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第150話 15歳のイングリス・ふたりの主演女優3

 そして、イングリス達を出迎えたのはレダスだけではなく――


「「「いらっしゃいませ! お待ちしておりました!」」」


 レダスの配下の近衛騎士達だ。

 わらわらと大量にやって来て、深々とイングリス達にお辞儀をするのだった。


「な、何……!? 何か変じゃない……?」

「そ、そうだね――」


 単なる出迎えにしては、数が多過ぎる。

 イングリスとラフィニアをぐるりと取り囲む程の人数である。


「ささ、お二人ともこちらへ。王がお待ちでございますぞ」


 と、レダス自らが先導をしてくれるらしい。

 王を助けた功績があるとはいえ、そこまでしてもらえる程なのだろうか……?


 一体何が――と思いながら、レダスの背中の付いて進む。

 騎士達もそれをぐるりと取り囲んで、付いてくる。

 警護、という事なのだろうか。


「……な、何だか物々しいわね、クリス――」

「うんラニ……一応、気を付けておいた方がいいかも……」


 と、イングリス達は小声で囁き合う。


「え? どういう事……?」

「どこか罠のある所に誘導して、一斉に襲い掛かってくるとか……?」


 たかだが騎士アカデミーの学生に、ここまで厳重な警護を付けるのは異常だ。

 まるで一国のお姫様であるとか、最重要な重鎮であるとか、そんな様相である。


「ええっ……!? あたし達何も悪いことしてな――いとも言い切れないかも……? 前はめちゃくちゃ暴れたもんね、クリスが……」

「わたしのせい……?」

「そりゃあ、天上領(ハイランド)の使者に喧嘩は売るわ、蹴り飛ばすわだし……それに国王陛下の落ちた腕を傷口にぐりぐりしたりとか、色々やったじゃない?」

「あー……」

「しかもあのイーベルって子、最終的に討死したじゃない? やったのはクリスじゃないけど……」

「わたしにも責任がある……かな」

「かもね……? あれで大きなダメージを受けていたせいで――って」


 最終的に天上領(ハイランド)の使者、大戦将(アークロード)のイーベルを討ち取ったのは、イングリスではなく血鉄鎖旅団の首領、黒仮面だ。

 しかし、その前にイングリスがイーベルに大きな打撃を与えていたのも事実。

 イーベル戦死の片棒を担いだといえば、そうかも知れない。


「ま、まあ――そう言おうと思えば、言えるかな……?」


 イーベルは天上領(ハイランド)の二大派閥の一つ、教主連合派らしい。

 そちらはこの国と和解するつもりなどない、との事だったが――


 例えばイーベルが亡くなって方針が変わり、和解する代わりにイーベルの件の責任者を差し出せ、というような話になったとしたら――

 行方の分からない黒仮面よりも、全てをイングリスのせいにして差し出してしまう方が早い。


 カーリアス国王は天上領(ハイランド)に対しては、どんな横暴も受け入れそうな平身低頭ぶりなので、有り得ない話ではないかも知れない。


「それならそれで、ちょっと楽しみではあるけどね……? ふふふっ――」


 イングリスの見た所、カーリアス国王は決して無能ではない。

 だからこそ、いくら近衛騎士団の精鋭とはいえ、このくらいの数でイングリスを捕らえられるとは思わないだろう。


 つまり、何かしらの切り札が用意されていると判断できる。

 それを見てみたくはある。

 ただ、そうなるとごちそうにはありつけないだろうが――


「ちょ、ちょっとやめてよね……! そうなったらあたし達反逆者になっちゃうわよ……!」

「かもね。でも大丈夫だよ、ラニは無関係だってちゃんと言うから」

「そんなのダメよ……! あたし達家族じゃない――! 本当の姉妹みたいなもの――っていうか将来的にそうなる予定だし……」

「いや、わたしはそういうつもりはないけど……」


 イングリスとラフィニアが本当の姉妹になるにはつまり、イングリスがラファエルと――

 流石にそれだけは勘弁して頂きたい。


「とにかく、あたし達はずっと一緒なのが自然でしょ? クリス一人だけなんてダメだから――」


 少々不安になったのか、ラフィニアはイングリスの服の袖をきゅっと掴んだ。

 そんな様子が可愛らしくて、イングリスは目を細める。


「うん、分かってるよ。大丈夫だから」


 と、声を最小にした相談を終えると――

 ふと鼻先に、物凄くいい匂いが漂って来る。


 先日王城にはメイドとして潜入したので、内部構造はある程度把握できている。

 ここは厨房の近くだ。

 つまり――ごちそうが用意されている……!?


「あ……! うわぁ、すっごいいい匂いがする!」


 ラフィニアが思わず声を上げていた。


「ええ、宴の準備は整っておりますぞ! まずは王の話をお聞きになって下さい、その後は盛大なお祝いをいたしましょう!」

「ですが、何のお祝いなのですか?」


 そうイングリスは尋ねる。

 先日の事件では、結果的にカーリアス国王が目指していた教主連合側との和解はできず、また血鉄鎖旅団との交戦によりそれなりの被害も出ている。

 イングリスにとってはいい戦い、いい修行で満足だったが、国として喜ばしいことは何もないはずだ。


 先日の働きを労うために、会食してお褒めの言葉を頂く――くらいは有り得てもいいが、盛大なお祝いと言われると違和感がある。

 いったい何があるのだろう?


「まだ言えませんが、すぐにお分かりになりますよ。お楽しみにしていて下さい」

「ねえねえクリス、何か心配する事なかったんじゃない?」

「そうかも――?」


 レダスの表情は非常に嬉しそうであり、嘘を言っているようにも見えなかった。

 それに、罠に嵌めるつもりなら、わざわざ宴の料理まで用意させなくてもいいだろう。


 しかし何故、祝いの宴が用意されているのかは全く不明なままだ。

 だがそんな事よりも――今はごちそうが現実的になってきたという事実が重要だ。

 正直、喜びを禁じ得ない。


「や、やったわ……! ほんとに嬉しい――!」

「うんラニ、わたしもだよ――」

「ささ、ここが謁見に間にございます。参りましょう」

「「はいっ!」」


 イングリスとラフィニアは期待に胸を躍らせながら、カーリアス国王の待つ謁見の間へと足を踏み入れた。

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― 新着の感想 ―
[一言] なんだろう、息子の嫁に!とかそういうのが頭に浮かんだ。婚約パーティとかそんな感じで
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