47話 後始末
とある茂みにて。
「くそっ!なんなんだあのガキは!?化け物じゃないか…くそっ…今回の失態の責任は俺じゃない!あのガキが異常なんだ…」
目深くまでかぶったマントの奥で、男は苦虫を噛み潰したような表情を作る。
この男は魔物使いで、自分が所持していたAAAクラスのキングウルフが返り討ちにあったのだ。
最初はこの戦力でパーナを襲えといわれたときは過剰戦力だと思ったが、まさか返り討ちにあうとは全く思っていなかったのだ。
「ちっ…一時は引いてやるが…絶対殺してやる…」
男はそう言って立ち上がったが、突然後ろから声が掛かった。
「あー残念だが、お前にその機会はもうねーよ」
「なっ!?」
突然声に男は顔を強張らせて、硬直する。魔物使いの男はどうにか平常心に落ち着かせ、目の前の剣を腰に携えた男に殺気を飛ばす。
「お前は一体何者だ…?只者ではないだろうが、さっさと殺さなかった時点でお前の負けだ!」
魔物使いの男はそう言って、風の中級魔法を放とうとするが、それが発動されることは無かった。
魔物使いの男の口から溢れたのは言葉ではなく血であった。
「詠唱なんかさせないさ…残念だったな。この距離まで近づいた時点で俺の勝ちだ」
剣で魔物使いの男を貫いた大柄な男は、魔物使いの体から剣を抜いて一度大きく振って血糊を飛ばした。そして、剣を鞘にチンと戻すと、男はまだ生きてるようで忌々しげに見つめていた。
「その剣…まさか、『剣聖』のベルクリッドか…!」
男は久々に聞く言葉にすこし懐かしい気持ちにさせられる。
「その称号はとうの昔に弟子に譲った。今はただのベルクリッドだ」
「くっ…こんなところに居るとは…お前も…あのガキも必ず、俺の仲間が殺してやる!」
そして再度殺気の篭った目をベルクリッドに向けると、そのあと目から光が消えてその男は死んだ。
ベルクリッドは男の死を確認したあと、めんどくさそうに頭をぽりぽりかいて、遠くに見えるフリードを見ていた。
「ったく…尻拭いまで俺の仕事か…まぁフリードの成長も見れたし御の字とするか…がんばれよフリード」
ベルクリッドはそう呟いて、弟子に挨拶をせずにその場から去った。
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