57話 手合わせの後。
「あの…『剣聖』って誰のことですか?自分の師匠はベルクリッド・フォールマと言って冒険者のはずなんですけど…」
と尋ねると、意外そうな顔をしてグラッヂさんは答えてくれた。
「そのベルクリッド・フォールマが『剣聖』だ。まぁ…元だがな」
というグラッヂさんの発言に俺は驚きまくっていた。
師匠強いとは思っていたけど…『剣聖』とか聞いてないわ!
心の中で教えてくれなかった師匠に愚痴っていると、グラッヂさんが不思議そうにこちらを見ていたので、慌てて心の愚痴をとめた。
「それにしても今の『剣聖』はベルクリッドの弟子のはずだが…自分の愛剣をこの子に託すというのは…そうか!これが隠し子というやつか!」
と一人納得顔のグラッヂさんになんかそれ違うと思いますなんて突っ込みをいれれるはずがなかったのだ。
というか、持っている剣で弟子を見抜くとか、もしかしてこの人も師匠の知り合いだったりするのかな?
そう思うと、なぜか気になったので聞いてみた。
「あの、グラッヂさんって師匠とどういったご関係ですか?」
「あぁ俺は『元』近衛騎士団団長でな、そういう役職のせいかあいつとはよく関わる機会があってな、酒を飲み交わすような仲だ」
とさらっと言ったが、近衛騎士団団長とか…それでも十分すごいですわ。
ってそんな凄い人に俺は勝ってしまったのか…。
「まぁ、元が着くぐらいだし、今となってはただの老いぼれだがかな…まぁ手合わせしてくれて感謝する」
「あ、はい。こちらこそありがとうございました」
グラッヂさんの剣は早くは無かったが、技術を感じられた。
そして、粘り強さと守りの堅さも…さすがは近衛騎士とも感じられた。
「まぁ、この坊主が犯人ってことは無さそうだな。こいつが犯人なら、あの若造なんて瞬殺だろうしな」
あぁ、やっぱり疑っていたのか…。
「ま、そんなことは鼻からわかりきっておったが、強そうだから挑ませてもらったがな」
と言って、グラッヂさんは大きく笑った。
わかっていたならいいじゃないか!と愚痴りそうになったが、なんだかんだ言って戦闘を楽しんでいた俺が居たので、心の中でもいえなかった。
そして暫くすると、拍手をしながら一人の男が近づいてきた。
「いやぁ。すばらしかった。まさかあのグラッヂに勝つとはね…さすがは『剣聖』の弟子といったところかな」
と話しかけてきたのは、30歳ぐらいの男だが、顔が整っておりなかなかのイケメンだった。
「おっと、自己紹介がまだだったね。私の名前はベリオッド・フォン・リューナ。ここの領主をやらせてもらっている」
と自己紹介してきたのはまさかのここの領主だった。
貴族に挨拶されたのだから、返さなければ無礼というものだ。
「お初にお目にかかります。フリード・シーエルです」
と膝を突いて挨拶した。
一応貴族を敵に回すとろくなことがないと師匠から聞いていたので、なるべく上手く立ち回らないと…。
「フリード君か、よろしく。あと父親として、娘を助けてくれて感謝する。そして先ほどの試合は実にすばらしかった」
と大層ご機嫌に喜んでいたので、俺は再度頭を下げる。
「ありがとうございます」
と言うと、領主はひとつ悩んだように頬をぽりぽりと掻くと、俺に一つ提案をしてきた。
「フリード君。もしよければ、お抱え剣士になってみないかい?」
と突然の提案にまた俺は呆然としてしまったのだった。
誤字脱字・・・もうあとがき打つのも疲れた。




