幕間 ロベルト・シーエル
ロベルト・シーエル視点。
私の名前はロベルト・シーエル。
元冒険者で一流のパーティーに居たのだが、妻と子供ができたことで冒険者稼業から身を引き、今は妻の親戚の貴族の護衛騎士をやっている。
私は、魔物の攻撃で体が侵され弱くなってきたが、まだまだ現役ではいるつもりだ…。
そんなある日。一人の息子が生まれた。息子の名前はフリード・シーエル。聡明で努力を惜しまない自慢の息子だ。
最初はその聡明さから、私の子じゃないのでは?とまで思ってしまったが、私と同じ目の色。そして妻と同じ髪の色。私と似た顔立ちでやっぱり私の息子なんだなと思うと。守りたい思いになってくる。
息子はすごい。そりゃあとてつもなくすごい。
正直私は自分の息子だが、その才能に嫉妬してしまいそうだ。だが、だからこそその力の使い道を親として示してやらねばと思うのだ。
私に新たな子供ができた。双子の娘のイリスとミリスだ。
髪の色は私と同じブロンドで、見ているだけで顔がにやけてしまう。
だが、そんな娘たちにはひとつの欠点があった…。それは…
極度のブラコンなのだ…。
毎日毎日フリードにべったり…兄妹が仲良い事が悪いわけじゃないが、ちっとは控えて欲しい…。父さんだって寂しいんだ。グスン
フリードと最近仲の良い少女がいる。少女の名前はシャーリー・ブラウン。素直で可愛らしくて真面目な良い子だ。まったくもって息子には勿体無いぐらい…だからこそ、フリードには彼女を守るための力をつけて貰わねばならん。ひとりの男としてな!
フリードを連れて、領主の館の帰り道。
私は同僚とであった。名前はザイル。多少腕が立つだけだが、この辺境ではその多少でも欲しいくらいの人材不足なのだ。
確か、噂では元盗賊だったらしい。
そして彼に私の愛する家族を襲うと脅されて、私は戦う決意をする。
だが、結果としては負けた。途中で息子の援護がなければ、死にはしなかったが深い傷を負ったであろう…。
だけど息子は大の男相手に圧倒する実力を見せ付けた。
剣術と魔法を組み合わせ、あっという間に男を打ち負かしたのだ…だが、フリードは人を斬って傷つけてしまった。
息子はまだ幼い。私はなんとなくだが、自分の命がもうあまりないことを悟っていた。だからこそ、自分が居なくなっても息子がその力に溺れて平気で人を殺すような人間になって欲しくは無かった。
だからこそ、ちょっときつめに怒ったつもりだ…。私は家族を溺愛しているから、ちょっと手加減したかもしれないが…。
まぁその後は妻にこっぴどく怒られたが、まぁしょうがないことだろう。
その夜は久々に息子との会話を楽しんだ。
あぁ…子供とはこんなにも楽しげに明るく嬉しそうに生きているんだな…子供はすばらしい…私が、守ってやらねば…だが、私の体はもう弱りきっていた。それこそ、ザイルにも勝てないほどに…私は怖くて悔しくて泣いた…。自分が身につけた力で、家族さえも守れないのかと…。だが、できる限りのことは子供達のために伝えよう…そう思えた。
そして、暫くした後私は息子との鍛錬に出ようとして、体から力が抜けていく脱力感を覚えた。そして地面に倒れると、ひとつ咳をすると、そこには血が広がっていた。あぁ…もうすこしなのかな…まだ死にたくない。
私は夢の中で家族との今までの思い出を見ていた。
そして目を覚ますと、後ろには焼けている我が家、そして前方には娘たちに襲いかかろうとしている、ザイル。
私は今にも崩れ落ちそうな体に鞭を打ちながら必死に駆け出した。
そして護身用のナイフを取り出すと、決死の覚悟で男に飛び掛る。男の剣が胸を貫き、私のナイフが男の首を掻っ切った。
そして私は、フリードに回復魔法を掛けてもらっていたが、もはやどうにもならぬことは分かっていた。
あぁ、これで愛する子供達と別れてしまうのか…後悔しかないな。だが、父親としての義務は立派に果たせただろうか…?
「ごめんな…フリード…父親らしいとこを見せたかったんだ…不甲斐ない父親でごめんな…家族を…頼むぞ」
俺は息子を見つめる。息子の目からはとめどなく涙が溢れている。
あぁ…息子が私の死を悲しんでいる…家族にこんなに愛されて私は幸せものだな…息子が私を呼ぶ声がする…だけど、フリード…懸命に生きろ…そして家族を頼んだぞ。そしていつか俺の墓の前でいいから孫を見せてくれよな?
そして満足げに俺はこの世を去った。
ロベルト・シーエル。享年34歳である。
父親視点で書いてみました。
父親も何かと大変なんです…。
誤字脱字等ありましたらおねがいします。




