15話
俺は父親の死をどうしても認めることができなくて、何度も何度も治癒魔法を繰り返す。だが、効果はやはりなかった。
そして気づいたら朝になっており、何事かと村人達が駆けつけてきた。
だが、俺はただただ父親の死体の前で泣き続けた。
その後、あの神父がやってきて俺に対して何かを話しかけているが、まったく耳に入ってこなかった。俺はその後眩暈を感じ意識を失った。
目を開けると、そこにあったのは見知らぬ天井…。
辺りを見渡してみると、俺の横で2人の妹達が机で居眠りするような体制で寝息を立てていて目元は赤くなっている。
俺はそんな妹達の頭を撫でて、ベットから降りて靴を履いて部屋の外に出る。
部屋を出てあたりを見渡すとどこか見覚えがあった。
(あぁ…領主様の屋敷か…)
と分かったので。とりあえず前来たときのあの部屋の前まで歩いた。
そこで父親との記憶が思い出して、胸が締め付けられる思いをする。
そんな苦しみに耐えてると扉の向こうから話し声が聞こえた。
話し声は領主と母親の声だった。
「…そうですか…わかりました。お世話になります…」
と母親の声が聞こえた。お世話になる…その言葉は今の俺にとっては少々敏感になっていたのかもしれない。父親が死に際に家族を頼むと言った。俺はそれを命に代えても守りたいと思っている。
俺はゆっくりと扉をあける。
すると、母親と領主が驚いた顔をしてこっちを見ている。
「領主様…申し訳ありませんが、私は父親から家族を頼むと言われております。当主なき今、結果的に自分がその座に入ると思われます。私はまだ体も未熟ではありますが、シーエル家の当主として、家族全員は養うつもりです」
領主に頭を下げてそう言った。
「だ、だが…君もまだ子供だし、私だって君の親戚なんだよ?親戚に甘えるくらい当然ではないのかい?」
領主は突然の俺の家族を養う宣言をしてちょっとうろたえている。
…というか、領主が親戚とか聞いてないんだけど…
「…フリード、あなたはまだ10歳だし、無理に養う必要はないのよ。兄さん達のお世話になるのは一時だけなの」
と母親が俺を説得しようとしてくる。
…なるほど、母親のお兄さん=領主ってわけか…つまりは俺の伯父ってことになるのか。
まぁ伯父だからって甘えるわけにはいかない。
そして父親の家族を頼むという言葉が頭から離れない。
「そうですか…だけど、自分は家族を自分の手で守りたいと思います。だって…父親にそう言われたのですから…」
後半はなぜか涙が溢れてきて止まらなかった。
すると母親が立ち上がり、俺の近くまで歩いてきてひざを折って俺をぎゅっと抱きしめる。
「フリード…もう無理しなくていいのよ…」
と母親は俺をぎゅっと抱きしめる顔は笑顔だがどこか悲しい顔をしていた。
だけど、母親から伝わってくる温もりは心の奥までしみこんでいくようだった。
俺はただただ泣いて悲しんだ。元の世界では祖父母も俺が生まれる前に死んだし、身内が死ぬなんてことがここまでつらいとは知らなかった。
(ごめんな…母さん父さん…親不孝なまま死んでしまって)
俺はそこで元の世界の両親に謝った。きっと俺よりも苦しい思いをしているはずだから…
後日、父親の葬式が行われた。
参列者にはあの領主も居て、神父と顔が瓜二つなことに住民も驚いていた。
そして、葬式は進み、父親を埋葬し墓石を立てた。
俺は墓石の前で膝をついて、宣言する。
「絶対家族を守るから…父さんは不甲斐なくなんてないよ…僕らにとって立派で頼りなって甘々な父さんだ。俺…がんばるから」
と俺は今はなき父親に誓った。
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