ある洋食屋の風景 メニューNo5 〈ガトーショコラ〉
今回も少し趣向を変えて、シェフの開く料理教室を舞台に描きました。レシピ付きのお得な短編でございます(笑
「みなさん、こんにちは!当店の料理教室にようこそいらっしゃいませ!今日は来週のバレンタインデーにちなんで、チョコレートをたっぶり使った“ガトーショコラ”を作ります!このガトーショコラは、普通に冷やしても、温かくしても美味しくたべられますよ。お菓子作りは大変な様ですが、やってみると意外に簡単です。美味しく出来上がった時はとってもハッピーな気持ちになれますから、是非ともお家で作ってみて下さいね!では、まずはお配りしたお手元のレシピをご覧下さい」
<材料>18センチの型1台分
a セミスイートチョコレート 100g
無塩バター 50g
b 卵黄 3個分
グラニュー糖 30g
c 卵白 3個分
グラニュー糖 30g
薄力粉 35g
<作り方>
aをボールに入れ湯煎で溶かしておく。bも別のボールに入れて湯煎にかけながら白っぽくなるまで掻き立てる。cでメレンゲを作る。
aとbを数回に分けながら良く混ぜ、振るっておいた薄力粉をサックリと合わせる。
更にメレンゲを数回に分けながらサックリと合わせる。
底と側面にクッキングシートを敷いた型に流し、湯煎にかけ160℃のオーブンでゆっくり焼き上げる。時間は約1時間ぐらい。竹串を真ん中に刺して、何も付いてこなければOK!
「レシピをご覧になって大体のイメージがつかめましたでしょうか。それでは、これから私がそのレシピに沿って実演します。質問がありましたらその都度、ご遠慮なくどうぞ」
その洋食屋の料理教室は、最後にその日のメニューを食べながらシェフを交えて皆で談笑するのが恒例で、それもこの料理教室に人気が有る理由の一つだ。
今日は初めて一人の男性参加者が居る。熱心にメモを取りながらシェフの実演をカメラに収めたりしている。年の頃はニ十代の半ばだろうか、やさしそうで穏やかな顔つきの青年だ。
「うちの料理教室に男性が参加してくれて、とても嬉しいですよ!ケーキ作りは初めてですか?」
「ハイ、全くの初心者です。最近は、逆チョコなんてのも有るらしく、2年間付き合っている彼女にバレンタインチョコをせがまれたんですよ。どんなチョコをあげようかとお店をいろいろ見て回ったのですが、決まらずに困りました。たまたま、お宅の料理教室のポスターを見て、これだ!と思い付き、参加してみました!彼女が僕にくれるのは、きっと何処かで買ってくる物でしょうからね」
そして彼は出来上がったばかりの、まだ温かいガトーショコラを口にしながらシェフにある計画を打ち明けた。
「シェフ、実は僕にもこのケーキが美味しく焼けたら、彼女にプロポーズをしようと思っているんですよ!」
シェフは目を細めながらポイントを伝授し、彼の告白に対して更に一言付け加えた。
「上手く焼けても焼けなくても、ケーキを手渡しながら彼女にプロポーズしなよ!大丈夫、君のその気持ちはきっと彼女に伝わる筈だから!」
その翌年から毎年、彼はバレンタインデーが近づくとガトーショコラを「奥さん」の為に焼いてあげるのであった。
ーfinー
*最後まで読んで頂き有り難うございます!このお話はフィクションです。
文中にあるガトーショコラのレシピはとある有名パティシエのお菓子本からの抜粋です。
是非ともお試しあれ!