思わない?」

「……うん。来れるだろうね。来ようと思ったら」

「それをやらないで、何のための反天上領(ハイランド)組織なのって感じよ!」

「わたし達もここに来るまでこんな状況だって言うのは知らなかったから、気付くのが遅れてる可能性はあるけど――」


 だが、イングリス達よりも、血鉄鎖旅団の方が情報網は広いはずではある。

 こちらより先に動いていても何ら不思議ではない。

 しかし、アルカードに入ってからと言うもの、血鉄鎖旅団の気配は全く感じられない。


「でも多分、こっちには手を出してこないんじゃないかな?」

「……どうして?」

「今まで見て来た血鉄鎖旅団の動きを見てると……ね。そんな気がするだけだよ」


 正確には――血鉄鎖旅団の動きの結果、その後何が起きたか。

 反天上領(ハイランド)を掲げ、事実そのように、天上人(ハイランダー)に対して敵対的な動きを見せているが――

 彼等の動きの後の、状況の変化。人の立場の変化。そう言ったものを見ていると、ある法則がある気がしなくもなかった。

 地上に害を及ぼす天上人(ハイランダー)を攻撃するのは確かだが、決して手あたり次第というわけではないように思えるのだ。


 それは――あの黒仮面の正体が、何者かと言う事にも繋がるかも知れない。

 ただ、完全に可能性の話。推測の域を出ないし、下手すれば邪推になる。

 だからまだ、詳しく語るのは憚られる。


 今回の件で血鉄鎖旅団がどう動くか――もし姿を見せないのならば、イングリスの推測もより可能性が高くなってくるだろう。


「それクリスの願望? 悪い天上人(ハイランダー)は自分が戦いたいからって?」

「いや、わたしは血鉄鎖旅団が乱入してくるなら歓迎だよ? 戦う相手が増えるのはいい事だからね? 前に王宮に血鉄鎖旅団が攻めて来た時とか、楽しかったでしょ?」

「楽しくない楽しくない……! 楽しんでたのはクリスだけだから」

「……楽しんだ方がいいと思うんだけどなあ。みんなも戦いそのものを楽しむようになれば、世界はもっと平和になるよ?」

「ええ……!? どうしてよ、おかしいでしょそれ」

「おかしくないよ。戦いそのものを楽しむ人は戦ってるだけで満足できるから、考え方の違いなんて気にならなくなるんだよ。だから戦いを自分の利益とか、主義主張を押し通すためとか、つまり問題解決の手段にはしないの。そうすると少なくとも人間同士は今より平和になるでしょ?」


 前世を人々を導く王として、そして今を武を極めんとする一介の従騎士の少女として、両方の立場を経験すると、そのようにも思えなくもない。


 ぶにっ!


 しかしラフィニアのお気には召さなかったようで、ほっぺたを引っ張られる。


「ふ・ざ・け・て・な・い・でっ! 真面目に考えなさいよっ!」

「ひょえっ!? ふりゃへへにゃにゃひょ。みゃりゃめにゅきゃきゃりゃへりゃ――」

「いーやふざけてるっ! それって皆がクリスみたいになるって事でしょ? クリスが増えていいわけないじゃない、今だってあたしがちゃんと見てるからまだ許されてるだけなんだし――クリスが増えたら何人も面倒見なきゃいけないから、あたしが大変……!」

「ふひゅひゅひゅひゅ……」

「ん? 何、どうしたのよ?」

「じゃあ、大変だけどわたしが二人に増えたらよろしくね? 増えないとも言い切れないから――」

「えぇ……!? な、何でよ――?」

「このままアルカードの王都に行けば、イーベル様が残した研究設備が残ってるかもしれないから――イアンさんの体を沢山作ったやつね? それが使えそうなら、わたしの分身も作ってみるつもりだから」

「な……!? ちょっと、それが王都に行きたい本当の目的だったの!?」

「それだけじゃないけどね、色々な状況を見て総合的に判断ってやつ?」


 イングリスがもう一人増えるなら、そのもう一人の自分はきっと自分の考えに賛同し、共に腕を磨き続けて成長してくれる、最高の手合わせの相手になってくれるはず。

 もう強い相手を求めて探し回る必要は――無くなる事は無く、自分の成長のためには色々な相手をこれからも求め続けるが、それでも相手がいなくて退屈する、と言う事は無くなるのだ。

 人生は短い。戦う相手が見つからず、腕を夜鳴きさせる時間は惜しい。

 それを埋めてくれる相手は、それは絶対に有意義であり必須だろう。


「それは、ダメね――絶対先にリックレアの監獄を開放しに行かなきゃ……!」

「でもそれはそれで、色々――」


 と、イングリスが応じようとした時――


「あああぁぁぁぁぁぁっ!?」


 遠くから、悲鳴が響いて来た。

ここまで読んで下さりありがとうございます!


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