14話
父親の看病は母親に任せて俺達は普段どおりの日程を過ごす。
いつもどおりの魔法の訓練をするが、妹達の顔色が優れない。
やはり、父親が突然倒れてしまったら不安になってしまうのも当然だろう。自分は平然を装っているがいつもどおりのことをすることで気を紛らわしておかないと、不安になってしょうがないのだ。
「イリス、ミリス…これからは俺達3人で母さんと一緒に父さんを支えるんだ…大丈夫、俺が居る」
と言って2人を抱き寄せて背中をなでる。
2人は突然抱き寄せられたことに驚いたようだが、安心したような顔をした。
その後は、予定を変えて、2人に治癒魔法を教えることにした。
2人も父親のためになると思って一生懸命練習をしている。なんだかんだ言って2人とも父親のことが好きなんだな…と思えた。
俺はいつもどおりに日課を終えて、ベットに仰向けで寝転ぶ。
父親のことが心配なのでなかなか寝付けないが、自分が考えてもどうこうできる問題じゃない。
(明日遺跡に行って本で調べてみたりするか…)
と明日の予定を考えながら眠りについた。
俺はふと違和感を感じて目を覚ますと、部屋の扉の隙間から煙が入り込んでいる。寝ぼけた頭が徐々に覚醒して事態を認識する。
俺は勢いよくベットを飛び出し、自分の周りに水を魔法で作って水操作で自分を卵の殻のように覆う。
そして扉を魔法で強引にぶちやぶると、火がこちらに流れ込んできて、わずかに水が蒸発する。火が壁で届かないことは分かっているが手を顔の前にかざしてふさぎたくなる。
俺はゆっくりと部屋の外に出て、まず妹たちの部屋に向う。
水操作で一部に穴を開けて、そこから手を出して扉を開ける。
「「おにいちゃん!」」
と言って2人は俺の元に駆け寄ってくるので水魔法の卵の殻を更に大きくして3人が入れるスペースを作る。
「大丈夫か?ひとまず外に出よう」
と言って階段を下りようとするが、1階は火の海だった。
俺はどうしようかと迷い、2階の窓を破壊して、飛行魔法で脱出する。
俺達は外に出ると魔法を解除して、両親がいないかを確認するが、2人は見当たらない。
俺は魔法で再度水で殻を作って、今度は両親の寝室がある部屋へと進む。
部屋は鍵がかかっていたので、腕に魔力を込めて鍵をもろともせず壊して部屋に入る。
「父さん!母さん!」
と叫ぶと2人は意識はあるようだが、苦しそうだった。俺は魔力を体に込めて、2人を担ぎ上げて、家の外に出る。
玄関のとこを外に出ると、2人の妹に近づく、人影が見えた。村の人かな?と思うが目を凝らすとその正体がわかった。
あの男だ。俺が前に斬りつけて、今は牢獄に居るはずのあの男だ。
男はニヤァと笑みを浮かべるとゆっくりと妹達に近づく。
俺はとっさに妹達を助けなきゃと思い、両親を下ろして、自分は妹達に駆け寄ろうとするが、足元がもつれて転んで意識が薄れてきた。恐らく、煙の吸いすぎによる影響だろう。
(くそ…!早くしないと…あいつが…)
と思って手を伸ばすが、その手は当然届かない。
2人に近づいて男はゆっくりと剣を振り上げる。
だが、そのとき右側から何かが走り出した。
走り出したそれをみると、父親だった。父親はそのまま突進して、男にぶつかる。男は突然突進して来る父親に対してびっくりして剣を向ける。
父親はそれを気にせず、突っ込むと、父親の体に深々と剣が突き刺さって、父親の体を貫通した。そのまま父親は突進してもみくちゃになる。
父親は脇から護身用のナイフを取り出し、男の首を切りつけた。
男は首から血を噴出し、すぅっと力が抜けて死んだ…。
俺は体に鞭を打って、起き上がり父親に歩み寄る。
父親を仰向きにして、剣を抜いて、治癒魔法を掛ける。傷口はかなり深くて、血が止まらない。
父親はゆっくりと瞼を上げてこちらを見る。
「ごめんな…フリード…父親らしいとこを見せたかったんだ…不甲斐ない父親でごめんな…家族を…頼むぞ」
父親はそう言って瞳から光が消えた。
「父さん!父さん!しっかりしてくれよ!」
俺は父親の傷に治癒魔法をかけるが特に効果はない。
俺はそれで必死に何度も何度も魔法をかける。目から涙が溢れようとも続けた。だが、父親が生き返ることはなかった。
誤字脱字等ありましたらおねがいします。




