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第157話 15歳のイングリス・ふたりの主演女優10

「レダスさん……!?」

「ははっ! イングリス殿――ご機嫌麗しゅう」


 と、レダスはイングリスに丁寧に礼をした。


「に、兄さん――何故ここにいるんだ? また僕の事を心配して……!? それは必要ないから、任務に戻ってくれ」


 シルヴァは若干迷惑そうな顔をする。


「いや、そうではない。兄さんは任務としてここにいるぞ。シルヴァ、お前ではなくイングリス殿のご様子を見させて頂くためにな」

「イングリス君を……? 一体何故?」

「うむ。イングリス殿は国王陛下に、国の危機の際には必ず駆け付けると約束して下さった。ゆえに有事に備え、即応できる連絡体制を作っておかねば。と、言うわけでイングリス殿、時折こうして私や他の近衛騎士団の者が参りますので、よろしくお願いします」

「は、はぁ――」


 少々面倒な話ではあるが、本当に何かあったら呼んでくれそうなのは歓迎したい。

 国の危機だというような事態の中心地には、必ずいい戦いが待っているだろう。


「ですが、あまりずっと見られているの困りますので、節度は守ってください」

「もちろんですとも! ご迷惑になるようなことは致しません!」

「いいけど、覗きとかしちゃダメですよ!」


 と、これはラフィニアが言った。


「いやいや滅相もない! それに、イングリス殿程のお方であれば気配を察知されるでしょうから、そのようなことは不可能かと」

「そんな事ないですよ? クリスってば鏡を前にしたら夢中になるから、その時は隙だらけだし――」

「ラニ……! わざわざそんな事――」

「ほぉう……! なるほど、鏡の前に立つイングリス殿は無防備……と。これはこれは――」

「兄さん、よく事情が分からない。どうしてイングリス君に、そんな――」

「うむ。先日の事件の際、イングリス殿には国王陛下も我々も、大いに助けて頂いてな。ご活躍を痛く気に入られた国王陛下は、イングリス殿を近衛騎士団長お据えになろうとしたのだ」

「「「「ええええぇぇぇっ!? 近衛騎士団長っ!?」」」」


 悲鳴に近いような、驚きの声が上がる。


「イ、イングリスが近衛騎士団長……!? す、すごい出世だわ――」

「ぜ、前代未聞の事ですわよね……ですが――」

「実力的には、適任……? かも知れないが――」

「が――様々な影響を鑑みて、お受け頂けぬと断られてな」

「「「「断った!?」」」」


 再び驚きの声。


「しかし、有事の際はお力をお貸し下さるとお約束頂いた。だから、そのための連絡体制だ」

「な、何て事を……それでいいのか、イングリス君は……! いや、僕としては兄さんが降格にならないのはありがたんだが――」

「フッ。小さいぞ、シルヴァ! イングリス殿のずば抜けた戦闘能力に、冷静な頭脳、そして端麗なる容姿! 全てにおいて私など比較にならんわっ! 冷静に考えて、私はイングリス殿にお仕えしたいっ! 気が変わったら、いつでも近衛騎士団長はお譲りいたしますぞっ!」

「い、いえ結構です」

「ならば時折こうして参上させて頂く所存ッ! これはこれで、あなたのお姿を見、声を聴き、日々の疲れも吹き飛ぶかのようでありますっ!」

「は、はあ……」

「我が弟シルヴァのこと以外で、こんなにも夢中になれるのは久しぶりでありますッ! まるで青春の頃の気持ちを取り戻したかのような……!」

「――ある意味助かるよ、イングリス君」

「どういう事ですか、シルヴァ先輩?」

「兄さんは僕に過保護だからな。君に注意が向けば、少しは自由になれるという事さ」

「…………」


 まあ確かに客観的に見て自分でも思うが、イングリスの容姿は抜群で、絶世の美女と言っても過言ではない。

 戦闘能力も近衛騎士団の面々を大きく上回るだろう。少なくとも、イングリスが見た事のある騎士達と比べれば。


 だから、こういう熱狂的な者が現れるのも分からなくはない。

 分からなくはないが――

 それは理屈であって、実際に体験してみるとあまり嬉しくない。


「し、しかし騎士団長のお役目をお断りになるなんて、勿体ない事をなさいますわ――これ以上ない名誉ですのに……」

「で、でもイングリスだから――イングリスなら、そう言うかもって思うわね……」

「ちょ、ちょっと! ちょっとイングリスさん! いいですか……!?」


 ミリエラ校長が手招きしている。


「はい」


 近寄ると、イングリスにだけ聞こえるように耳打ちしてくる。


「ちょ、ちょっと教えて下さい……! どうしてそんな素晴らしいお話を断ったりしたんです……!?」

「それは、話せば長くなりますが――」

「あ。手短でいいですよ、本音をズバッと一言で――大丈夫、何言っても怒ったりしませんから……」

「そうですね。一言で言うなら――」

「ええ、ええ――」

「めんどくさいので嫌です」

「あははは……そ、そうですか――それなら仕方ないですね……」


 と、ミリエラ校長は乾いた笑いを浮かべる。


「か、仮にも騎士を育成するための騎士アカデミーの生徒が、最上級の騎士になるのがめんどくさいって……な、何のためにイングリスさんはここにいるんでしょうね――これはもう哲学ですよ、哲学……」

「ラニの成長を見守りつつ、多くの戦いを経験して自分を高めるためです。そのためにはいい環境かと思います」

「い、いや、ラフィニアさんは一本芯が通っていて、むしろイングリスさんよりしっかりしているような……?」

「ラニを誉めて下さってありがとうございます」

「はぁ……別の事も言ってるんですが、そこは無視なんですね――」

「ええ。わたしは変わる気はありませんので」

「そ、そうですか……」


 そうイングリスがミリエラ校長と話している間に、レダスがワイズマル伯爵と交渉していた。


「と言うわけでワイズマル殿! シルヴァがやらぬと申すならば、私をお使い下され! フフフ、イングリス殿と……ぐふふふふ――」

「却下します!」


 気持ち悪い。嫌だ。

 そもそも誰が相手だろうが嫌だが、余計に駄目だ。


「ぬぅ……!? しかしイングリス殿が仰るならば、了解いたしました! ならばそんな不埒な筋書きなど認めるわけにはいかんッ! ワイズマル殿、脚本を修正なされいッ!」

「おぉ……」


 ひどい変わり身だが、イングリスには有利。

 キスシーンさえ抹消できれば、何の気兼ねも無く賄いを好きなだけ食べる事が出来る。


「なりません! 芸術表現として必要なもので御座います!」


 そこは拘りがあるらしい。ワイズマル伯爵も強硬だった。


「人選につきましてはヒロイン役の意見を参考にいたしましょう――が、筋書きは変わりません!」

「うーん……」


 どうする? 何とか上手く収める方法は無いだろうか――

 イングリスが思案していると、様子を見ているユアの呟きが耳に入った。


「うらやましす――」

「え? どうしてですかユア先輩?」

「だって、好みのイケメンとキスできる――でしょ? いいな」


 ユアにとっては、そう感じるらしい。

 元々モテるために胸を大きくする方法が知りたいと言うような人なので、そういうものなのかも知れない。


「じゃあユア先輩が代わって――あっ……! いや……! ちがう……!」


 急に頭の中に、電撃が走ったかのような感覚。

 妙案だ。これは妙案。

 素晴らしい発想が浮かんだ――!


「そうだ、代わるのではなく――一緒にやる……!」

「?」

「ワイズマル伯爵! 私から人選について、提案があります!」


 イングリスはそう声を弾ませた。

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