25話
俺は11歳になった。
日々の修行のお陰か、最近では師匠相手にも引けを取らない程度にはなった。
「さてと、今日はここらへんにしとくか」
「わ、わかりました…」
と俺は胸で息をしながら氷の剣に魔力を込めるのをやめて、ただの水になる。
そして、疲れから俺は思わず、地面に腰を下ろしていると、村のほうから1人の男が駆け寄ってくるのを確認した。
「た、大変だぁ!魔物どもがこちらに向ってきているんだ!」
と男の言葉に俺と師匠は顔を見合わせて、立ち上がり急いで村に帰った。
村の中心は村人によって溢れ、人々は不安そうな顔を浮かべる。
「おぉ、良かったここにいたのか」
と言って人ごみを割って近寄ってきたのは俺の伯父でもある領主だ。
伯父は少々疲れと焦りが表情から伺える。
「申し訳ないが、できれば君達に魔物どもを撃退してほしい」
と伯父は言ってきたのだが、実際には頼なくても領主は使える騎士に命令権があるので行けと言えば強制的にでも戦わせることが出来る。
俺は一応方膝を突いて、頭を下げる。
「わかりました。フリード・シーエル命に代えましても見事魔物どもを退けてみせます」
と俺は了承して、その後魔物どもが侵攻してくる方角に向けて向った。
小高い丘に登ると、遠くのほうに小さい緑の豆粒の群れと、でかい紫色の肉の塊を見つけた。
小さい緑の豆粒はゴブリンだが、数はかなり多く1000体は超えていそうだが、紫の肉塊は目を凝らしても1体しか確認できない。
「おかしいな…」
と師匠がちょっと不安気な顔をする。
「なにがおかしいんですか?」
「そうだな…まず、ゴブリンがこんな数で襲ってくるのもおかしいんだが、一番おかしいのはあいつだ」
と言って師匠が指差したの肉の塊だった。
「あいつは『腐食の肉塊』って言うんだが、あいつは洞窟とか暗い場所を好んで、外に出ることは一切ないはずだ」
と師匠は言って、すこし考え込んでいると、何かを思い出したような顔をした。
「まさか、魔物使いか!」
「魔物使い…?」
「あぁ…おそらくあのゴブリンも魔物使いに操られているんだろうさ」
と師匠は説明した。
魔物使いとは、魔物に対し一種の洗脳を行い自分の意のままに操るという魔法を使う魔法師だ。だが、その危険性と洗脳する魔法が人間にも使えるということで禁術として認定されている。
「あとひとつ、あの肉塊は死の吐息に掛かると、やばいから気をつけろよ」
と師匠が付け足すように説明してくれた。
俺はそれを聞いた瞬間今にも攻撃したいという気持ちに襲われる。
おそらく…いや、ほぼ確実に…あいつが俺の父親を死に追い込んだと言って過言ではないだろう。
だが、師匠の話が本当なら、真に倒すべきは魔物使いだ。
あいつが洞窟の外から出ないというのであれば、母さんは襲われなくて父さんの寿命が短くなることはなかったはずだ…
俺は意識せずとも怒りが顔に表れる。
「弔い合戦だ…今のお前なら十分にやれる…行ってこい」
と師匠は俺の気持ちを汲んで、そう言って背中を押してくれた。
「はい!」
と俺は頷き、体に魔力を込めて、魔物群れに向ってすさまじい勢いで駆けていく。その途中で氷の槍を作ると、そこに魔力を込める。
ある程度近づいた時点で俺は肉塊に向けて槍を手に掴んで放つ。
一直線に槍は飛んで行き、その射線上に居た、ゴブリンは跡形もなく吹き飛んでいく。そして、肉塊に槍が直撃すると、その体の3分の1以上が吹き飛んだが、あたりのゴブリンを飲み込みながら再生を開始した。
(ちっ!再生するとか厄介だな!)
確か、こういう再生する魔物の多くは核という魔石を持っており、それを破壊することでやっと倒せると本で読んだことがある。
そこで俺はゆっくりと飛行魔法で宙に浮き上がると、大量に氷の剣を作ってそこに魔力を流し込む。槍と比べて、水の量が少なく済むので剣にしている。
ざっと100本近く作り終わると、肉塊に向けて照準を定める。
そして俺は中二病全快の技名を叫ぶ。
「ソード・レイン!」
直訳すると剣の雨、我ながら捻りがないと思うがなかなか気に入ってはいる。
そして、無数の剣が肉塊に向けて突き刺さった。
さてと、父親の弔い合戦が始まりました。近頃さっさと主人公が旅立って冒険者編に入りたいのですが、もう少し先になりそうです。
(近頃、サブタイトルを変えようかなと思っているこのごろです)
誤字脱字等ありましたらお願いします。感想もお待ちしております。




