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第179話 15歳のイングリス・ふたりの主演女優32

「お……!?」


 ユアは驚いたのか、少し目を見開く。


「む――!?」


 イングリスも驚いた。

 小技とはいえ、こちらが放ったのは霊素(エーテル)だ。

 ユアの光を貫いて突き抜けると思っていたのに、お互いに消滅した。


 やはりこちらの見立て以上に、威力が高い――いい事である。

 それに消滅した事で、こちらの計算が外れるというわけでもない。


「ばきゅんばきゅんばきゅん」


 バシュ! バシュ! バシュウウゥゥゥッ!


 三連射!


「させませんっ!」


 イングリスも三連射で対抗し、お互いの中間で光が弾ける。

 それが目くらましのようにもなり――光とともにユアの姿が消える。


「はあぁぁっ!」


 ――と同時にイングリスも既に動き始めている。

 自分の左斜め後方に、強く踏み込み背中からぶつかるような当て身を――

 放った瞬間、寸分違わずそこにユアの姿が現れる。


 ドゴオオォォッ!


「ぐぼあ」


 猛烈な勢いで吹き飛ぶユアの体。床に激突すると、そのまま一度大きく跳ねた。


「よし……!」


 イングリスは一つ頷く。

 当初の狙い通り、目を開けたまま魔素(マナ)の動きを察知することが出来た。

 初撃を貰ってしまったのは、ユアの放った光線によって、近くの魔素(マナ)の動きが乱されて紛れてしまったからだ。


 今回は霊素穿(エーテルピアス)によって遠くで光線を相殺したため、イングリスの間近の魔素(マナ)の動きは乱されずに済んでいる。

 霊素穿(エーテルピアス)で迎撃したのが肝で、こちらからは霊素(エーテル)を放ったものの、魔素(マナ)とは別物であるため、ユアの動きの痕跡である僅かな魔素(マナ)の流れをかき消さずに済んだのだ。

 だから、反応できた。目を開いたままでそれを行えた事は、確かな進歩の証だろう。その点では、満足である。


 しかしその事と、勝負の結果とは別。

 床にぶつかって大きく跳ねたユアの体が、そのままふっと掻き消えた。


「――!」


 間近に魔素(マナ)の動きは感じない――

 しかし、視界の右端にふっと歪んだ影が。指鉄砲の構えをしたユアが、そこに出現した。

 単純な距離としては、先ほど向き合っていた時よりも近い。

 ちょうど霊素穿(エーテルピアス)が弾けた中間位置くらいの距離だ。

 遠距離の間合いを半分に詰めた、という事になる。


 バシュウウゥゥゥッ!


 その位置から、現れざまに光線が放たれる。


「そこっ!」


 ビシュウウゥゥゥッ!


 即反応し、霊素穿(エーテルピアス)で迎撃。

 しかし――


「しまった……!?」


 迎撃した距離が、近過ぎるのだ。

 弾け散る魔素(マナ)の動きの余波を感じる。感じてしまった。


 という事はつまり、ユアの動きが隠されてしまうという事だ。

 先程より近くから撃たれたため、同じタイミングで迎撃してもこうなってしまった。


 となれば次のユアの踏み込みを、イングリスは読み切れない――


「はっ!」


 それが分かった瞬間、イングリスは床を蹴って真上に跳躍した。

 ユアがどこに現れるか分からないが、緊急避難だ。

 上から広い視野を確保して、ユアの次の動きを追う――

 はずだったのだが――


「いらっしゃい」


 頭上から、声。


「……!?」


 咄嗟に振り向こうとして、蹴りを構えるユアの姿が一瞬だけ視界の端に映った。


 どごおおぉぉっ!


 物凄い衝撃に叩き落されて、床が一気に目の前に迫る。


「くうっ!」


 四つん這いのようになって何とか堪え、即座に手足を使って飛び退く。


「やりますね――! さすがです先輩っ!」


 ぼーっとしているように見えて、実に巧みな動きだ。

 光線が迎撃されても、その余波がイングリスの魔素(マナ)への感知を乱す絶妙な位置から撃って来たのだ。

 ユアには何が起こって、何故攻撃がイングリスに読まれたのかがちゃんと分かっているのだ。

 分かっていて、もう次には対応した動きを見せてくる。センス抜群だ。


「さらにばっきゅん」


 また近い位置に現れたユアが指先から光線を放つ。

 この位置では、霊素穿(エーテルピアス)での迎撃は無意味。

 弾けた余波で魔素(マナ)が読み切れない。

 かと言って、迎撃をしなくても、突き進んでくる光線は周囲の魔素(マナ)の流れを乱す。

 どちらにせよ、続くユアの消える踏み込みは、イングリスには見切れない。

 ユアにとっては必殺の間合いだ。


 もしどんな手を使ってでも攻撃を防ごうと思えば、霊素殻(エーテルシェル)を使ってしまえば手っ取り早い。が、そんな無粋をするつもりもない。

 このまま、この凌ぎ合いを制してこそだ――

 絶対的な手段を使って楽に勝負に勝っても、自身の成長に繋がらない。


 そして――こちらにもまだ打つ手がある……!


「こちらから、踏み込みますっ!」


 イングリスは身を低くし、光線に真っ向から突っ込んだ。

 顔の真横を光線が掠めるが、速さが命だ。

 ユアが発射後に動き出す前に、こちらから踏み込んで攻撃するのだ。


 近い間合いではあの光線が魔素(マナ)の動きを乱すのを止められないが――

 その分、踏み込んで仕掛けるのも容易だ。

 間合いの取り方一つによって、戦いの様相は様々に変わる。

 これ程の試行錯誤を要求される相手――面白い!


「はああぁぁぁっ!」

「こうなったら殴り倒す――」


 ドゴオオォォォォンッ!


 真っ向衝突したイングリスの拳とユアの拳が、恐ろしいまでの衝撃音を放つ。

 正面からのぶつかり合いは、突進の勢いもあってかわずかにイングリスが圧した。

 ユアが一歩二歩と、たたらを踏んで後ろに下がる。


「まだまだっ!」


 ここは攻め時――! この密着した間合いなら光線を撃つ隙は作らせない。


 イングリスは更に一歩踏み出し、回し蹴りを放つ。

 ユアは腕で防ぐがそれが弾かれ――そこでその姿がふっと歪む


「逃がしませんっ!」


 姿を消す動きをしても、魔素(マナ)の動きを感じる事が出来る。

 右に四歩、突進して肘打ち!

 寸分違わずその軌道にユアが現れ、肘が横腹に突き刺さる。


「ぐふう。痛い――」


 ちっとも痛そうではなくそう漏らして、ユアが少し蹲る。

 初めて有効打になっただろうか――?


「力負け……? いや、まだまだ――」


 ユアの瞳が、淡い虹色の輝きを放ったように見えた――

ここまで読んで下さりありがとうございます!


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