2
「お誕生日おめでとうカンナ」
「「「「「「おめでとうカンナ(おねえちゃん)!!」」」」」」
千尋の付き添いで出掛けていたカンナが扉を開けた瞬間に聞こえたクラッカーの音とこの言葉に目を瞬かせたカンナに後ろから続けて入った千尋も照れ臭そうにおめでとうとカンナに言えばカンナはとても幸せそうに微笑んだ。
「ありがとうお義母さん、みんな」
わいわい騒ぐ中すっかり自分の誕生日を忘れていたカンナはこのサプライズにひどく驚きそして幸せを感じていた。
料理が得意な美咲の手料理はカンナの好きなものばかりで勿論美味しくてついおかわりをしてしまい、歌を唄うのがが好きな空と光の二人からはカンナが大好きな曲を贈られた。
パティシエを目指す伊織はイチゴたっぷりのショートケーキを作ってくれ、読書仲間の鈴は照れ臭そうに手作りの栞を手渡してくれた。
いつもはカンナに意地悪な和成は赤く染めた顔を背けながら色とりどりの可愛らしい花束を、千尋は満面の笑みで綺麗な薔薇をモチーフにした髪飾りを贈った。
どれもカンナのことを思って用意してくれたことがわかるものでカンナは心の中が温かい気持ちで満たされていくのを感じていた。
たくさんの美味しい料理とケーキを食べた後、皆で記念写真を撮りその場でプリントアウトし出来た写真を全員に配った。
その後はトランプや特技のお披露目など色々騒いでいたが騒ぎ疲れたのか小さな子から眠気に負けこくりこくりと頭をおよがす姿が目につき始めた。
そこに義母である静流が御開きの合図を出し年長者の和成と千尋が半分夢の中の空と光を起こさないように抱き上げ寝室に連れていく。
美咲と伊織は誕生日会の片付けをしていたが寝室にフラフラとした危なっかしく向かう鈴に2人は苦笑し、伊織が手を引き部屋に案内する。
そんな家族の様子に手伝いをしたそうにそわそわとするカンナを静流が微笑みながらも宥めている。
誕生日くらいは大人しくと言われたがそれでも気になって仕方ない。
美咲がお皿を持っていき戻ってきた伊織と共に仲良くお皿を洗い始めるとその様子にとうとう諦めたカンナを静流が面白そうにクスクスと笑う。
そんな静流に少しふてくされるカンナに静流はまだ少し笑いながら謝った。
「ごめんなさいねカンナ。でも可愛くてつい」
そんな静流に仕方ないなと苦笑し機嫌を治したカンナはあることに気付いた。
じっと自分を見つめてくるカンナにどうしたの?と問いかける静流にカンナは気付いたことで抱いた疑問をぶつけてみた。
「お義母さん、いつも身につけているのがないけど……」
その問いに、あぁと何かを思い出したように軽く手を叩き座っていたソファから立ち上がり近くの引き出しの所まで歩いていく。何かを引き出しから持ち出すといそいそと元の場所に戻ってきた。
なんだろうと見つめていると静流はそれをカンナに見えるように手のひらにのせる。
その正体に気付いたカンナはあれっと首を傾げた。
「(色が違う?ならこれは……)お義母さんのじゃない?」
そう呟いたカンナに静流が目を細めてそれを撫でる。
「いいえ、これは私がいつも身に着けていたものよ」
そう言うとポケットの中から小さな袋を取りだし逆さにするとコロンと何かが出てきた。
見覚えがあるそれは綺麗なアメジスト。
いつもお義母さんが身に付けていたものに填められていた石だ。
少し転がったそれはいつものように光に当たる度にキラキラと美しい姿を見せてくれる。
「……今まで黙っていたけどもうひとつだけあの日貴女が持っていたものがあったの」
あの日……、それはきっと私が拾われた日のことだろう。
じっと手のひらに乗せたアメジストを見つめる彼女はあの日を思い出すように語りだした。