6話
父親が入ってきて、父親は領主に頭を下げる。
「この度は迷惑と危険に晒して申し訳ありません」
と言って父親は頭を下げる。
俺も一応頭を下げておく。
「いえいえ、私はむしろ感謝をしていますよ。命も救ってくれましたし、彼を追い出す立派な口実ができました」
と言ってニヤリと領主は笑う。
(割とこの人も見かけによらず腹黒いのか…)
その後領主は疲れているだろうからと言って帰してくれた。
帰り道で父親の顔をうかがうが何もしゃべろうとはしない。
俺としては何か言われると思っていたのに、何もいわれないと言うのは更に不安感を募らせる。
俺は耐え切れず話してみることにした。
「父様…怒っていますか?」
と隣で歩く父親に尋ねると
「あぁ…かなりな」
表情自体は普通だが、声から父親が怒っているのが分かった。
だが、怒っている理由がまだ良く分からない。いくつかありそうだが、どれもここまで怒らすものではないと思う。
少し考えて分からないので不安になっていると。
「俺が怒っているのはな、お前がためらいもなく人を斬ったということだ。俺は別にお前が魔法を使えることを隠していたりすること怒ったりはしないが…人を斬ったということが許せない」
その言葉を聞いて己を責めた。
父親はやつと決闘はしていたが剣の腹で傷をつけずに倒そうとした。
だが、父親がそうしたのに俺はためらいもなく人を斬りつけた。
精神年齢はもう30近くだが、この世界で俺はまだ9歳なのだ。9歳の子が人を斬りつけるなんて、たとえ世界が違えどおかしいことは分かるだろう。それも戦争のある地域でもなく平和な場所でだ。
「父様…すいません」
俺は率直に謝った。
謝らないといけないと思った。少々自分の力に自惚れてそれを披露したいとか自慢したいという気持ちがあった。そしてそれが今回の父親の怒りを買った。
「俺はこれ以上はもう怒らん…あそこでお前が入らなければもっと重い傷を負っただろうし…お前の行動は家族を守りたいという一生懸命な気持ちも伝わった・・・だから、帰ろう。家族の場所へ」
そう言って父親は手を差し出す。
その顔は温かくそしてやさしかった。
俺はその手をぎゅっと握り家へと帰った。
~~翌日~~
俺と父はこっぴどく母様に怒られた。
その日の夜中はずっとリビングで正座をさせられ夜を過ごすことになった。
俺はその夜の間に父の子供の頃の話や、冒険者のころのことや、母さんとの出会いなど様々な話をしてくれた。
なんか父親という存在が今まで以上に近くで感じれたような気がした。
朝になる頃には二人とも正座していたまま寝ていて母はそれを見て毛布をかけてくれていたようだ。
その日は1日父親と二人で母様のお手伝いをした。
~~~数日後~~~~
俺は荷物に非常食などを詰め込んで地図を片手に目的地へと向う。
今向っているは領主から貰った土地で、遺跡を目指している。
貰った土地は広くて大体200haぐらいはあるっぽい。
俺は森を抜けてとある洞窟の前へと着いた。
洞窟は薄暗く数m先は暗くて見えない。別に魔法を使って照らせばすむ話なので火の魔法であたりを照らしながら進む。
領主から聞いた話によると、この地方に赴任してきた学者が研究したところ一切分からなかったとのことだ。類似性のあるものを他ではまだ見つけていないらしい。ちなみに調べた学者というのはシャーリーの父親だとか。
俺は心を少しうきうきさせながら奥に進むと、大きな扉を見つけた。
大きな扉に何か書いてあるようなのでそれを火の魔法で照らす。
「え?」
それがとっさに出た反応であった。
俺は一瞬そこに書いているものを見て、唖然とした。
なぜなら扉に書かれている文字が『日本語』だったのだ。
この世界での言葉ではなく、生前使っていた元の世界のもの。
俺はそれを見て激しく動揺した。
俺は考える、なぜここに日本語が書かれてあるのか…だが、考えても答えが出ない。答えはきっと扉の中にあるのだろう…だが、扉を開ける方法が分からない。
どこかにボタンがないかと考えたが。
扉には『あなたは日本人ですか?』と書かれていた。
ボタンがないのでなんとなく俺は日本語で『はい』と声で答える。
すると一瞬魔力が空間を満たし、それが扉に集まって消える。
そしてゆっくりと扉は開き始めた。
誤字脱字等ありましたらお願いします。