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第187話 15歳のイングリス・ふたりの主演女優40

「な、何なのあれ……!? 人の体が、機甲鳥(フライギア)の中身みたいに――!」


 あれでは痛みを感じないわけだ。血肉が通っていないのだから。

 魔素(マナ)の流れが不自然だと、イングリスに見抜かれるのも分かる。

 明らかに、自然な人間の体ではなくなってしまっているのだから。


 あれも天上領(ハイランド)の技術なのだろうが、初めて見るものだ。

 魔印武具(アーティファクト)も持たずに、ラフィニアに一太刀を浴びせるような運動能力を発揮していたのも分かる。

 人体そのものが機械に置き換わり、常人を超える力を発揮しているのだ。


 だが――魔印武具(アーティファクト)は有難い力だと思うが、こんな状態になってまで得る力が、有難いもののようには、ラフィニアには思えなかった。

 こんなになってまで、力を得なければならないものなのだろうか?

 セオドア特使なら、きっとこんな技術は使わないし、使わせないだろう。

 一体誰がこんなことを――


「そうだ。これが我等に、大戦将(アークロード)イーベルが下賜して下された力――」


 それを言ったのは、少し離れて戦況を見つめるディーゴーだ。

 冷静に、冷淡に。淡々とした口調だ。


「イーベル……!? あの性格最悪な子供……!」


 ラフィニアの見た天上人(ハイランダー)の中でも、一、二を争いそうな酷い性格をしていた少年だ。

 あの天上人(ハイランダー)ならやりかねない。地上の人間の事など何とも思っていないのだから。


「だが、力無き無印者であっても、力を得られる。痛みも感じず、損傷した体は部品を取り換えればいい。理想的な兵士だ」

「どこが! そんなの、ゴーレムか何かと変わらないわ!」


 レオーネがディーゴーに反論する。


「いや。体は別のものになっても、変わらぬ意思がある。意思こそ人の力の源――それさえ失われなければいい」

「ならばそのご自慢の体、破壊して差し上げますっ!」


 リーゼロッテは奇蹟(ギフト)の力で背に純白の翼を出現させると、高速で空を駆けディーゴーに斬り込む。

 この翼のおかげで、三人の中ではリーゼロッテが一番機動性が高い。

 逆に光の矢を無数にばら撒く事の出来るラフィニアや、大剣の刀身を巨大化して攻撃を行えるレオーネに比べ、攻撃手段は本体の斧槍(ハルバード)による直接攻撃のみのため、殲滅力や攻撃力は低い。


 その特性を最大限に活かすのは、最前線の囮役、攪乱役だ。

 今は相手の一番強い所――つまりディーゴーを抑えにかかったのだ。


 一人で倒せはしないまでも、自らも倒されずに戦線を維持すれば、味方が戦況を有利にするのを待てる。

 この場合は、リーゼロッテがディーゴーを抑えているうちに、残り二人をラフィニアとレオーネが各個撃破。

 そして三人でディーゴーを叩く――という流れを作ろうとしている。


 その狙いは、ラフィニアにも良く分かる。

 ならばその狙いに乗る――! まずは、この目の前の暗殺者を――


「ウオォォォォッ!」


 膝を撃たれても肩を貫かれても、動きに衰えを見せずに突っ込んでくる。

 間合いを詰められ過ぎるのは、良くない。弓を引き絞る間が取れなくなる。

 ラフィニアは相手と同じ速さで跳び退いて、距離を維持しようと動く。


「加速ッ!」


 しかし、その途中でグンと相手の速度が上がる。

 背や脹脛の部分からせり出した管が魔印武具(アーティファクト)が生むような真っ赤な炎を噴き、それが動きに加速をつけたのだ。


「――!」


 追いつかれる! いや、だったら逆に――!

 ラフィニアは下がるのをやめ、自らも前に踏み出す。


 相手は刃を構えたままの姿勢で、猛然と突進してくる。


「やああぁぁぁっ!」


 衝突の寸前で地を蹴って、更に暗殺者の肩を踏み台にし、上へと飛び上がる。

 あの加速の勢いは凄いが、反面姿勢の制御は難しくなり、直進のみになるため動きの内容は単調になる。

 ――だから、踏み台にできると判断したのだ。


 相手の突進の勢いも合わさり、ラフィニアの体はかなりの高さまで舞い上がっていた。

 空中で、光の矢を放つ間を十分取れる程に――


「――これでも、食らいなさいっ!」


 今度は連射ではなく、力を貯めて強く太い光の矢を形成し――そして放つ。


「いっけええぇぇぇぇっ!」


 太い光の矢は暗殺者の膝のあたりに再び突き刺さり――

 今度はその機械の足の膝から下を、体から千切り飛ばした。


「ぬうぅぅぅぅっ!?」

「悪いわね……! 動きは速かったけど、単調だったわ!」


 着地するとさらにもう一射。

 逆の足が千切れ飛び、立てなくなった暗殺者は地面に転がる。


 その直後に――


 ギイイイィィィィンッ!


 鉄を擦るような甲高い音が響く。

 音のしたほうに視線を向けると、レオーネがもう一人のディーゴーの部下を胴斬りにしていた。

 どさりと重い音を立てて、上下に分かれた暗殺者の体が床に転がる。


「レオーネ、ナイスよ!」

「ええ――! やっぱりこっちも一緒ね――」


 レオーネは床に転がった暗殺者に視線を向けて、言う。

 体が切断されても、一滴の血も流れていない。


「うう……強い――!」

「くそ……! このままでは……!」


 それ所かラフィニアが撃破した暗殺者の方も、下半身側は動かなくなっているが、上半身側はまだ健在で、話す事も出来る様子だ。


「……流石は大国カーラリアの騎士という事か――こんな少女が、見事なものだ」


 ディーゴーが冷静に、そう述べる。


「次はあなたの番よ!」

「ええ……!」

「逃がしませんわ!」


 これで三対一になった。

 ディーゴーが他の者より多少強かったとしても、十分に倒すか捕らえる事は出来る。

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