56話 手合わせ
「え?理由を聞いても?」
と聞くと、厳つい騎士はひとつ頷いた後で答える。
「ちょっと確かめたいことがありましてな…手合わせ願おう」
と考えは変わることはないようで真剣に見つめている。
それを隣の若い騎士はどうしたらいいのかわからず、おどおどしている。
ふむ…目の前の騎士もなかなか強そうなので、いい経験にはなるかもしれない。
そう結論づけた俺は一つ頷く。
「わかりました。ではお願いします」
と言うと、厳つい騎士はうむと頷いた後、部屋から出て行った。
つまりついて来いということなのだろう。
俺はついていこうとすると、ちょいちょいとローブを引かれたので振り返ってみると、シィリスが心配そうに見つめていたので、ぽんぽんと頭をなでてやる。
「大丈夫だよ。俺はそう簡単に負けないから」
「わかりました…。がんばってください!マスター!」
俺はシィリスの応援に笑顔で答えた。
そして、厳つい騎士についていくと、庭に出たので俺もついていくと、そこで待ち受けていた。
「では、ルールとしては…命は奪わないことと周りのものに余り傷をつけないこと…でいいかな?」
俺はそのルールを聞いて、頷く。
魔法は有りか?と聞くつもりは無い。俺は鼻から魔法を無しで勝負するつもりなのだ。多少身体強化の魔法というズルがあっても、おおっぴらに魔法を使うつもりはない。
「では、このコインが落ちたときが試合開始ということで」
そう言って厳つい男は懐から取り出したコインをキィンと弾いた。
それにあわせてお互いが剣を抜く。
回転しながら、コインが落ちた瞬間。グラッヂさんは突っ込んできた。
下からの剣戟を俺は体を捻ることで避け、右下から左上に切り上げるが、瞬時に剣を引き戻され、防がれた。
防がれたので一度バックステップで距離をとり、剣を構える。
今度は俺から仕掛けるつもりで踏み込む。
流麗な軌跡を描きながら、俺の剣はグラッヂさんの首もとに迫るが、グラッヂさんもそれに対応して、思いっきりの力を込めて、剣を弾かれた。
だが、弾かれた力を利用しながら、早い速度で1回転すると反対側から斬り込む。弾く力はもう無かったようで、剣を添えて軌道を逸らす方法にしたようだが、俺は再度踏み込むと、左手でグラッヂさんの腹に掌底を打ち込んだ。
打撃なので、威力はそのまま突き抜けてグラッヂさん本体に影響を及ぼした。
そして、数秒後には膝を突いて、降参するのだった。
「くっ…見たことも無い技があったが、その戦い方と剣筋はやはりあのお方とそっくりだったか…」
と苦しそうな顔をしているのにどこか嬉しそうだった。
俺はとりあえず近づいて回復魔法を掛けてやると「かたじけない」と感謝した。
そして、治療を終えると、グラッヂさんは立ち上がり俺に握手を求めてきた。
「やはり、君は『剣聖』の弟子のようだな…君とこんなところで会えて嬉しいよ」
と握手を求めてきたので応じたのだが、え?『剣聖』?と心の中では疑問符だらけだった。
あと1時間半!!!!誤字脱字等ありましたらおねがいします!
ですが治すのは明日以降です!(断言




