4話
9歳になってある日父親に村一番の大きな屋敷に連れて行かれた。
屋敷は自分の家の3倍以上はあった。
門をくぐりに手入れされた庭を通って、屋敷に入る。
屋敷に入るとメイドさんが待ち構えていた。
「ようこそお越しいただきましたロベルト様。ご主人様はいつもの部屋にてお待ちです」
とメイドさんはお辞儀をしてからそう言って手で進むように促した。
俺は父親について行き1つの部屋に入る。
部屋の前に行った所で父親が俺に向って
「今から会うのは領主様だから粗相のないようにな」
と言って俺のほうを見ているので俺は頷く。
そういや、村の人たちから聞いたのだがこの村を治める領主様の顔を見たことがある人がいないらしい。なんでも体が悪いとかいろんな噂が立っているほどだ。
まぁ噂の真偽はこれから分かるだろうと思う。
父親は木製の扉をノックする。
すると中から「どうぞ」という声が聞こえたので父が扉を開けて入るので俺もそれに続く。
中に入ると長方形だけど角が丸い机とそれを挟んで向き合うように設置されている4つの椅子。壁際には本棚が設置されている。
そして向かい側の椅子に一人の男が座っていた。
服装はそこまではでではなくてむしろ地味だったがどこか厚みが出ている。
「やぁよく来たね」
と言って男は立ち上がり手を差し出す。
父親はそれを笑顔で握る。男はこっちをチラッと見た。
「ふむ…君がフリード君か、初めまして」
と言って男はこっちに手を差し出す。だが男の言葉にどこか引っ掛かる…
あ!と気がついた。
「あの、どこかで会いませんでしたっけ?」
なんかまるで出会ったことが運命のように言っているが、決して口説いているわけじゃない。なんせ俺にはホモの趣味はないし…
「ふむ…?私は初対面のはずだが…あ!そういうことか」
と男は手を顎に当てて少し考えると分かったようで納得の表情を浮かべている。だが俺にはまだ分からない…まだ分かってないことに気づいた男は少し微笑んで
「君が会ったのはおそらく教会の神父だろう?あれは私の双子の弟だよ」
と説明されて思い出す。あぁ!そうだ!あの神父にそっくりなのだ。
とやっと思い出せたことにすっきりして満足する。
それを見た男は少し微笑んだ。
そういえば満足したけど挨拶されている途中だったのだ。やはりここは挨拶を返さないと失礼というものだろう。
「申し遅れました。自分はフリード・シーエルです。いつも父がお世話になっています」
とこの世界のお辞儀である右手を腹に添えて足を閉じて腰を折る。
すると男は少し驚いた顔する。
「ほぅ…私はジェイル・シャローズだ。一応この付近の領主をやっている。よろしく頼むよフリード君」
と言って領主は再度手を差し出すので俺もそれを握り「はい」と答える。
ジェイルは手を離すとロベルトに向き直って
「ふむ…君にしてはよくできた子だね」
と少し笑っている。
父親も照れたように頭の後ろを掻いている。
「えぇ私には過ぎた子です。自慢の息子ですよ」
そういう父親は本当に嬉しそうだ。一応俺も褒められたのでいやな気分はしない。その後父親は領主と話し終わったと屋敷を出る頃には空が赤く染まっていた。
屋敷を出て、庭の半分まで歩いたとこで突然後ろから声がかかった。
「お!ロベルトじゃねーか!どうしたんだ?」
と言って近寄ってきた男はどこか酒臭い。顔も少し赤い。だがその足取りはちゃんとしていた。
父親は男のことをみると少し訝しげな顔を浮かべる。
だが、そこでも父親は近寄ってきた男をぞんざいに扱うことなく挨拶する。
「こんばんはザイルさん。少々お酒の飲みすぎでは?」
と父親は軽くお辞儀をして言う。
すると男は少しムッとした顔になる。
「なんだよロベルト、2番手のくせに偉そうな」
と言って眉にしわを寄せていらついてる様子だ。
「そういやさ、おまえのとこの娘たいそう可愛らしいって噂じゃねーか…なぁ、俺にくれんか?もぅお前の妻のことはいいからさ」
