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第182話 15歳のイングリス・ふたりの主演女優35

「な、何言ってんだよイングリス……!? 大変な事だぞ!?」

「そ、そうですよ――! 何を考えているんですか……!?」

「何をって? キスシーンしなくて済んで良かったなって――」

「おいおいおい……! そんな事どうでもいいだろ!?」

「そ、それはそれで大事かもですけど、もっと大変な事が起きてますよ、イングリスちゃん……! は、早く止めないと……!」

「うん、それは大丈夫だよ。ラニ達が防いでくれるから」

「えぇっ……!? イングリス、お前こうなるって分かってたのか……!?」

「す、凄いです……! 私は何も――」

「可能性があるっていうだけだったけど――ね」


 昨夜、アリーナを送り届けた際、ディーゴーという男と話すイアンを見かけた。

 その内容は穏やかでは無かったし、ラティも国を出てワイズマル劇団に参加しているイアンの行動に違和感を感じていたようだ。

 イアンの性格ならば、領地が滅ぼされて、アルカードの王都にまで大きな被害が出たという状況でそこを離れるのは考え辛く、残って復興に力を尽くすはずだと。

 何かそうせざるを得ないような事情を、イアンは隠している――という事になる。


 それに――イアンの性格や行動の違和感は、知り合ったばかりのイングリスには分からないが、別の明かな違和感はイングリスも感じていた。


 それはイアンの魔素(マナ)だ。

 最近はユアの影響で周囲の魔素(マナ)を探る事に凝っていたのだが、イアンの持つ魔素(マナ)の流れは明らかに常人のそれでは無かったのだ。

 普通は、何もしていないなら魔素(マナ)は全身を覆うようにゆっくりと流れているものだ。強弱などの性質や波長の細かい差異はあるが、基本的には皆そうだ。

 それが人の体だ、と言い換える事も出来るだろう。


 それがイアンは、胸の心臓があるあたりの一点で、全ての魔素(マナ)が集中しているという異様ぶりだった。

 凡そ常人ではなく、何か隠しているのは明らかで、それにイアンと会っていたディーゴーという男も同じように魔素(マナ)の面で異相だった。

 ラティがイアンの行動への違和感を口にした時、無理に詮索せずに、そっとしておいた方がいいと言ったのは、むしろラティが危険に巻き込まれるのを避けるためだった。


 ただ、それだけでイアンを捕まえるわけにはいかないし、ワイズマル劇団の公演を中止するわけにも行かない。

 それに何より、イングリス自身はユアと本気の手合わせをしたかった。

 だから、何かあった時の備えをして本番に臨んだ。

 急遽予定変更して、機甲鳥(フライギア)の操縦をラフィニアからプラムに代わって貰ったり、客席を保護する結界をミリエラ校長に張って貰うようにしたのはそのためである。


 手合わせの流れ上、イングリスとしてはむしろ何かを起こしてくれた方が助かったのは事実で、そこは感謝をしつつ、カーリアス国王の暗殺という企みは止めさせて貰う。


 今頃異変に気付いたラフィニア達が動き出しているだろう。


「気付いていた……んですか? どうして――!?」

魔素(マナ)の流れが――あなたは普通ではありません。なのに、あなたは普通に振舞おうとしていたので、ずっと違和感は感じていました。それに、あなたが会っていたディーゴーという男性もそうです」

「……! そうですか――そんな事まで……」

「見かけたのは完全に、偶然でしたが」


 見かけて疑念はより強まったが、見かけていなくても似たような備えはしただろうとは思う。カーリアス国王が見に来るというのもあるし、何より母セレーナや伯母イリーナにビルフォード侯爵が見に来るのだ。家族のために安全は確保しておきたかった。


「ディーゴー!? ディーゴーってあの、ディーゴー将軍か!?」

「ラティ、知ってるの?」

「アルカードの将軍だよ。ウチの国じゃ、一番強いって有名だった――」

「へえ……」


 それは楽しみだ。後で手合わせできるかもしれない。


「イアン! じゃあお前の家の領地や、王都が虹の王(プリズマー)に襲われたって言うのもウソなのか……!? だったら――!」

「そんな筈がないでしょう……! そうでなければ、こんな事にはなっていません――」


 イアンは自らの服を剥ぎ取り、その体を露にする。


「……!」

「な、何だそれは……!?」

「イ、イアンくん……!?」


 イアンの体は首の部分以外は殆どが人のそれではなく――機甲鳥(フライギア)の中身に詰まっているような機械だった。

 胸の心臓の部分は、その機関部のような輝きを放っている。

 魔素(マナ)が集中しているように感じられたのは、その部分だ。


大戦将(アークロード)のイーベル様が与えて下さった、天上領(ハイランド)の技術です……! 虹色の魔石獣に襲われて――僕は半身を失いました。そんな僕が出来る事は、これしかありませんでした――これなら僕も戦える……! 亡くなった家族や、領民の皆さんや、国のために……!」

「イーベル様が……?」


 その名を久し振りに聞いた。

 彼は先日の王城上空での戦いの中で、武器化した天恵武姫(ハイラル・メナス)を手にした血鉄鎖旅団の黒仮面に討ち取られていたが――

 この国に乗り込んでくる前は、北のアルカードに手を出していた、という事だろう。


「馬鹿言え……! こんな所まで来て、他所の国の国王様を殺そうとして、それが何の国のためになるって言うんだよ!?」

「それが天上領(ハイランド)の意思です……! 魔石獣によってあんな大被害が出た今、国を守る体制は根本的に見直す必要があります……! それは今までより多くの魔印武具(アーティファクト)や、出来る事なら天恵武姫(ハイラル・メナス)をも天上領ハイランドから下賜して頂くという事です……!」


 それは、そうだろう。イアンの言う通りだ。

 地上の国が魔石獣に対し今までより強い対応をしたいのならば、今までより天上領(ハイランド)への依存度を高める他はない。

 魔石獣と戦うには、魔印武具(アーティファクト)が必要だ。

 それは個人の心がけや修練でどうにかなるものではない。

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