9話
俺は眠い目を擦りながら、3人に魔法を教えるために目的地に行く。
今日は珍しく遅刻してしまった。
(はぁ~さすがに昨日は本で夜更かししすぎたな・・・)
と思いながら大きな欠伸をひとつして、足早に目的地に急ぐ。
まぁ新たなな魔法も覚えれたので満足はしている。
集合場所に行くとミリスとイリスが居た。
普通ならいるはずのシャーリーが珍しくいない。
そういや、今日は授業がないから一緒に来ていないのか?
「なぁシャーリーは一緒に来ていないのか?」
と2人に問い掛けると、2人は疑問そうな顔を浮かべる。
「今日は一緒に来てないから、1人で来ると思うけど…」
2人はお互いに顔を見合わせて不思議そうな顔をする。
あの真面目なシャーリーが何を言わずに休むはずがない…
何かいやな予感がしてきた。
「ごめん!ちょっと辺りを見てくる!2人は一度、家に帰ってくれ!」
俺はそう言うと昨日本で学んだ亜種魔法の1つである飛行魔法を詠唱する。
ゆっくりと浮き上がって体を前のめりにして、加速する。
「「おにいちゃん!無理はしないでね!」」
とイリスとミリスが大声で言うので、俺はそれに手を振って答える。
~~~シャーリー視点~~~
「ど、どうしよう…ここどこ?」
そういう彼女は森の中で迷子になってしまっていた。
普段なら迷うはずはないが、今日はたまたま1人で村の外である集合場所に行こうとして近道をしようと思って、森に入ったら迷子になってしまった。
彼女はうっそうと生い茂る森の中で今にも泣きそうな気持ちになるが、こういうとき泣いてしまえば、更に混乱してしまうと彼女は分かってるので、ぐっと涙を堪える
彼女は涙を堪えていると、彼女のうしろの茂みが揺れた。
彼女はビクッと体を震わせて、振り返ると茂みから現れたのは鹿だった。
(な、なんだ…鹿か…びっくりしたあ)
と思って彼女をほっと胸をなでおろす。
だが、次の瞬間鹿の首に一本の矢が突き刺さる。
血を吹きながら倒れる鹿を見ながら彼女は暫し呆然としていた。
普通、人が近くにいる状態でその近くの獲物を矢で射るなどは相手が熊や凶暴な生物ではない限り、狩人が射るはずがない。
彼女は矢が飛んできた方向を見ると、そこには木の上から弓を構えるゴブリンの姿があった。ゴブリンもこちらを見てニタァと笑みを浮かべる。
ふと彼女の周りの茂みが揺れる。
辺りを見渡すと、茂みから短剣を持ったゴブリンが現れた。
彼女は今にも震えてへたり込んでしまいそうになる気持ちを抑えて、フリードから学んだ魔法を使う。
火の玉を作ってゴブリン達にぶつける。
何体かは倒したが、ゴブリン達はこちらが魔法を使えると知って少し引いているが、逃がすつもりはないようだ。
彼女の注意が周囲のゴブリンの引き寄せられている間に遠くのほうから一本矢が飛んできて、彼女の足に突き刺さる。
あまりの痛みに彼女は足を押さえながら倒れこむ。
その状況を見たゴブリンはニタァと笑みを浮かべながらゆっくりと近寄ってくる。その光景に思わず涙がこぼれる。
(やだ…やだよ…こんなとこで死ぬなんて…折角フリード君ともっと仲良くなれると思ったのに…誰か…誰か助けて)
「助けて…フリード君!!」
と彼女は半ば泣き叫ぶと、彼女の周りを囲んでいたゴブリン達に火の玉が着弾する。ゴブリンは10匹以上いたのにそのすべてに正確に当てたのだ。
すると上のほうから誰かが降りてくるのが見えた。
それは飛行魔法を使っている、フリードだった。
~~~フリード視点~~~
森の上を飛んでいると、遠くのほうで火が上がるのが見えた。だが現地に着いたが先ほどの火は消えて分からなくなっていた。辺りを見渡していると、突然シャーリーの助けを呼ぶ声が聞こえた。
俺は急いで声のしたほうに駆けつけると、足に矢が刺さったシャーリーがゴブリンに囲まれていた。
俺はとっさに状況を判断し、魔法による視力の強化を行い、火の魔法を使う。
火の魔法を沢山作って、ゴブリンすべてに正確にぶつける。
倒した事を確認する前に降りて、シャーリーに駆け寄る。
矢を抜いて、回復魔法を掛ける。そして視界の端にこちらに向って何かが飛んでくるのを確認する。それは目を凝らすと、矢だった。
(なるほど…隠れてシャーリーを射ったのか…)
俺は心の中ですさまじい憤りを覚えた。
矢の飛んでくる方向に向って障壁魔法を展開して、矢を防ぐ。そして、遠視で射手の位置を確認すると、火の魔法を使って射手を焼き殺す。
俺はあたりのゴブリンを殲滅したことを確認すると、彼女の回復に専念する。
回復がある程度終わって彼女の傷が消える。
ひとまず安心かな…と思って俺は胸をなでおろすとシャーリーは俺に抱きついて泣いてきた。
「怖かったよ…フリード君」
と彼女は泣きながら俺に抱きついてきた、そんな彼女に少し驚きつつも俺はそっと背中をさすりながら慰める。
「あぁ…だけどもう大丈夫だ」
俺はそう言って彼女を抱きしめて安心させる。
その後は彼女は5分近く泣いていた。
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