と男は近寄ってきて父親の肩に手をかける。
父親はより一層不機嫌な顔になる。俺ももちろん今にも堪忍袋の緒が切れそうだ。かわいい妹たちを誰がこんな男に…
と考えていると父親は男の肩にかけていた手を振り払い
「冗談はやめてください。ザイルさんに自分の娘をあげるつもりはありません」
と真剣な眼差しで言う。
よくいった!と俺は心の中で父親を賞賛した。なにかと頼りないイメージがあった父親だが今日からは敬意を持って接しようと思う。
だが男はいらついた顔をする。
「あぁ?てめぇ随分とえらそうじゃねーか。ちょいと力の差ってもんを一度教えてやんねーといけねぇみたいだな」
と男は手を腰に下げてある剣に手を伸ばすとなにかを思いついたような顔をして気味の悪い笑みを浮かべる。
「そうそう…そういえば最近人さらいが多いらしいなぁ…もしかしたらお前の家では娘と嫁がさらわれているかもしんねーぞ?」
と言って男は声に出して笑った。その光景にどうしても殴りたくなる。
すでに頭のなかではこの男を何十回と殺している。
父親は手を思いっきり握り締めプルプル震えている。
男は笑いをやめると
「おっ!そうだ…お前調子乗ってるみたいだから決闘しよぜ!そうだな…勝ったほうがなんでも言うことを聞くってのはどうだ?」
と男はニヤニヤと笑みを浮かべる俺は我慢できなくり前に出ようとすると父親が手をかざして俺を引きとめた。俺は父親の顔を見上げると怒ってはいないけど真剣な眼差しだった。
父親は男に向き直ると
「その話絶対だろうな?」
と言うと男は頷き
「あぁ、もちろんだぜ」
と答えるがそのニヤニヤが消えることはない。
父親は腰にかけていた剣を右手で抜き、背中に背負っていた盾を降ろして、それを左手で持つ。
「ルールは降参か大きな一撃を与えたら終わりで良いな?」
と父親が言うと男は頷く。
男も腰に下げている剣を抜いて中断に構える。
両者は睨み合っている。
ふと男はニヤリと笑みを浮かべて地面を思いっきり蹴る。すると土が舞い上がり、視界を塞ぐその瞬間に男は突進して剣を打ち込む。
父親はそれを防ぐが何度も攻撃を受け止めるが、肝心のカウンターが繰り出せない。父親はじりじりと壁に押し込まれていく。だが男の隙をついて剣の腹で男のわき腹に叩き込む。男はそれを食らいよろけて膝を突く。これで勝負は決まった。
と思ったら、男は恨めしそうな顔を浮かべて手で土を掴みそれを投げつける。突然の攻撃に父親は対応できず思わず顔をそむけているところに剣を振り上げて襲い掛かる。
このままでは父親が致命傷を負うと確信して地面にあった石を魔力をこめた右手で投げる。すると、見事に剣にあたり軌道がそれて父親の横を掠める。
「てめぇ!ガキなにしやがる!!」
と男は激昂して突然襲い掛かってきた。
生憎俺は今日は木剣は持っていない。俺は瞬時に手に魔力を込めて水を作り出す。それを水操作で氷の剣にする。
敵が振りかぶりながら襲い掛かるのでそれを氷の剣で受け止める。上からの圧力に耐えかねて、両腕に魔力を込めて弾き返す。
「父親の仇をとるのは子供の仕事…ってね」
と俺が決め顔で言うとますます怒った顔になる。
「ガキ…!粋がるなよ!」
と男は言って右上から襲い掛かる。それを父親から習ったように受け流し、攻撃に転ずる。男はそれを受け止めようとする。だが俺はそのとき魔力による目の強化を行う。
氷の剣と男の剣がぶつかる寸前、俺は水操作でぶつかる部分を水にする。
すると水の部分はきれいに通り抜けてすべてが抜けきったところで再度氷にする。そして氷の剣は男の肩に食い込んだ。
「ぐがああ!!」
と言いながら男は肩を抑えながら倒れ込んで暴れる。男はふらりと立ち上がり、息を荒くしながら剣を振りかざす。
俺はその衝撃に対して備えていると。
「やめんか!」
という声がしたので振り返るとそこにいたのは領主だった。
どうも4話となります
誤字脱字等ありましたら教えてもらえるとうれしいです。