55話 突然の挑戦状
俺が突っ込んでくる騎士に対して、どうしようかと悩んでいると、エナフィが俺の前に出て、両手を広げて庇ってくれた。
「この方は私の恩人で手荒な真似は許しません!」
「お、お嬢様!?騙されてはなりませぬぞ!」
と騎士の声から動揺した雰囲気が感じられる。
だが、その目ははっきりと俺に対して殺気を込めて送られていた。
俺は一つため息をつくと、未だ気絶している男を引っ張って騎士の前に引きずり出した。
「この男が犯人ですよ」
突然引きずり出された男に騎士は困惑の表情を浮かべる。
騎士は男と俺を交互に見たあと、エナフィのほうをちらりと見る。
そして、エナフィがこくんと頷いたのを確認したあと、騎士は剣をしまった。
「そう…ですか。お嬢様の恩人とは知らず無礼な真似を…お許しください」
と騎士は頭を下げてきた。
こうやって素直に謝れるあたり、この騎士は好感が持てる。
「気にしないでください。騎士様も仕事でしょうから、しょうがないと思いますよ」
と適当に騎士にもフォローを入れてみる。
割と、騎士ってのは面子を気にしたりするものだから、こういうところを忘れてはいけない。
「…そう言ってもらえると助かる」
そして騎士はちらりとエナフィに視線を送る。
悔しそうに声を振り絞りながら騎士がエナフィに話しかける。
「では、お嬢様帰りましょうか…それと、そこの君は…一応来てもらえないかな?」
と騎士が疑惑を含んだ目線を向けてくる。
あ、まだ疑ってたんだ…。
それから数分後。
俺とシィリスは騎士に連れられて、伯爵家の応接間の一部屋に通された。
応接間にはお菓子とおいしい紅茶が置いてあり、シィリスは満足気な顔だった。
そして数十分も待たぬうちにさっきの騎士と、その騎士より年上の厳つい騎士が入ってきた。
俺は一応礼儀として、席を立ちお辞儀をして、挨拶をする。
騎士もまたこちらにお辞儀をしてくる。
「今回はお嬢様を救っていただきありがとうございます。私の名はグラッヂ・ベルードと申します」
「自分の名前はフリード・シーエルです。そしてこっちの連れがシィリスです」
と挨拶を交わすと、シィリスもぺこりと頭を下げ、厳つい騎士のほうがさっきの若い騎士を一睨みすると、若い騎士はヒッと悲鳴をあげたあと名乗り始めた。
「私はロッド・フィルオンと言います。ここで騎士として勤めており、フィルオン男爵の5男であります!」
と丁寧に家族構成?まで教えてくれた。それにして5男か…なんかこいつも苦労してるんだなと思うと、同情してしまった。
そして厳つい騎士は俺に視線を戻すと、腰につけている剣を見て、驚き見開いていた。
「フリード殿…その腰につけている剣はどこで?」
と興味深そうに尋ねれらたので、嘘をつく意味もないので正直に答えることにした。
「師匠から譲ってもらいました」
と言うと、厳つい騎士はますます驚いたようで、小声で「まさか…いや、彼はこっちの方面にいると聞くし…弟子がもう一人居たとは…」と呟いている。
そして、なにかを決めたような顔をしてこちらを改めて見つめてきた。
「フリード殿。もしよければ手合わせ願おう」
と謎のお願いにしばし呆然とするのだった。
誤字脱字等ありましたら…あと2時間!!!




