第五話 二人目の来訪者
しかし、である。
僕は考えた。
そもそもこのブラックボックスとは、胡散臭い。呼び方からして、もう明らかにあれである。
貴方の望みを叶えましょう~代償はそれ相応に、なんて、まるでよく聞く悪魔の囁きではないだろうか。その代償とやらが、果たして納得できるものかもわからない。大抵、物語だとろくな結果にならないと相場が決まっている。
例えば。
まあ、あくまで例えばですよ。
このベアトリーチェという少女は、かなり可愛い。健全(?)な青少年としては、そっち方面にも興味が行く。
『へい、セニョリータ。ちょいとその魅惑のおっぱい突かせてくれません?』
『あはは、いいですよ~』
――代償は、貴方の残りの人生全部ですね。
割が合わな過ぎる。
色々な意味で極論だけど、そういう可能性だってないわけじゃない。
そもそも、言っている内容自体にも微妙な違和感があった。願いが一つとか言って、箱を奪い合えば話は別とか。
大抵の漫画やラノベだと、そういったところに致命的な事実が隠れていたりする。
「ん~」
僕は頭をひねった。
そんな僕を見て、彼女はにこにこと微笑んでいる。
見透かすような、値踏みするような視線。あまりいい気分とは言えなかった。更に言えば、周囲は四方が白い壁。窓もない。端の方に小さなテーブルと、冷蔵庫みたいな四角い箱。あとは、あまりも殺風景。
あまり広くもなく、お世辞にも居心地がいいとは言えない。
そうこうするうちに、突然。
僕の背後で、何かが光った。
「え?」
周囲がぐにゃりと歪んだような、奇妙な感覚。
光が収まると、そこには――
見覚えのあるひとりの少女が、座り込んでいた。
来訪者、二人目である。
箱の言葉を思い出した。
『貴方の事を誰も知らない世界へとご案内します』
おいおい、いきなり話が違うじゃないの。
二人目の来訪者は、
「あれ、カケル?」
見知った幼馴染の少女だったのだ。
ちなみに、その後も続々と来訪者は続いた。
「では、部屋を広くしましょうか」
手狭になったなと思った矢先、ベアトリーチェはそう言った。何か呪文のようなものを唱えて、手をかざす。光り輝く魔法陣が現れて、部屋が揺れた。
そうこうするうちに、言葉通りに部屋が広がっていく。
大きなテーブルを囲む、総勢五名の来訪者。
プラス、ベアトリーチェ。
さてさて、この先どうなるのだろうか。
それは、僕にはわからなかった。