表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
117/493

第117話 15歳のイングリス・天恵武姫護衛指令25

「レオーネ、彼等をご存じですの?」


 レオーネは後に続くリーゼロッテに、鋭く警告を発する。


「リーゼロッテ! 気を付けて! あれは血鉄鎖旅団の首領と、敵の天恵武姫(ハイラル・メナス)よ……!」


 リーゼロッテは、聖騎士だったレオンはともかく他の二人を見た事は無いはずだ。

 以前、特使ミュンテーの暗殺騒ぎで彼等が姿を現した時も、ちょうど入れ違いになっていた。


「……! まあ、悪の親玉のお出ましという事ですわね……!」


 黒仮面はリーゼロッテのその台詞に反応した。


「我々にそのつもりは無いがな。何が正義で何が悪かは、その者の立場によって変わるものだ」

「将来この国の騎士になるわたくし達にとっては、あなたは明確な悪党ですわ!」


 リーゼロッテはそう断じて、愛用の斧槍の魔印武具(アーティファクト)を構える。


「フッ。健気なものだ」

「お気になさることはありません。無知であるがゆえに、そう言えるだけの事――」


 言いながら、システィアは黒仮面を庇う位置に進み出た。


 その様子を見ながら、リーゼロッテは思う。


 この黒仮面は、一体何者なのだろうか?

 前にレオーネから、レオンが血鉄鎖旅団の首領かも知れないと話を聞いた事があったのだが、どうやらそれは違うようだ。

 こうして二人が一緒にいる所を見れば、明らかだ。


 レオンのような特級印を持つ聖騎士が首領ならば、自分の組織に天恵武姫(ハイラル・メナス)を抱えていても不思議ではないが――

 聖騎士も天恵武姫(ハイラル・メナス)も従える者の正体とは……?


 何故顔を隠す?

 賛同者を集め、人々を導こうと言うのなら、堂々と顔を出し名を名乗った方がいい。


 ならば出せない理由でもあるのだろうか?

 つまりこれは裏の顔であり、表の顔が別にある――とは考えられないだろうか。

 ではその表の顔は……?


「おいシスティアさんよ。勝手に襲いかかるんじゃねえぞ?」

「そんな事は分かっている!」

「ホントかよ。どうもあんたは俺の知ってる天恵武姫(ハイラル・メナス)の中で、一番血の気が多いからなあ。今夜は戦いに来たんじゃねえんだからな?」


 その二人のやり取りを、レオーネの剣閃が斬り裂いた。


「そちらの都合なんて、私の知った事じゃないわ!」


 刀身を伸ばした黒い大剣の斬撃が、頭上からレオンに襲い掛かる。


 ガイィィィンッ!


 甲高い音に、舞い散る火花。

 レオンの鉄手甲の魔印武具(アーティファクト)がレオーネの剣を受け止めていた。


「レオーネ……っ! 止めろ、今はこんな事してる場合じゃねえんだ……!」


 レオンがそう制止をしても、興奮状態にあるレオーネは止まらない。


「こんな事ですって……!? 私には……! 私にはこれ以上重要な事なんてないっ!」


 レオーネは一度剣を元の長さに引き戻すと、離れた間合いのまま突きを繰り出す。


 全力で突き出す剣速と、魔印武具(アーティファクト)が高速で伸びる速さ。

 二つの速さが合わさって、レオンの見立てを超える技の冴えと化す。


 レオーネの渾身の突きは、身をかわそうとしたレオンの肩口を浅くだが掠めていた。


「……! なるほど、成長してるな……!」

「逃がさないっ!」


 追撃の薙ぎ払いは、惜しくも飛び退いて回避されてしまう。

 しかもレオンの身代わりのように雷の獣がその場に残り、レオーネの剣はそれを叩いてしまう。即座に雷の獣は爆発をし、その衝撃で刀身が大きく弾かれてしまう。


「くっ……!」

「レオーネ! 頼むから話をだな……!」

「聞く耳持ちません! 国も家族も故郷も志も捨てた人の話なんて……っ!」


 レオーネは体勢を立て直し、再びレオンに斬りかかって行く。


「ふん。私より血の気の多い者がいるな」

「仕方あるまい。血を分けた兄妹の事だ、我々には立ち入れん。少々様子を見よう」


 呆れた様子のシスティアに、見守る様子の黒仮面。


「アールシア家のご息女も、手出しは控えて頂けまいか。加勢をするというのであれば、こちらも同志レオンを守るために動かざるを得ん」

「……ええ」


 とだけ短く応じる。

 レオーネのあの剣幕では、リーゼロッテとしても手出しをしづらいのは確かだ。


 しかし、黒仮面はどうやらリーゼロッテの事を知っているようだ。

 確かにリーゼロッテはアールシア元宰相の娘ではあるが、まだ騎士アカデミーの一学生であるのに――だ。


 そこまで細かい情報を吸い上げられるほどに、血鉄鎖旅団の協力者、内通者があちこちにいるという事だろうか。

 アールシア家に仕える人々の中にも、あるいは騎士アカデミーの中にも――


 ガキィィィンッ!


 再び舞い散る火花。衝撃音。


 今度はかなり接近した間合いで、レオンがレオーネの剣を鉄手甲で挟むように組み止めていた。


「お父様もお母様ももういない……っ! だけど、残されたアールメンの街の人達のためにも、私はお兄様を許しませんっ!」

「そのアールメンの街が無くなっちまったら、何にもならんだろ……!? 今はそういう事態なんだよ……!」

「え……!?」


 レオーネが眉をひそめた瞬間、黒仮面が口を開く。


「王宮は天上領(ハイランド)の教主連側との関係改善のために、地上の領土を差し出す事を決めたようだ。そしてその対象は――アールメンとシアロトだ」

「「な……!?」」


 黒仮面の言葉に、レオーネもリーゼロッテも衝撃を受ける。

 アールメンはレオーネの故郷、そしてシアロトはリーゼロッテの故郷だったのだ。

ここまで読んで下さりありがとうございます!


『面白かったor面白そう』

『応援してやろう』

『イングリスちゃん!』


などと思われた方は、ぜひ積極的にブックマークや下の評価欄(☆が並んでいる所)からの評価をお願い致します。


皆さんに少しずつ取って頂いた手間が、作者にとって、とても大きな励みになります!


ぜひよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] まぁ、全然驚く衝撃じゃないね。どう見でも血鉄鎖旅団より天上領の方が悪人らしいですから。王宮が結託なら、如何にもやれそうの事ですから。あっ、遂にかぁ、という感じです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